毎日同じ食事にすることには「認知力の無駄遣い」を減らしてクリエイティビティを高める力があるかも

by congerdesign

Appleの元CEOスティーブ・ジョブズ氏が余計なことに悩まされないようにと、毎日同じ服装で仕事をしていたことはよく知られていますが、服装だけでなく毎日の食事を同じメニューにすることにも意味があるかもしれないと、海外メディアThe Atlanticが取材を通じて探っています。

The People Who Eat the Same Lunch Every Day - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/family/archive/2019/03/eating-the-same-thing-lunch-meal/584347/

イギリスで実施された調査では、イギリス人の16人に1人が2年間毎日同じ昼食を食べており、さらに労働者に限定すると77％が9ヶ月間連続で毎日同じ昼食を食べているとの結果が報告されています。これは食品会社による世論調査なので偏りがある可能性がありますが、毎日同じ物を食べている人は確かに存在します。

例を挙げると、アメリカンフットボールのコーチであるニック・セイバン氏、フィットネスクラブを経営するCrunch Fitnessのベン・ミジリーCEO、ファッションデザイナーで元サッカー選手デビッド・ベッカム氏の妻ヴィクトリア・ベッカム氏、「毎日同じ物が食べられるなら、それがなんでも構わない」との言葉を残した哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインなどです。「毎日同じ食事内容」と聞くと退屈でクリエイティビティが欠けているような印象を持ちますが、プロフェッショナルたちが集中すべきことに集中するために役立っているとも取れます。

By Prostock-studio

食事の多様性について、ニューヨーク大学で食品学を研究するKrishnendu Ray氏は「多様な食事を追い求める食文化が発達したのはごく最近のことで、人類史からすると毎日違う物を食べる人の方が例外的でしょう」と話しています。また、イェール大学の歴史学者ポール・フリードマン教授は、今でも世界中の多くの地域では主食の選択肢はごく限られていると分析しています。「例えば、米食文化の地域ではあらゆる食事で米が主食とされているし、別の地域ではジャガイモが主食の場合もあります。また、脂肪分のほとんどをバターやバターオイルであるギーで賄っている地域もあります。伝統的な農耕文化では、主食＋脂肪分＋薬味という組み合わせが食事を中心を占めていました」とフリードマン教授は述べています。

By tycoon101

誰かの食事を用意しなくてはならない立場から見ても、メニューを固定化するメリットはあるとの声もあります。ワイオミング州に住む作家のAmbreia Meadows-Fernandez氏は、自分と3歳の息子の週末の食事を「特製ミートライスと野菜」に決めたことで、子どもの食事を何にするか考えるストレスから解放されたと話しています。彼女の息子は昼食も大抵同じ物を食べていて、バラエティー豊かな食事でなくても気にしていない様子だとのこと。

またニューヨークでコンピューターエンジニアとして働くChloe Cota氏はThe Atlanticのインタビューに対して「私は会社の食堂ではいつもシーザーサラダとサンドイッチを注文することに決めているし、服装もスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグにあやかって毎日同じ格好をすることにしています。これには『認知力の無駄遣い』を減らす効果がある、と私は思っています」と話しています。Cota氏のこの食習慣は、高校生時代に摂食障害から立ち直った時から続いているとのこと。なお、米ミシガン州の元設計士Vern Loomis氏は、職場で毎日ピーナッツバターのサンドイッチを食べているのを同僚に冷やかされた経験について、「あれは多分『嫉妬』だろうね。僕が80セント(約90円)の昼食を食べている時に、彼らは外食に15ドル(約1700円)も費やしていたんだから」と分析しています。

By romankosolapov

「昼食のメニューを毎日変えることで単調な毎日に変化をつけようとするのも悪いことではありません。ですが、弁当箱の中身に目新しさを求めるよりも、いっそ割り切って何か別の楽しみを見つけるのもアリでしょう」と、The AtlanticのライターJoe Pinsker氏は述べています。