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「米中テクノロジー冷戦」を制するのはどちらか

by pxhere

トランプ大統領が発令した大統領令により、GoogleIntelQualcommMicrosoftといったアメリカの大手テクノロジー企業が一斉に中国のHuawei排除に向けた動きを見せています。折しも激化しつつある米中貿易戦争にからめて「テクノロジー冷戦」とも呼ばれるようになった米中の対立について、台湾を拠点に活動中でAppleやMicrosoftで勤務した経験もあるアナリストのベン・トンプソン氏が、米中両方の目線からその行く末を分析しています。

China, Leverage, and Values – Stratechery by Ben Thompson
https://stratechery.com/2019/china-leverage-and-values/

◆テクノロジー冷戦の幕開け
アメリカと中国のテクノロジー戦争はなにも昨今に始まったことではありません。テクノロジー冷戦につながる最初の動きは、Huaweiと同じ中国の大手スマートフォンメーカーZTEをアメリカが追放したことから始まっていると、トンプソン氏は考えています。

アメリカによるZTE追放の詳細は以下の記事から読むことができます。

アメリカ政府の輸出禁止措置で中国の大手スマートフォンメーカーZTEはデフォルト危機に陥っている - GIGAZINE


◆アメリカの優位性
トンプソン氏は、テクノロジー冷戦についてはアメリカに一定のアドバンテージがあると分析しています。例えばiPhoneの大半は中国製ですが、iPhoneを製造することで中国が得ている利益は、iPhoneが生み出す利益全体の約3.6%に過ぎないという試算があります。このことは、中国が生産するハイテク機器の実質的な価値はアメリカ・日本・韓国・台湾の企業が担っており、いかに「世界の工場」と呼ばれる中国であっても、アメリカにとっては代替可能な生産地のひとつでしかないということを意味しています。

AppleからiPhoneの生産を請け負っていることで知られる台湾の大手電子機器メーカーFoxconnは2019年4月に、中国国内だけでなくインドにも生産拠点を作ると発表しました。

iPhoneを製造するFoxconnが「インドでもiPhoneの製造を開始する」と発表 - GIGAZINE


また、中国は最先端技術、特にハイテク機器の心臓部となるプロセッサーなどの製造や設計についてはいまだアメリカに大きく水をあけられており、ソフトウェア面でもアメリカに依存している状況にあります。Huaweiが独自のOSを開発するなど、中国も追い上げを見せていますが、アメリカに追いつくにはまだ何年もかかるだろうとのことです。

by chuyu2014

もちろん、中国にも対抗手段はあります。そのひとつが「物資の備蓄」です。海外メディアBloombergの報道によると、Huaweiは少なくとも3カ月分は生産を続けられるだけの部品を確保しているとのことですが、テクノロジー冷戦が長期化するとなればとても十分な備蓄量とはいえません。

そして、中国の最大の切り札となるカードがレアアースです。電子部品の製造に欠かせないレアアースは、全世界の供給量のうち90%以上を中国が占めています。中国はレアアースがテクノロジー冷戦を左右する戦略物資だということを十分に理解しており、「2019年5月20日に習近平国家主席が江西省カン州市のレアアース産出拠点を訪問したのは気まぐれではない」とトンプソン氏は指摘しています。

◆戦いの鍵を握るのはiPhone
トンプソン氏は、アメリカにとっても中国にとっても、iPhoneが戦いの鍵になると見ています。中国はiPhoneの大規模な生産地であるとともに、依然として大きな売上が見込める市場でもあるからです。中国がiPhoneを中国市場から追放すれば、Appleをはじめとするアメリカの企業は大打撃を受けてしまいます。その一方で、iPhoneは中国で数百万人規模の雇用を創出しており、これ以上失業者を増やしたくない中国の指導者たちはiPhoneにおいそれと手出しできません。

by halfpoint

また、iPhoneへの追加関税により状況が大きく変わる可能性もあります。アメリカ合衆国通商代表部(USTR)は2019年5月13日、中国からの輸入品に対する追加関税の第4弾を発表しました。早ければ2019年6月下旬にも発動するこの追加関税は、これまで対象外だった3805品目に対し最大25%の追加関税を課すという内容で、対象品目のリストにはiPhoneも含まれています。もしこのまま追加関税が発動されればiPhoneの値上がりは避けられず、これまでiPhoneを愛用してきたエンドユーザーはiPhoneの価格上昇に敏感に反応するとみられています。

トンプソン氏はテクノロジー冷戦について、大局的にはアメリカが優勢だとみています。というのも、前述のとおりハイテク機器のプロセッサーの優位性は大きく、日本・韓国・台湾を味方につけているアメリカは中国を大きくリードしているといえるからです。中国も猛烈な勢いで追い上げてはいますが、アメリカに追いつくにはまだ時間がかかるだろうとのこと。

また、トンプソン氏はテクノロジー冷戦を「検閲と開放性」「統制と創造性」「中央集権と競争」の戦いだと位置づけており、企業の経営者や投資家だけでなく、ハイテク機器に触れる誰もが真剣に考えなければならない問題だと締めくくっています。

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