生き物

表情やしぐさから感情を読み取り無意識に受け継ぐ「感情の伝染」はカラスの間でも起こる

by Tom Swinnen

人間の感情は人から人に伝染し、特に影響力が強い人は「いるだけで周囲の人が安らぎを覚える」あるいは逆に「何もしていないのに人を不安にさせる」ことがあります。このような感情の伝染がカラスでも起こっている可能性があると、研究者が発表しました。

Negative emotional contagion and cognitive bias in common ravens (Corvus corax) | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2019/05/14/1817066116

Ravens can transmit negative emotions from one another, just like humans
https://www.zmescience.com/science/news-science/negative-emotional-contagion-raven-05243/

人間は言語的・非言語的なツールを使って非常に複雑なコミュニケーションをとる生き物です。人間は相手の感情や考えをさまざまな方法で読み取ることで社会的なやりとりを効率化し、地球上で繁栄してきました。例えば、相手の表情から「痛み」を読み取ることは、「助けを求めている」ということを察すると同時に「危機が近くにある可能性がある」ということを即座に知る手助けとなります。

また、これまでの研究で、人は相手の表情を見るだけで、気づかないうちにその表情を受け継いでしまうこともわかっています。言い換えると、私たち人間は人との関係において感情を共有しているわけです。このような無意識に起こる「感情の伝染」の一例が、スポーツ観戦における熱狂や集団パニックといえます。

by ELEVATE

新しい論文で、ウィーン大学とチューリッヒ大学の研究者は、人間だけでなくカラスの間でも「感情の伝染」が起こるということを発表しました。カラスの知能が高いことはこれまでも複数の研究で認められているところ。研究者は、知能が高く社会的行動を取るカラスなら感情の伝染が起こってもおかしくないのでは、と考えて実験を行いました。

「ポジティブな感情よりもネガティブな感情の方がわかりやすい」ということで、実験ではカラスのネガティブな感情がどのくらい伝染するのかが調べられたとのこと。研究者はまず16羽のカラスを2羽1組にし、好物であるチーズが入った箱と空の箱を与えました。そしてカラスがそれぞれの箱の中身を確認してから、2羽は別々の場所に移されて、一方のカラスに「第3の箱」が与えられました。

この第3の箱にはカラスの好きな乾燥ドッグフードあるいは別段好物ではないニンジンが入っていました。これは認知バイアステストとして知られる方法で、別の場所に移された1羽のカラスは、もう1羽が食べ物に対してどう反応したかを見ることができるものの、実際に箱に入っていたエサが何かを知ることはできませんでした。その後、ペアのカラスの反応を見ていたカラスに同じようにして第3の箱を提示したところ、ペアのカラスがエサに対してネガティブな反応を示していた場合、そのカラスはより念入りに箱を調べることが示されました。

by Pixabay

研究者は、この行動から「カラスの場合もネガティブな感情が伝染する可能性がある」と結論づけています。ネガティブな感情を示さないカラスの様子を見ていたカラスは、第3の箱に対して懐疑的になることはなかったそうです。

なお、同様のことをを調査した研究では、サルや犬でも感情が伝染する可能性があると結論づけられています。

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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