サイエンス

発見が困難な28種類のガンのありかを放射性医薬品で可視化することに研究者が成功


放射性医薬品とは放射能を持つ医薬品であり、体内に取り入れた後で医薬品から出る放射線を分析することで、体外から見えない病気などを診断することができます。そんな放射性医薬品を使い、28種類ものガンを識別することに成功したと研究者らが発表しました。

68Ga-FAPI PET/CT: Tracer Uptake in 28 Different Kinds of Cancer
http://jnm.snmjournals.org/content/60/6/801

New Radiotracer Can Identify Nearly 30 Types of Cancer - SNMMI
https://www.snmmi.org/NewsPublications/NewsDetail.aspx?ItemNumber=31744

これまで、ガンの診断にはブドウ糖と似た構造を持つ18F-FDG(18F-フルデオキシグルコース)が用いられてきました。ガン組織の多くはブドウ糖代謝が旺盛なため、18F-FDGを投与した患者をポジトロン断層法(PET)で検査することでブドウ糖代謝機能を調べ、ガン組織を見つけ出せるという仕組みです。

ところが、ガン組織の中には18F-FDGによる検出感度の高くない種類が複数存在します。胃ガンや大腸ガンなど、正常な細胞によるブドウ糖代謝が生理的に活発な組織や、乳ガンや前立腺ガンなどブドウ糖代謝が旺盛でないガン組織もあるとのこと。

by Bokskapet

ハイデルベルク大学などの研究チームは、18F-FDGの代わりに68Ga-FAPI(線維芽細胞活性化タンパク質抑制剤)を用いたPET検査を行うことで、より多数のガンを識別できると発表しました。線維芽細胞とはガン組織中に多く見られる細胞であり、ガン組織に占める線維芽細胞の質量は最大で90%にもなります。ガン細胞中の線維芽細胞は正常な線維芽細胞とは違って多くの線維芽細胞活性化タンパク質を発現し、この線維芽細胞活性化タンパク質がガンの増殖などに関連しているとみられています。

68Ga-FAPIはそもそも抗ガン剤として開発された放射性医薬品であり、線維芽細胞活性化タンパク質を標的としています。そこで研究チームは28種類のガンを持つ80人の患者に対し、68Ga-FAPIを投与してから1時間後にPET検査を行いました。研究チームが68Ga-FAPIの取り込み値(SUV)を計測した結果、ガン組織に対して非常に高いSUVを記録。正常な組織とのSUV比は3倍~6倍強だったとのことで、68Ga-FAPIを使ってガン組織の識別が可能という結果が得られたそうです。

中でも肉腫・食道ガン・乳ガン・胆管細胞ガン・肺ガンなどで高いSUVが記録され、肝細胞ガン・大腸ガン・頭頸部ガン・卵巣ガン・すい臓ガン・前立腺ガン・褐色細胞腫・腎細胞ガン・分化型甲状腺ガン・腺様嚢胞ガン・胃ガンといったガンも識別可能だったとのこと。68Ga-FAPIは、18F-FDGを使った診断では上手く識別できないガン組織についても、高い感度で検出することができたと研究チームは述べています。


ハイデルベルク大学の医学教授であるUwe Haberkorn氏は、「68Ga-FAPIの著しく高い取り込み率は、従来の18F-FDGを使ったPET検査では診断できない種類のガンについても有用です」とコメントしています。また、患者が空腹の時に投与されて横になる必要がある18F-FDGと違い、68Ga-FAPIは患者の事前準備が必要ないため、患者の快適さを向上させることもできると研究チームは述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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