メモ

欧米諸国の対スパイ機関を取り囲む困難な状況とは?

By Bernard Hermant

スマートフォンなどの通信技術の発展や、プライバシーなどの観点からの法律の変化などを受け、スパイの手口やスパイに対する我々の反応も変化し続けています。スパイを相手国に送り込んで諜報活動を行ったり、相手国のスパイの諜報活動を防ぐ情報機関の変化について、西欧社会とロシア・中国などでは状況が異なっていることをジャーナリストのエドワード・ルーカス氏が詳しく語っています。

The Spycraft Revolution – Foreign Policy
https://foreignpolicy.com/2019/04/27/the-spycraft-revolution-espionage-technology/

一昔前までは、職業などの経歴・住所・国籍をねつ造し、映画などで見られるような「身分の偽装」をして他国に忍び込むようなスパイ活動が可能でした。しかし、現代では技術が発展した結果、身分を偽装し続けることは困難になっているそうです。テクノロジー企業が開発した顔認識ソフトウェアによって、情報機関が膨大な数の顔のデータベースを保有しているだけでなく、Facebookなどにアップロードされた個人情報や写真と照会を行うことで、人物の特定は容易になっています、

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例えば「カナダの大学に通う建築学生」と主張している疑わしい人物がいる場合、情報機関はまず、学生の通う大学に関係したソーシャルメディア上のグループを調査するそうです。その人物がソーシャルメディアに何も情報もない人物だと判明すると、身分を偽装している可能性は高くなります。

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現代の対スパイ技術において最重要なものの1つは、スマートフォンです。スマートフォンをハッキングすれば電話やメッセージの内容を傍受できるだけでなく、スマートフォン自体の位置情報を傍受することで、所有者の現在位置までもわかるとのこと。

スマートフォンによるハッキング対策の1つは、「スマートフォンを持たない」ことです。しかし、スパイの疑いのある人が「スマートフォンを持っていない」と判明した場合、その人がスパイであるという疑いはかなり濃くなってしまいます。また、ほとんどの人が最初に取得した電話番号を維持しようとするという理由から、「ごく最近、電話番号を新しくした人」もスパイの疑いは強くなります。

By James Sutton

これに対し、スパイを送り込む側の戦略として、1つは「偽の身分をもっともらしくする」というものがあります。偽の名前、経歴、住所などはもちろんのこと、LinkedInの新しいアカウントや新しいクレジットカードを作成したり、Facebookのアカウントを休止したりして、「デジタルな身分」ももっともらしくするそうです。

2つ目の戦略は、「民間人を新しくスパイとして雇う」ことです。民間人は本物の身分を有しているため、身分を偽装する必要がありません。3つ目は「1回限りの偽の身分を使用して、任務終了後はその身分を捨てる」ということです。いずれの戦略もコストパフォーマンスが悪く、理想的な戦略ではないとのことです。

加えて、現代では、スパイが情報を入手したとしても、自分の属する機関に報告することは困難です。ネットワークを経由した情報の送信も傍受可能であるため信頼性に欠けます。他の報告の方法として、スパイが決められた場所に文書やマイクロフィルムなどのアイテムを落とし、協力者がそれを回収するという「デッド・ドロップ」が知られていますが、スマートフォンを使った位置情報の追跡によって、デッド・ドロップは発覚しやすくなっています。

By Nik MacMillan

そのような技術的な変化が諜報活動に与える影響に対して、欧米と中国・ロシアなどの間に存在する法的な格差がスパイの行動に制限をかけているそうです。ルーカス氏によると、中国の国家安全保障法はすべての個人と企業が情報機関を支援することを要求していますが、欧米ではスマートフォンの内部情報にアクセスするには捜査令状が必要です。

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また、スパイ活動に対する否定的な世論も根強く存在しています。アメリカ、イギリスやEUの情報機関は、スパイ活動に支障をきたすという懸念から、データ保護法やその他の法律を注視するために弁護士や専門家を雇っているそうです。

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ルーカス氏によると、ほとんどの国の情報機関は、国民の非難にさらされた場合を考慮するあまり活動に足かせが掛かり、敵国のスパイ活動を防止できなくなってきているとのこと。また、重要性が低いプライバシーですら保護されることを要求することによって、結果的に情報機関が敵国のスパイ活動を傍受することは難しくなっています。それにひきかえ、ロシアや中国などの社会主義国の情報機関はそのような障害なしに活動しています。

「ほとんどの人が、中国・ロシアのような、情報機関の報告書が国民の生活や政治を決定する統制社会に住みたくないと思っているはずです。中国・ロシアの情報機関に対抗して開かれた社会を守るためには、自国の情報機関の存在が必要です。しかし、その情報機関が過度に権力を持つべきでもありません」とルーカス氏は主張しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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