レビュー

宝石のごとく光るステンドグラスを並べて相手の戦略を読み合う「アズール:シントラのステンドグラス」は前作を超える完成度と美しさ


2018年のドイツゲーム大賞ドイツ年間ゲーム大賞の2冠を達成したボードゲーム「アズール」の続編である「アズール:シントラのステンドグラス」が2019年2月23日に登場しました。今作ではプレイヤーはガラス職人となって、宮殿のステンドグラスの完成を目指す内容になっているとのこと。ゲーム性もさることながらタイルやボードなど内容物のビジュアルも素晴らしかった「アズール」の2作目とはどんなゲームなのか実際に遊んでみたところ、前作の高い完成度を上回る内容となっていました。

アズール:シントラのステンドグラス | | ANALOG GAME INDEX
http://hobbyjapan.games/azul_stained_glass_of_sintra/


前作の「アズール」がどんなゲームなのかは以下の記事でレビュー済み。

見た目の美しさと裏腹にプレイヤー間の高度な駆け引きを要求するシビアなゲーム「アズール」を実際にプレイしてみました - GIGAZINE


◆ゲームの内容物
「アズール:シントラのステンドグラス」の外箱はこんな感じで、ゲームタイトルの背景にはステンドグラスが描かれています。前作でエヴォラに建設した宮殿の壁面を美しい陶器のタイルで飾ったマヌエル1世が、シントラ宮殿の礼拝堂のステンドグラスを完成させるため、ガラス職人を呼び集めたというのがこのゲームのストーリー。プレイヤーはガラス職人となって、宮殿のステンドグラスを完成させなければなりません。


対象年齢は8歳以上で、プレイ人数は2人~4人、プレイ時間は30分~45分が想定されています。


内容物はグラスタワーと布袋、得点ボード……


宮殿ボード1枚×4色、図案票8枚×4色、ガラス職人コマ1つ×4色、得点マーカー2つ×4色、スタートプレイヤーマーカー、工房展示ボード9枚、ステンドグラスのタイル20個×5色。


ステンドグラスのタイルを収納するために使う布袋は、前作は青色だったのに対して今作では赤紫色でした。


前作では宮殿の壁のタイルという設定でしたが、今作では宮殿の窓を飾るステンドグラスを扱います。透き通ってキラキラと輝くステンドグラスは全5色。見た目はまるでドロップや宝石のようで、その場にいた全員が「美しすぎる……」とため息をもらすほど。


グラスタワーはこんな感じ。不要になったステンドグラスを入れるために使う容器で、ステンドグラスに彩られた塔のようなデザインとなっています。前作にはなかった内容物で、場に置いたときのインパクトはかなりのもの。


ステンドグラスを配置する工房展示ボードはこんな感じ。前作とほとんど同じですが……


今作では裏側に、ステンドグラス5色を置けるように色分けされています。このゲームではステンドグラスの色が重要になりますが、工房展示ボードに書かれている模様と位置で区別することができるため、色覚異常の人でも一緒に遊べるというわけです。


宮殿ボードは4色用意されていて、上の部分がギザギザになっています。「A面」と「B面」と表裏が用意されていて、面に応じて点数計算が微妙に異なるとのこと。


図案票にはステンドグラスと同じ色のカラータイルが描かれています。図案票の端は山型に切れ込みが入っていて……


宮殿ボードと組み合わせることでプレイヤーボードとなります。


前作では得点は個人のプレイヤーボード上に示されていましたが、今作では得点ボードが別途用意されているため、各プレイヤーの得点を全員が把握しやすくなりました。


◆ゲームの準備
まずは、最初の手番を行うスタートプレイヤーを決定します。説明書には「一番最近窓を拭いた人がスタートプレイヤー」とあったのですが、プレイしていた編集部員全員が「窓掃除……?」とつぶやいたきり遠い目をしながら誰も発言しなくなってしまったため、今回はじゃんけんで決定。スタートプレイヤーはスタートプレイヤーマーカーを受け取ります。


得点ボードの「0」の位置と、中央右のペナルティ表示部分にプレイヤーマーカーを置きます。スタートプレイヤーは5色のステンドグラスを、得点ボードの中央左のラウンド表示部分に下から並べます。そして5枚の上へさらにランダムに引いた1枚のステンドグラスを配置します。


各プレイヤーは宮殿ボードに図案票をランダムに組み合わせて、プレイヤーボードを準備して、一番左の図案票の上にガラス職人コマを配置。


工房展示ボード9枚を丸く並べて、1枚につきステンドグラスをランダムに4つずつ並べたら準備完了です。


◆ゲームの進め方
スタートプレイヤーから手番を始めます。手番のプレイヤーは工房展示ボードからステンドグラスを1色だけ選んで獲得し、残った色のタイルを場の中央に寄せ集めます。


取ってきたステンドグラスは、「ガラス職人コマを置いている列」もしくは「ガラス職人コマを置いた列より右」の図案票に配置できます。ステンドグラスを配置したら、配置した図案票の上にガラス職人コマを移動させます。つまり、ガラス職人コマはゲームが進行するにつれて右へ移動していくというわけです。


例えば、以下の画像ではプレイヤーが赤色のステンドグラスを取ってきていますが、ガラス職人コマの置かれている列より右の図案票には赤いステンドグラスのマスがないため、置くことができません。


もし左に置きたい場合は、自分の手番の時にあらかじめガラス職人コマを一番左の列まで移動させることができます。ただし、ガラス職人のコマを移動した場合はステンドグラスを取ってくることができません。そのため、左の列の図案票ほどそろえるのは難しいといえます。


図案票に5つのタイルを置くことができたら、ステンドグラスの完成。そろったステンドグラス5枚のうち、1枚を選んで……


宮殿ボードで同じ列の枠に配置します。


残りの4つはグラスタワーに入れて「処分」します。


図案票は表裏があり、一度そろえたらひっくり返して使います。


なお、一度そろえた図案票をもう一度そろえた場合はその図案票を取り除きます。


そのため、ゲームが進むにつれてプレイヤーボードはどんどん歯抜けの状態になっていきます。


このゲームの目的は、ステンドグラスを集めて図案票通りにプレイヤーボードに配置して、図案票を完成させて得点をゲットすること。プレイヤーは図案票通りに5つのステンドグラスをそろえる度に、以下の3つの合計を得点としてゲットできます。
・ステンドグラスがそろった列の宮殿ボードの数字
・ガラス職人コマより右にある、宮殿ボードに1個以上配置されている列の数字の合計
・ラウンド表示タイルによるボーナス点

例えば以下の画像の場合は「ステンドグラスがそろった列の宮殿ボードの数字」が2、「ガラス職人コマより右にある、宮殿ボードに1個以上配置されている列の数字の合計」が2+1+2=5、そしてラウンド表示タイルの一番上にあるオレンジ色は完成した図案票に2枚含まれているので、2+5+2=9点をゲットできます。


右の図案票を完成させてから左の図案表を完成させることが、得点を大幅にアップさせるためには重要となります。しかし、ガラス職人コマは右にしか動かせず、左の図案票をそろえるためにはガラス職人コマを一度左端に戻さなければないため、左をそろえるためには何ターンも先を読んでタイミングを見計らう必要があります。どういう順番で図案票を完成させていくのかを考えるというところでプレイヤーの戦略に幅が生まれているところが、このゲームの大きなポイント。


得点ボードにはスゴロクのような得点表示部分があり、プレイヤーマーカーを動かして得点を加算していきます。


ステンドグラスは工房展示ボードの上からだけではなく、残り物が寄せ集められた場の中央からゲットすることもできますが……


一番最初に残り物に手を出したプレイヤーはペナルティを受けてしまうため、得点ボードのペナルティ表示部分に置かれたプレイヤーマーカーを、1つ下にずらします。


寄せ集められた残り物は、色が明らかに偏ることもあります。例えば以下の場面は、中央に黄色のステンドグラスが7個も集まってしまった状況。


黄色5個という図案票をそろえたかった赤プレイヤーは、必要量をオーバーしているのもかまわず中央から7個をゲット。一気に5個並べて図案票は完成したものの、2個余ってしまいました。


「余ったステンドグラスは不要なので割ってしまった」ということで、グラスタワーに入れて処分されます。


「王様から与えられた大事なステンドグラスを割ってしまった」ということで、ペナルティ表示部分のプレイヤーマーカーを割った枚数だけ下に動かします。


ラウンド表示部分のステンドグラスがすべてなくなったらゲーム終了です。「プレイ時間は30分~45分」と想定されていましたが、4人で実際にルールを把握しながらプレイするとおよそ1時間15分ほどかかりました。


最終得点の計算ではまず、これまで加算されてきた得点に「図案票に残っているガラス片3個ごとに1点」を加え、さらに「宮殿ボードの面ごとのボーナスポイント」を加えます。宮殿ボードの面ごとのボーナスポイントはA面かB面かによって計算が変わります。例えばA面の場合は以下の画像のような感じで、4つの窓枠ごとにガラスが何個置かれているかで計算します。4個あれば10点、3個あれば6点、2個あれば3点、1個以下ならば0点をゲット。


ペナルティによる減点を反映し、最終得点が決定。最も高いプレイヤーが勝利となります。


最も多くの得点を集めて1位となったプレイヤーのステンドグラスはこんな感じ。ステンドグラスがたくさん置かれて非常にきれいですが、「右から4列目は上下の色をそろえるべきだった、これでは画竜点睛を欠く」と職人らしく厳しい自己評価を下していました。


なお、中央に並べる皿はプレイ人数に応じて変わります。以下の場合は2人でプレイしたところで、皿の数は5枚となっています。2人でのプレイは人数が少ない分、4人でプレイするよりも相手の動きや場の状況がしっかりと把握できるようになります。


実際に遊んでみると、より奥深いゲーム性と洗練されたビジュアルで、前作の時点でかなり完成度の高いゲームとなっているように感じました。「工房展示カードの上にあるタイルをゲットする」「場の中央に寄せ集められたものを押しつけ合う」というルールやシステムの基盤となる部分は同じになっているものの、ゲームとしてはまるで別のものになっている印象。特に、ガラス職人コマによって置ける列に制限が加わることでゲームの戦略性がグンと上がり、前作よりも数手先を読み合う内容になっていました。

点数計算が前作に比べるとかなり複雑になっていることもあって、前作に比べてゲームの難易度はさらに高くなっていますが、ルールそのものは実際に1度遊ぶとすぐに理解できるため、初心者でも楽しめる内容となっています。ゲームに慣れていないうちはいきなり4人でプレイするよりも、まず2人~3人プレイでゆっくりプレイすれば、ルールの理解が進むのでおすすめです。


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in レビュー,   ゲーム, Posted by log1i_yk

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