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「フェイクニュースを信じやすいのはなぜか」を心理学の観点から解説、どう対処すればいいのか?

by Paul Wullum

フェイクニュース」を信じた群衆によって2人がリンチ・殺害されたという事件が起きてしまうほど、現代では「嘘」は瞬く間に拡散されてしまい、嘘を信じ込む人も大勢います。オーストラリアのモナッシュ大学で認知神経科学を研究しているジュリアン・マシューズさんが、心理学の観点からフェイクニュースが人間の心に入り込んでくる原理と、フェイクニュースを信じないようにする対策法について語っています。

How fake news gets into our minds, and what you can do to resist it
https://theconversation.com/how-fake-news-gets-into-our-minds-and-what-you-can-do-to-resist-it-114921

新聞などのメディアでも昔からフェイクニュースは存在してきました。しかし、インターネットが一般的なものになって以降、誰でもフェイクニュースを作成、発信することが可能となり、その影響はますます大きくなっています。

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「パリの凱旋門が燃えているのはフェイク」というツイートがフェイクだった - GIGAZINE


フェイクニュースを発信する嘘つきがごく少数であっても、フェイクニュースによる影響は大きく、多数の集団の行動をゆがめてしまうという研究結果も報告されており、今やフェイクニュースは重大な社会問題であるといえます。

マシューズさんによると、心理学の観点から考える「フェイクニュースの対処法」とは、「『なぜフェイクニュースは人の心に残るのか』を理解すること」であるとのこと。


人の記憶は、自身が認識しないうちに歪められてしまうことがあるため、「どのように記憶は歪められるのか」や「どのように自分が物事を記憶するのか」を理解することが、フェイクニュースへの対策に繋がるようです。

◆どのように記憶は歪められるのか?
フェイクニュースにだまされてしまう主な原因は「錯誤帰属」と呼ばれるものです。錯誤帰属とは、それを「どこかで」見知ったことは覚えているものの、「どこで」見知ったのかは覚えていないという現象です。錯誤帰属を利用している身近なモノの1つは「コマーシャル」で、私たちが商品を見たとき、「他の商品よりも見覚えがある」と感じて思わず購入してしまうことがありますが、私たちは「見覚えがあると感じている」ことは自覚できても、「見覚えがあると感じている原因はコマーシャルでその商品を見たから」という根本的な原因にまで思い至ることはまれです。

By NomadSoul1

錯誤帰属によって、人間はフェイクニュースであったとしても、それを繰り返し聞いたり読んだりすると信じる可能性が高くなる傾向があります。また、大多数の人が誤った認識を持つと、マンデラ効果のようにさらにその誤った認識が加速する可能性もあるとのことです。

◆偏見はフェイクニュースの記憶を補強する
マシューズさんによると、人間はPCで「ファイルを保存する」ように物事を単純に記憶しているわけではなく、人は「正確であるかどうか」よりも「自分が信じたい内容かどうか」を重視して物事を記憶するとのこと。例えば、サイバー心気症の人々は自分がかかっていると信じた病気に関する情報は記憶していますが、自分がかかっていると思った病気を否定するような情報は記憶しておらず、「自分が信じたい内容を記憶する」というメカニズムが機能している例といえます。

「自分自身は病気に違いない」と信じ込み解決方法をネットで検索し続ける「サイバー心気症」とは? - GIGAZINE


フェイクニュースは人の偏見を利用して、「思わず信じてしまいたくなるような内容」であることが多く、「自分が信じたい内容を記憶する」という脳のメカニズム故に記憶に残りやすくなります。そして、のちにニュースが「フェイクだった」と訂正されたとしても、その訂正の与える感情的なインパクトは小さいため記憶に残りにくく、訂正だけが忘れ去られてしまう傾向があるようです。

◆フェイクニュースに対処する方法とは?
フェイクニュースは人間の記憶の原理を利用しており、完全に対処するのはほぼ不可能です。しかし、マシューズさんは「好奇心に基づいて疑問をもつこと」や、「自分自身の偏見を意識すること」が重要だと語っています。具体的には以下のような内容を自問自答するとフェイクニュースにだまされにくくなると紹介していました。

・どのような「分類」の文章なのか
一口に文章といっても、「ニュース」「誰かの意見」「ユーモア」など、様々な分類ができます。こういった分類を意識しながら文章を読むと、自分の記憶の中でよりハッキリと内容が整理されるようになります。

・情報源はどこなのか
もしも「本物の重大事件」であるならば、多くの報道機関がそのニュースを取り上げているはずです。情報源があまりにも少ない場合、内容を疑ってみることも必要かもしれません。

・誰が利益を得るのか
そのフェイクニュースを拡散することで誰が利益を得るのかを考えると、記憶の整理だけでなく、自分の興味や偏見を見直すことにも有効だそうです。

マシューズさんは、「情報源に注意を払って、自分自身の記憶が不確かな場合には自分自身を疑い、そして偏見がないように努めることが大切です」と締めくくっています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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