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10代の若者が成人するまでの人生で親や環境にどのように影響を受けるかをスクロールして追体験できる「This is a teenager」


子どもの発達において、幼少期の経験や環境が重要な役割を果たしていることが知られており、子どもの将来は「幼少時の会話」で決まるという研究や、思春期に「自分の家族は社会的地位が高い」と感じる若者は健やかに育ちやすいとする研究など、さまざまな証拠が示されています。アメリカの全国縦断調査に基づいた、10代の頃から若者が環境に応じてどのように影響を受けながら成長していくかという実際の調査結果を、スクロールしていくだけで追跡して見ることができるページが「This is a teenager」です。

This is a teenager
https://pudding.cool/2024/03/teenagers/


ページを少しスクロールすると、「こちらは10代の若者、アレックスです」と表示されました。


アレックスは1997年に13歳の子どもで、父親と血縁のない母親に育てられています。一家の純資産は2000ドル(約30万円)未満で、両親はアレックスの人生に協力も妨害もしないものとします。研究者は、アレックスの家庭と家族生活を「かなり危険な環境」と評価しました。この時、アレックスのシルエットはピンク色に変わっており、以下の画像左上に表示されている「家庭・家族のリスクスコア」では、最も危険な「4」の状態を表しています。


その後25年間、アレックスに継続したインタビューを含む追跡調査を実施しています。研究では、アレックスは学校でいじめられたり、留年を経験したり、大学に行けなかったりと、身体的および精神的健康に苦しみながら大人になっていく可能性が高いとしています。しかし、「将来に楽観的ですか?」という指標において、1997年時点のアレックスは紫色の「かなり楽観的」と回答しています。「This is a teenager」ではこのように、さまざまな指標によってカラーで分けられた若者たちが、年齢を重ねるごとにどのように成長していくかについて、ページをスクロールしていくことで見ることができます。


さらにスクロールすると、さまざまにカラーわけされたシルエットが大量に現れました。ここでは、「将来に楽観的ですか?」という質問に「強く否定する」と回答したグループをピンク、「同意しない」と回答したグループを赤、「同意する」としたのを薄紫、「強く同意する」を濃い紫、データ無しをグレーで示しています。


人物のシルエットをクリックすると、個別の人物情報を見ることができます。個人情報には人種や性別、身長や体重、今の職業や年収、健康状態、若者時代の家庭リスクスコア、その他育った家庭の状況、学歴、初デートや初セックスの年齢など人間関係が示されています。


さらにスクロールすると、左上の指標が「家庭・家族のリスクスコア」に変わり、シルエットが移動を開始。


「家庭・家族のリスクスコア」に応じた並びになりました。これを見ると、多くの子どもたちが高リスクの環境で育っていることがわかります。「家庭・家族のリスクスコア」とは具体的に、勉強するための電気や静かな場所といった基本的な必需品があるかどうか、あるいは障害のある親や薬物乱用に苦しむ親戚がいるかどうかなど、家庭環境を安定させない、不安定にする要因についての聞き取り調査から評価されています。


1998年に、研究者のヴィンセント・フェリッティ氏が、子どもたちの成長が子ども時代からどのような影響を受けるかについての論文を発表しました。この研究に基づき、幼少期にストレス要因やトラウマ(心的外傷)を経験した子どもたちが、成長の過程でどれくらい不利な経験をしたかについて統計的に調査した結果を見ることができます。「This is a teenager」では、幼少期の経験や家庭リスクを総合して「No adverse experiences(不利な経験がない)」「Some adverse experiences(いくつかの不利な経験)」「Many adverse experiences(多くの不利な経験)」の3段階に分類し、それぞれの若者たちがその後どのように成長していくかを示しています。


例えば、以下は「留年を経験したかどうか」という分類で、紫色が留年経験なし、茶色が1回留年した、ピンクが2回以上留年した若者。「不利な経験がない」という分類の若者に留年を経験した人はいませんが、「いくつかの不利な経験」の分類では1回留年をした人が25人と2回以上の留年が5人、「多くの不利な経験」の分類では1回の留年が32人と2回以上の留年が6人で、不利な経験が強いほど留年率が高くなるということが示されました。


また、以下は停学になった回数ですが、こちらも停学回数が多い茶色、ピンクは不利な経験が多いほど割合が高くなっていることがわかります。


高校3年間の成績の平均値であるHigh School GPAについても、ピンクで示した「GPA2.0未満」は不利な経験が多いグループに多く、不利な経験がないグループの大多数は「GPA2.5以上」と高いスコアを記録しています。


2002年になり、ほとんどの若者は高校を卒業しました。その後大学に進学できるかという割合も、幼少期の経験や家庭リスクに影響を受けています。以下では、大学に通わず仕事もしていない人をピンク、高校を卒業して仕事に就いた人を茶色、大学に進学した人を紫で示しています。大学や専門学校に1年通うだけでも、幼少期の不利な経験の影響を軽減できるとする研究もありますが、以下の画像のように、そもそも幼少期に不利な経験をした若者は大学に通えていないことが多くなっています。


そこからスクロールしていくと、仕事をしている人の割合が増減していく変化を1年ごとに見ることができます。2013年、追跡している若者の平均年齢が29歳になると、いずれのグループでもほとんどが仕事に従事しています。しかし、年収は依然として幼少期の不利な経験によって影響を受けることがわかっています。


さらに、幼少期の経験は将来の健康状態にも影響しています。一番上の「不利な経験がない」グループでは、ほとんどの人が健康状態について「かなり良い」「素晴らしい」と答えているのに対し、「いくつかの不利な経験」「多くの不利な経験」のグループでは「かなり良い」「素晴らしい」と答えているのは半分未満で、「普通または不良」と答えた人が多くなっています。


ページの末尾では、プルダウンメニューからすべてのデータを確認することができます。左上をクリック。


ここまで見てきたデータを見返すことができるほか、「好きなアイスクリームの味」など、調査に用いられた質問を「不利な経験がない」「いくつかの不利な経験」「多くの不利な経験」のグループに応じて見ていくことが可能。


同様の追跡と解説は、ムービーでも公開されています。

This is a teenager. Let's track hundreds of teens into adulthood using this huge dataset. - YouTube

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in ネットサービス,   動画, Posted by log1e_dh

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