取材

ライブドローイングで女の子が生き生きと動くアニメを描きつつ入江泰浩監督がデジタル作画を語る


アニメ「灼熱の卓球娘」「CØDE:BREAKER」「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」の監督でアニメーターでもある入江泰浩さんが、マチ★アソビ vol.22の「ACTFマチ★アソビ出張講座」に登壇。60枚の絵で構成されるアニメーションを作りつつ、デジタルとアナログの作画の違いや、制作現場の現状などを語ってくれました。

ACTFマチ★アソビ出張講座
http://www.machiasobi.com/events/actf.html

ACTF(アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム)とは、アニメ業界関係者のデジタル制作技術に関する情報交換や人材交流を目的として、一般社団法人日本アニメーター・演出協会(JAniCA)とワコム、セルシスが開催している業界向けイベントです。マチ★アソビ出張講座ではアニメ業界とは関係のない来場者でもわかりやすい、デジタル作画に関しての話が繰り広げられました。

司会進行を担当するJAniCA・大坪英之さんと話をしつつ、「Wacom MobileStudio Pro 16」ですらすらと絵を描き進める入江泰浩監督。


ただ、仕事で絵コンテを描く際には13インチのものを使っているとのこと。その理由は、インチ数が大きくなるとタブレット上で腕を動かす距離が長くなるので、その距離を縮めるため。また、絵コンテは「こういう絵を入れる」ということが分かればOKで、精緻な作画が求められないという理由もあるそうです。

かつてはその反応性から「クレーンゲームで絵を描いているような感じ」と言われたデジタル作画に入江さんが環境を移した理由の1つは「自分の中で『紙が優れている部分』を『デジタルの優れている部分』が越えていった」から。紙だとまず制作さんに用意してもらうという手間がかかりますが、デジタルであれば機材があればその手間は不要となります。もう1つの理由は「消しゴムが簡単にかけられる」という点。入江さんは筆圧が強いため、紙だと何度も消しゴムを使っていたのですが、デジタル作画だとUndoで線が消えるという大きなメリットがあるというわけです。

と、こういう話をしつつCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)でどんどん絵を描いていく入江さん。いわく、「次はこう動かそう」と自分の考えるままに描いているから手を止めることなく描き続けられていて、「こういうオチにしよう」という方針を立てるのであれば、手を止めて考える時間が出てくるとのこと。そのため、この時点では女の子が1時間後にどういう目に遭っているかはわからないとのことでした。


作画に用いているブラシは、イラストレーターとして知られるredjuiceさんによる鉛筆R。入江さんの場合、自分で「こういったブラシはないか」と探しに行くのではなく、ネットの集合知としてTwitterで流れてきたおすすめのブラシを実際に片っ端から使ってみていいものを探る、というやり方をしているとのこと。

なお、サクサクと絵を描いてアニメーションを作るのであればクリスタがよいものの、カメラワークなどに凝りたいのであればFlashなどを使う方がよいとのことでした。基本的に「必要に迫られると新しいアプリを使う」というスタンスで、ToonBoom StoryBoard Proは絵コンテをムービーにすぐ出力できるという機能があることから使っているとのことでした。StoryBoard Proは、新海誠監督が使っているということでもよく知られているソフトです。

コンテのムービー書き出しは、OPのように短尺の映像を音楽と合わせる必要がある場合にコンテ撮を作るより便利なのでムービーコンテを作る事例が増えていると入江さん。ただ、TVアニメの現場では、たとえば紙で作業する監督に対してムービーコンテを見せても、コンテを直すにあたってどうするのかという問題が出てくるため、ほぼ使われていないそうです。機能としては、クリスタであればレイヤーを重ねて「ここの腕はこういう角度で描いてください」と修正を入れること自体はできる(下記画像・キャラクターの左腕に対する緑色の線)ものの、それがワークフローとして実際に可能かどうかは別、ということです。


データの扱い、および直し作業に関してはまだまだ業界でもはっきりと体系化されていない部分で、ふだんデジタル作画している人がいない現場だと、そもそもマニュアルが存在しない事例もあるとのこと。実際問題、最終的に完成した画面を見て、手描きなのかデジタル作画なのかを見分けるのは、参加したアニメーターがデジタル作画をしていると公言でもしていない限り見分けるのは不可能であろうと入江さん。デジタル作画をプリントアウトして扱うことになったとしても、直接消しゴムで消せないという点以外はほぼ一緒だそうです。

そして今のところ、アニメ業界でもデジタル作画をしているアニメーターの数はそこまで多くなく、いるところにはいるものの、1つの作品を1クール作るだけの人数を集めることはまず無理だそうです。ただ、数は確実に増えているので、やがては実現する見込みです。

デジタル作画で原画を描くとき気をつけなければならないことの1つとして、入江さんは「どこまでも拡大できてしまう」という点を挙げました。拡大倍率を上げると、極端に表現するとドットの1つ1つまで修正していくことが可能です。


しかし、実際に放送されるときには、拡大したのとは異なるサイズで放送されます。つまり「この1ピクセルを……」とこだわったからといって、それが実際に画面上に反映されるとは限らないということです。こういう点を割りきって、そこまでは作り込まないと自分ルールを決められるなら、デジタル作画はよいツールになる、というのが入江さんの見解。


……などと話しつつ、入江さんは1時間ちょっとのイベントの間に、60枚で女の子が思いっきりキックしたりジャンプしたりする約8秒のアニメーションを作り上げました。どういった映像なのかは、入江さんの公式Twitterアカウントで公開されています。後半、ジャンプを終えた女の子が走り出すかのような動作に入ってやめる流れがありますが、これはイベントが予定時間に近づいて、まとめに入った影響だと思われます。


なお、入江さんはこのマチ★アソビ vol.22の期間中、ボードウォークのパラソルで似顔絵を描くイベントを実施しています。


色紙は水彩絵の具で彩色されています。入江さんは、これを1組20分ほどで1日14組描き上げていました。


NHKのニュースでも、入江さんの似顔絵ライブドローイングの様子が報じられていました。

アニメ満喫するイベントで大勢の若者 徳島市 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190504/k10011905401000.html

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in 取材,   動画,   アニメ, Posted by logc_nt

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