サイエンス

睡眠が阻害されるとDNAのダメージが修復されずに死の危険さえあるとする研究結果

by Wouter van Doorn

眠りには健康上の多くのメリットが存在するといわれていますが、「生き物はなぜ眠るのか?」という謎は、いまだ解明されていない状態です。そんな中、新たな研究で、魚の脳細胞では日中にダメージを受けたDNAが蓄積され、その修復作業は睡眠中にしか行われないことが示されました。研究者は、生き物が眠りを必要とする理由の1つは、この「ダメージの修復」にあるのではないかとみています。

Sleep increases chromosome dynamics to enable reduction of accumulating DNA damage in single neurons | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-08806-w

Sleep helps to repair damaged DNA in neurons, scientists find | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2019/mar/05/sleep-helps-to-repair-damaged-dna-in-neurons-scientists-find

この研究は、イスラエルのバル=イラン大学で分子神経科学を研究するLior Appelbaum氏と、Appelbaum氏の生徒であるDavid Zada氏が発表したもの。2人の研究者は「神経系を持つ全ての有機体で眠りが発達したのであれば、眠りはおのおののニューロンのレベルに応じて機能するはずだ」と仮説を立てたことから研究をスタートしました。

仮説を検証するため、2人はゼブラフィッシュを遺伝子操作し、ニューロン中の染色体の動きを観察できるようにしました。特殊な顕微鏡を使って観察が行われたところ、ゼブラフィッシュの覚醒中や睡眠中に、ニューロンの中を染色体がどのように動き、DNAがどのくらいの頻度で壊れるのかが確認できたとのこと。

by Azul

研究者によると、ゼブラフィッシュが覚醒している最中には染色体はあまり動かず、有機体が生きていく上での正常な範囲で壊れたDNAの分子鎖はニューロンの中で蓄積されていきました。そして、ゼブラフィッシュの睡眠を阻害すると、ニューロンのいくつかはDNAにダメージを蓄積させ、それは死の危険があるほど深刻なものだったそうです。

しかし、ゼブラフィッシュが深い睡眠を取ると、起きている時の2倍の速度で染色体が動きだし、ニューロンに蓄積されたDNAのダメージは減少しました。なお、日中であってもタンクに睡眠薬を加えて魚を眠らせると同様のことが起こったことから、時間帯ではなく「眠り」そのものにDNAの修復効果があるとみられています。Appelbaum氏は、染色体が動いて形を変えることで、細胞に備わった修復メカニズムによって、異なる場所にあるDNAダメージが修復されると説明しています。魚が起きていると、ダメージの蓄積される速度に修復作業が追いつけませんが、眠っている間であれば修理メカニズムがしっかりと仕事をこなせるわけです。

Appelbaum氏はこの発見について「なぜ私たちは眠るのか?というカギの1つがここにあります」「オフラインの時間は、翌日のための片付けの時間を与えてくれます。そして、再び覚醒して忙しくする前のフレッシュなスタートを与えてくれるのです」と語っています。ニューロンは疲れている時に多くの損傷を蓄積するため、脳はダメージ修復のために眠りにつく必要があるとのこと。

by super-mapio

研究者は、ゼブラフィッシュに続いて、マウスでの実験を行う予定。魚と哺乳類では脳の活動が異なりますが、マウスの染色体の動きとDNAの修復がどのように行われるのかが確認される見込みとなっています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logq_fa

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