生き物

音楽に合わせて14種類ものダンスを踊り分けるオウム


雄のアルーキバタン(オウムの一種)である「スノーボール」は、音楽に合わせてさまざまなダンスを披露するということで、TVやYouTubeで人気を集めるオウムです。そんなスノーボールの踊りについて研究した生物学者たちが研究論文を発表し、スノーボールは複数の異なるダンスを踊り分けていることが明らかになりました。

Spontaneity and diversity of movement to music are not uniquely human: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(19)30604-9

Snowball the dancing cockatoo has wide range of killer moves, new study finds | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/07/snowball-the-dancing-cockatoo-has-wide-range-of-killer-moves-new-study-finds/

スノーボールの飼い主であり、今回発表された研究論文の共同執筆者でもあるのがIrene Schulz氏。彼女が2008年にYouTube上に音楽に合わせて踊るスノーボールのムービーを投稿したことから世間の注目を集めるようになりました。スノーボールはインターネットを中心に流行し、TVCMにも出演する程の人気を博しました。


実際にスノーボールが音楽に合わせてどんな風に踊るのかは、以下のムービーを見れば一発でわかります。

Snowball's Tribute to Michael Jackson - YouTube


これまで、特定の種類の動物だけがリズムやビートに反応することができる特殊な脳回路を持っていると考えられてきました。人間は複雑な声を学習・模倣することが可能な能力を持っており、これが音楽に反応する重要な要素であるとタフツ大学のAniruddh Patel氏は考えていたそうです。しかし、スノーボールが音楽に合わせて踊る様子を見て、Patel氏は「犬が新聞を読んでいるところを発見したようだ」と自身の驚きを表現し、さらに「人間以外の動物が自発的に音に合わせて踊るような様子は見たことがなかった」と語りました。

そこで、Patel氏はSchulz氏に研究協力を要請し、スノーボールが好きな音楽を流して踊っている様子を数か月にわたって撮影することをお願いします。この撮影映像から、スノーボールが音楽に合わせてダンスを踊ることが実証されました。これはスノーボールについて研究した2009年の研究論文でも示されていたものです。2019年に発表された最新の研究では、それ以外にスノーボールが複数の種類のダンスを踊り分けており、新しいダンスの動きを試すかのような動きも見せることを発見しています。

研究の中で撮影された、スノーボールの複数種類のダンスを試すような動作が見られるのが以下のムービー。ヘッドバンギングのように頭を上下に激しく振ったり、全身をゆるやかに上下に揺さぶったり、頭を左右に振ったりと、さまざまなダンスを試行錯誤する様子が見られます。

Snowball, the dancing cockatoo - YouTube


実験ではQueenの「Another One Bites the Dust」と、シンディ・ローパーの「Girls Just Want To Have Fun」を3回ずつ、合計23分間聴かせたそうです。スノーボールの踊りを収めたムービーは、古典舞踊と現代舞踊について学ぶR. Joanne Jao Keeh氏が、音声なしで各フレームごとに分析。ダンスとして認められる動きに名前を付けています。

分析の結果、Patel氏ら研究チームはスノーボールが14種類の異なるダンスを踊り分けたことを特定します。Patel氏は、スノーボールがダンスを踊ることができるのは5つの異なる性質を持ち合わせているからだと説明しており、その5つは「声の学習能力」「非言語的な動きを模倣する能力」「複雑な一連の行動を学ぶ能力」「長期的な社会的絆を形成する能力」「コミュニケーション動作に注意を払うことができる能力」であるとしています。


スノーボールの一連の動きにパターンがあるかどうかはハッキリしておらず、「この質問に答えるための十分なデータが存在しません」とPatel氏は語りました。続けて、「スノーボールはチャールストンのようなダンスにおけるルーチンを実行しているわけではなく、一連の複雑な動きを何度も何度も繰り返すことはありません。ただ、踊って気持ちの良いものを見つけ、実行しただけです」と指摘。

それではスノーボールは新しいダンスを思いつく振付師のようなオウムなのでしょうか。スノーボールは飼い主のSchulz氏の動きを真似しているわけではないものの、「オウムは動きを模倣することができるので、他の誰かの動きを見た可能性はある。しかし、たとえスノーボールが真似でダンスを踊っていたとしても、他の種の動物が行うよりも非常に洗練されたダンスであり、驚くべきことであることは間違いない」とPatel氏はコメント。さらに、水族館や動物園の動物ショーのように、食料報酬のために踊っているわけではないという点が特徴であるとのこと。なお、Patel氏はスノーボールにとってダンスを踊ることの報酬は、注意を引き付けることであり、社会的コミュニケーションンとしての側面を示唆していると指摘しています。


Patel氏ら研究チームは社会的コミュニケーションがスノーボールの踊りに影響を及ぼした可能性を調べるために、飼い主のSchulz氏の居ない場所で音楽を流すなどの実験を行っているそうです。

なお、音楽に合わせてダンスを踊るのはスノーボールだけではありません。ハーバード大学の研究者たちが2009年に行った研究によると、音楽に合わせて踊る動物を探すためにYouTube上に投稿されているムービーを調査したところ、スノーボールと同じように音に合わせて踊る鳥を33羽も見つけることに成功したそうです。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by logu_ii

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