「GoogleやFacebookによるニュース市場独占」阻止に向けた新たな動き

by Democracy Chronicles

EUでは2018年に個人情報保護を主目的としたGDPRが導入され、アメリカでもカリフォルニア州版GDPRといえるカリフォルニア州消費者個人情報保護法(CCPA)が制定されるなど、世界各国の公的機関がデジタルプラットフォームの規制強化に乗り出しています。そんな中、オーストラリアの公正取引委員会が個人情報の保護や大手メディア企業による市場独占の防止などを主軸とした、新たな規制を設ける動きを見せていることが明らかになりました。

Digital platforms inquiry | ACCC
https://www.accc.gov.au/focus-areas/inquiries/digital-platforms-inquiry/preliminary-report

Aussie watchdog readies clampdown on Google, Facebook | AFP.com
https://www.afp.com/en/news/15/aussie-watchdog-readies-clampdown-google-facebook-doc-1hp4am1

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は2018年12月にデジタルプラットフォームの発達とその影響をまとめた報告書を発表しました。

「予備報告」という位置づけながら合計374ページにも及ぶこの報告書の中でACCCは「GoogleとFacebookがオーストラリアのニュース業界に大きな影響を及ぼしているため、2014年から2017年の間に新聞などの伝統的な活字メディアの職業ジャーナリストの数は20％以上減少しています」と指摘。「オーストラリアのジャーナリズムにおける、世界的なデジタルプラットフォームの役割について再考すべきです」と結論しています。

以下の画像のうち左のグラフはオーストラリアのメディアが得る広告収入の推移を表した積み上げグラフです。2008年ごろから新聞などの印刷物を示す水色の部分が激減している傍らで、オンラインメディアを示す黄色の部分が増加している様子が分かります。この傾向は2014年以降顕著になりますが、同時期のオンラインメディアの伸びを表す右の棒グラフを見ると、成長の大部分はFacebookを表す青色の部分や、Googleを表す赤色の部分で占められていることが確認できます。

また、報告書ではGoogleやFacebookといったデジタルプラットフォームがニュース市場を席巻していることへの懸念に加え、これらのデジタルプラットフォームの広告配信アルゴリズムが不透明であるとの問題も指摘しています。

AFP通信の報道によると、ACCCが2019年6月30日までに発表する最終報告書には、今後必要な措置としてGDPRと同様の個人情報保護規定のほか、大手デジタル企業による合併・買収行為の大幅な規制が盛り込まれる見通しだとのこと。さらに、ニュースコンテンツやニュース集約サービスを格付けする「アルゴリズム審査委員会(Algorithm Review Board)」の設置も予定されています。

ACCCは「オーストラリアの人々がアクセスするニュースや情報などの範囲や提供方法を、デジタルプラットフォームが決めているという現状には問題がある」と指摘し、監視機関の新設について「大手デジタル企業がニュース市場への影響力を通じて自社の利益を不当に優先させることを防ぐためには、複雑で不透明な広告配信アルゴリズムの監視が必要不可欠です」と説明しています。

by William Iven

公的機関による規制強化について、テック企業などからは「ACCCが提案する推奨事項の大半は現実的ではなく、単なる他国企業の締め出しにほかならない」と非難する声が上がっています。Google・Facebook・Twitterなどが設立したオーストラリアの非営利団体DIGIの責任者であるスニータ・ボーズ氏はAFP通信の取材に対し、「ニュース配信に関するアルゴリズムは非常に重要な企業機密なので、これらを開示が必須となれば、大企業のみならず新規参入を目指す企業にとっても大打撃になります」と警告し、オーストラリアにおけるニュースや報道の在り方が規制によりゆがめられる恐れがあるとの意見を示しました。