ハードウェア

アメリカ陸軍がロシアのGPS妨害に備えて次世代の通信装備やシステムを開発中

by The U.S. Army

衛星によって位置情報を特定する全地球測位システム(GPS)は現代人の生活にはなくてはならない技術ですが、当初は軍事用に開発されたもの。ロシアからのGPS妨害を受けて、20年以上GPSをシステムの根幹として運用しているアメリカ軍がGPS妨害に耐性のある通信装備をテスト運用し、さらに慣性航法システム(INS)を含んだ軍のシステム全体の大規模なバージョンアップを試みていると報じられています。

Eyeing Russia, Army fields jam-resistant GPS in Europe
https://www.c4isrnet.com/show-reporter/c4isrnet-conference/2019/06/06/eyeing-russia-army-fields-jam-resistant-gps-in-europe/


The US Army will test a new GPS that’s resistant to jamming this fall - The Verge
https://www.theverge.com/2019/6/9/18658901/us-army-testing-jamming-resistant-gps-global-positioning-system-russia-2nd-cavalry-regiment


導入のきっかけは2018年11月、ノルウェーで実施された北大西洋条約機構(NATO)の大規模演習でロシア軍がGPS信号の妨害を図ったことにあります。かねてよりロシアは、地理的に近い場所にあるノルウェーにNATO軍やアメリカ軍が駐留していることに反発していたとのこと。GPSの妨害は、隊の移動からミサイル、無人機の誘導まで、NATO軍やアメリカ軍に大きな影響を与えます。

CNN.co.jp : ロシア軍、NATO軍事演習でGPS妨害
https://www.cnn.co.jp/world/35128734.html


特に、冷戦終結後はレーダーと無線通信の技術が進歩したことで戦争のあり方が大きく変化し、電子戦・情報戦がメインとなりました。アメリカ軍のシステムの根幹となるGPSが妨害されてしまうと、軍全体の機能が失われてしまう恐れもあります。

そこで、アメリカ軍は2019年9月から、ドイツに駐屯している第2騎兵連隊で、Selective Availability Anti-spoofing Module(SAASM、選択可能型対スプーフィング攻撃モジュール)と極小サイズの原子時計、電波妨害耐性のあるアンテナを組み合わせたMounted Assured Positioning, Navigation and Timing System(埋込型精密位置航行計時システム)、通称「MAPS」というシステムを試験的に導入するとのこと。

MAPSが具体的にどのようにしてGPSを妨害するのかは公開されていませんが、この通信システムを使うことでGPSの妨害攻撃に耐性を持ちつつ、各ユニットの機器全体に位置情報や作戦のタイミングを配信することが可能になるそうです。また、第2騎兵連隊でのテスト運用と同時に、アメリカ陸軍は現行のシステムに置き換わる新生代の慣性航法システムの開発を検討していると報じられています。

by The U.S. Army

2019年6月6日にバージニア州アーリントンで開催された、軍事情報専門メディアであるC4ISRNETのカンファレンスで、第2騎兵連隊で測位・航行・計時担当を担当するNicholas Kioutas大佐は「現段階ではシステムがどれだけGPS妨害を耐えることができるのかを研究しているところです。システムは静的なものではないので、新しいシステムを常時使うことによってストレステストを行い、アップグレードを行おうと考えています」と語り、すぐに開発したシステムを現場に届けて試験的に運用しながら評価していくことが不可欠だと述べました。

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in ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by log1i_yk

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