ハードウェア

「HoloLens 2」は何がどう進化したのかをMicrosoftパートナーの開発者が語る


ソフトウェア企業Readifyでシニアデベロッパーを務めるエンジニアのスティーブ・リー氏が、Microsoftの第2世代MRヘッドセット「HoloLens 2」について技術的な視点から評価をしています。初代のMRヘッドセット「HoloLens」からは、数値的な性能向上だけでは測れないほど進化しているようです。

How does the Hololens 2 matter? - Steve's Space
http://stevesspace.com/2019/02/how-does-hololens2-matter/

HoloLens 2がどんな端末なのかは、以下の記事を見ればよくわかります。

Microsoftが次世代MRヘッドセット「HoloLens 2」を発表、視野角2倍やアイトラッキングなど第1世代から大幅改良 - GIGAZINE


周りの人から「新型HoloLens 2ってどう?」とその評価を聞かれることが多かったというリー氏は、発表から2日間かけて端末の内容を精査してみたとのこと。リー氏が気になるHoloLens 2の技術的な項目は以下の通りです。

◆視野(FOV)
「初代HoloLensの開発者に資金を与えたらば、そのお金のほとんどを視野角の改善に費やすだろう」とリー氏が述べる通り、初代HoloLens(HoloLens 1)は視野角が狭いという弱点を抱えていました。具体的な数値でいうとHoloLens 1の視野角は水平30度、垂直17.5度でアスペクト比16:9の視野を持ちます。これに対してHoloLens 2は水平43度、垂直29度でアスペクト比3:2の視野を持ち、大幅に視野角が改善されています。

以下の図はHoloLens 1(赤色)、HoloLens 2(黄色)、ライバルである「Magic Leap」の視野(FOV)を図示して比較したもの。HoloLens 2はMagic Leapとほぼ同等の視野を持ちます。


ただし、「HoloLens 2はHoloLens 1の2倍の視野を持つ」とMicrosoftはアピールしていますが、対角線の長さでは1.5倍にとどまるため、視野の増大は割り引いて考えるべきだとリー氏は指摘しています。

「とはいえHoloLens 2の視野増大は確かな改良だ」と述べつつ、同時にリー氏は「視野が広くなることそのものが良いだけではない」と述べています。リー氏によるとHoloLens 1では拡張現実(AR)の世界の物体から85センチメートル以上の距離をとることを推奨していました。これは、85センチ以内ではホログラムが片方の視界の外に出てしまうためで、近い距離での使い勝手にHoloLens 1は課題を抱えていたとのこと。

これに対してHoloLens 2では近距離での物体認識に視野アップの効果が活かされており、同じサイズの球を見た場合、以下の図の通りHoloLens 2ではより全体を見通せるようになっています。このおかげで、HoloLens 2では手だけでなく指先を使ってMR世界の物体操作が可能になっており、FOVアップの恩恵はここにあるとリー氏は指摘しています。


◆ジェスチャー操作
HoloLens 1では「手を伸ばしてホログラムに触れたい」とリー氏は常に考えていたそうですが、視野の問題で不可能でした。視野が広がっただけでなく、手や指の動きを高精度で追跡できるようになったHoloLens 2ではホログラムに触れる(くらい近くで操作できる)ようになっており、「この高精度トラッキング機能こそHoloLens 2のキラー機能だ」とリー氏は考えています。

MWC19でMR世界のピアノを演奏する様子は、まさにHoloLens 2の高精度なジェスチャー操作を示すものです。

Microsoft at MWC19 Barcelona - YouTube


このようにMR世界で空中に浮かぶボタンやスライダーを直接手や指で操作できるUIは、利用者に操作方法を教える必要がないというレベルに達しており、これまでHoloLens 1が抱えていた「利用のための教育が必要」という問題を解消するだろうとリー氏は指摘しています。トレーニング不要でアプリを学べるということは重要だとリー氏は述べています。

◆パフォーマンス
HoloLens 1では1GHzのAtomプロセッサが採用されていましたが、リー氏によるとハードウェアの性能は悪かったとのこと。これに対してHoloLens 2ではQualcommのSnapdragon 850プラットフォームを採用することでCPUだけでなくGPU性能も飛躍的な進化を果たしているとリー氏は評価しています。例えるならば、「iPhone 5」から「iPhone Xのさらに20%アップ」くらいの性能向上が果たされているそうです。

大幅なハードウェア性能向上によって、FOVで2.4倍広い領域でも処理できるようになっており、特にGPU性能の向上はMRヘッドセットとしての劇的な性能アップを実現するとのこと。

◆オープンな開発環境
HoloLens 2の発表イベントで、開発者のアレックス・キップマン氏の背後にリー氏が率いるReadifyを含めてパートナー企業のロゴが表示されていました。

Oh hi there @readify logo ????

Recognition for some great work done, and being done, by our teams! ???? Great to be part of this journey with @HoloLens, and their HoloLens 2 launch this morning. pic.twitter.com/FI5Cd8IpHf

— Tatham Oddie (@tathamoddie)


リー氏によると、MicrosoftはHoloLensという端末を大きく飛躍させるために多くの開発パートナーと協力体制を築いており、より多くのパートナーを引き付けることでHoloLensはコンテンツをさらに飛躍させていくだろうと考えています。

◆課題
最後にリー氏はHoloLens 2ではGPS・コンパス・モバイル回線がサポートされなかったことを残念に感じていると述べています。これらの機能を盛り込んだHoloLensであれば、ユーザーは屋内を飛び出して、外の世界にMR空間を作り出すことができ、MRヘッドセットとしてのコンテンツの価値はますます高まることが予想されます。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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