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植民地化されてもタトゥー文化が生き残ったサモアにおけるタトゥーの意味とは?

by Andrew Moore

皮膚に傷を付けて着色することで模様や文字などを描く入れ墨(タトゥー)は、古くから世界中のさまざまな文化で行われてきました。16世紀の大航海時代以降にヨーロッパの列強諸国によって植民地化された地域では、キリスト教の宣教師らがタトゥーを野蛮なものとみなしたため、タトゥー文化が消えてしまったケースが多くありますが、南太平洋のサモアではタトゥー文化が消えることなく続きました。いったいなぜサモアではタトゥー文化が生き残ったのかという理由について、サイエンスライターのAmber Dance氏がまとめています。

How the Samoan Tattoo Survived Colonialism - SAPIENS
https://www.sapiens.org/body/samoan-tattoo/

18世紀から19世紀にかけて南太平洋の島々へとキリスト教の宣教師らが到達した時、宣教師たちは現地に伝わるタトゥー文化を一掃しようと考えました。そして、多くの地域でタトゥー文化を駆逐することに成功したものの、サモアでは宣教師らの試みが失敗に終わったとのこと。


サモアでは男性が施すタトゥーを「pe’a(ペア)」と呼び、女性が施すタトゥーを「malu(マウル)」と呼びます。近年ではアメリカやニュージーランド、オーストラリアなどに移住したサモア人が、先祖とのつながりを示すためにタトゥーを利用するようになりました。また、ファッションとしてサモアのタトゥーを入れる人々が他の文化圏でも登場しているほか、サモアのタトゥー職人が伝統的なタトゥーの技術が失われてしまった他の太平洋の島々へ渡り、タトゥーの技術を伝えるといった活動も行われています。

ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワの人類学者であるSean Mallon氏は、「サモアのタトゥー文化が生き残ったのは驚くべきことです」と述べています。

by pbkwee

サモアのタトゥーを目にした宣教師らは、タトゥーを「野蛮な異教徒の慣習」とみなしたとMallon氏は指摘。タトゥーをタブーなものとした植民地の支配者らは、タトゥーを施したサモア人らに対し罰金や罰を与えました。しかし、サモアの人々がこれらの支配をくぐり抜けることをサモアの地理的な条件が助けたと、フランスの人類学者であるSébastien Galliot氏は考えているそうです。

多くの島からなるサモアでは、植民地として支配された当時でも分権化された首長システムが維持されていたとのこと。ヨーロッパ人らがいくつかの村でタトゥーの撲滅に成功したとしても、他の首長を持つ村や島には影響を及ぼしませんでした。これにより、サモアではタトゥーが生き残る余地が豊富に残ったとGalliot氏は主張しています。

例えば1860年代にはサモア東部の島々でタトゥーが禁止されましたが、タトゥーを彫りたい若者たちはわざわざ群島の西側まで行き、タトゥーを彫ってもらっていたとのこと。一時はタトゥーがあることにより自分の故郷に帰れない時期もありましたが、それでも若者たちはタトゥーを彫ることを望んだそうで、1890年代になると罰金と引き換えにタトゥーのある人々も故郷へ戻ることができました。

また、宣教師らがタトゥーを宗教的なものであると考えていなかった点も、サモアのタトゥーが存続する重要な要因でした。サモアではTaema and Tilafaigaという伝説上の姉妹がタトゥーを伝えたことになっていますが、宣教師らはこの事実に気づかなかったため、タトゥーを「キリスト教を脅かすもの」と捉えずに厳しい弾圧が行われなかったとGilloit氏は述べています。現在でもサモアのカトリック教徒らはタトゥーを受け入れており、Mallon氏はサモアで司祭を務めていた自身のおじが、体にタトゥーを入れていたことを記憶しているとのこと。

by Fotu Vaai

さらにサモアではタトゥーを入れることに、社会的に重要な意味があることも知られています。サモア人男性にとってタトゥーは地位や強さ、勇気を示すものであり、重要な通過儀礼となっていました。サモア人のタトゥーアーティストであるSi’i Liufau氏は、「サモアではタトゥーがない男は尊敬されません。立派な男になるにはタトゥーがないとダメなのです」と語っており、人々はタトゥーを彫る資金のためにお金をためておくそうです。

タトゥーの恩恵を受けるのは男性だけでなく、女性においてもタトゥーが特権をもたらします。タトゥーのある女性は儀礼において飲み物を配る役割を得ることができ、葬式の際に贈り物を集めることができます。現在でも、サモア人女性の一部は、大学卒業や仕事で昇進した際にタトゥーを彫るとのこと。

Galliot氏は「タトゥーを施すことは現代でもサモアの人々にとって非常に重要なことであり、コミュニティに属しているということを表します」と述べています。また、世界中に移住したサモアの人々にとっても、体に施したサモアのタトゥーは先祖とのつながりを思い起こさせ、マオリトンガといった他のグループとサモア人との識別にも役立つものとなっています。

by Christopher Jetton

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in メモ, Posted by log1h_ik

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