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人気ホラーゲームが禁忌のプーさんネタに触れ中国ユーザーの怒りを買いSteamから削除される

by Charles Starrett

台湾のゲームデベロッパーであるRed Candle Gamesがリリースしたホラーゲーム「還願 Devotion」は、ゲームメディアのIGNから9.8という高評価を受けた人気ゲームで、リリースから数日でPCゲーム販売プラットフォームのSteam上には何千件もの高評価のレビューが集まっていました。しかし、ゲームの中に隠されていたとある要素のせいで、評価は一転、中国ユーザーからの怒りの声が集まり、ついにはSteam上から削除されるにまで至っています。

Chinese users review-bomb Steam horror hit Devotion over Xi Jinping Winnie the Pooh meme reference • Eurogamer.net
https://www.eurogamer.net/articles/2019-02-23-chinese-users-review-bomb-steam-horror-hit-devotion-over-xi-jinping-winnie-the-pooh-moron-meme


「還願 Devotion」は台湾のゲームデベロッパーであるRed Candle Gamesが2019年2月19日にリリースした、1980年代の台湾を舞台としたホラーゲーム。台湾発のゲームであるということで、中国では「国産の素晴らしいゲームが登場した!」と大きな話題となりました。以下のムービーは「還願 Devotion」のプレイムービーで、どんな雰囲気のホラーゲームに仕上がっているのかがよくわかります。

【還願】令人毛骨悚然 !! 台灣本土超恐怖遊戲 !! 阿嬤家模擬器...【上篇】Devotion #1 - YouTube


そんな「還願 Devotion」の中に隠されていたのは、中国の習近平国家主席を「くまのプーさんに似ている」とイジるイースターエッグでした。Spiel Timesによると、ゲーム内の壁に貼られた符には赤文字で「習近平プーさんのバカ」と書かれているそうです。


1980年代の台湾を舞台にした話題のゲーム『還願 Devotion』に隠しメッセージ「習近平プーさん」が見つかるhttps://t.co/K8WvqajkIr pic.twitter.com/DHFH526OLQ

— 敏度????️ (@Abalamindo)


中国では2017年からインターネット上でくまのプーさんに関する話題が厳しく取り締まられており、「習近平=くまのプーさん」というインターネット上では比較的広く知られるネタをいじったコメディアンが中国のインターネット上から完全に消去されてしまったり……

「習近平=くまのプーさん」ネタをいじったコメディアンが「存在していない」ことにされてしまう - GIGAZINE


そもそも実写版くまのプーさんである「プーと大人になった僕」が中国で上映禁止となったりしています。

くまのプーさん初の実写映画「プーと大人になった僕」が中国で上映禁止に - GIGAZINE


そんな中国のインターネット上でのタブーに触れてしまった「還願 Devotion」は、イースターエッグ発覚までの高評価がウソかのような低評価の嵐を中国ユーザーから受けることとなります。それでもSteam上の評価の40%が肯定的なコメントであることから、ゲームがいかに多くの人から高く評価されていたかがわかります。


これを受け、「還願 Devotion」の開発元であるRed Candle Gamesは正式に謝罪しており、Steam上で「プロトタイプを作るとき、チームはしばしば当時流行しているインターネットスラングを盛り込んでいました。バージョン同期の問題でこのスラングが正しく削除されなかったため、今回のようなケースが起きてしまいました。これは純粋な事故であり、我々には危害を加えたり憎しみを引き起こしたりする意図はありません。問題のオブジェクトは2月21日の夕方に修正されました。この事件はRed Candle Gamesのプロジェクト管理がうまく機能していないことを示しています。ゲーム会社としてRed Candle Gamesはまだまだ改善の余地があります。我々が引き起こしたことに対して、すべてのプレイヤーに誠意を込めて謝罪します。Red Candle Gamesは今回のアートマテリアル事件に対して全責任を負います」という声明を出しています。さらにその後、別の声明の中で「各自が開発に追われていたためスラングを見落としてしまった」と説明しています。

Devotion :: Art Material Statement


この謝罪に対してユーザーからはなんと6300件以上のコメントが寄せられており、そのほとんどが中国人ユーザーからの批判的なコメントであることがわかります。しかし、中には「中国人がイースターエッグを見つける前:この国産ゲームは素晴らしい!、中国人がイースターエッグを見つけた後:台湾のクソ野郎!」と、問題が発覚するまでは「素晴らしい国産ゲームが登場した!」と称賛していたものの、問題発覚後は「台湾産のクソゲーム」と批判する中国人の変わり身の早さを揶揄するようなコメントもありました。また、イースターエッグ発覚後に9000人ものユーザーからゲームの払い戻し請求が行われたことなども指摘されています。

ゲームフォーラムのResetEra上では、「この事件により中国政府は中国でSteamをブロックするための完璧な言い訳を得ることになるかもしれない。さらに悪いことに、SteamにRed Candles Gameのすべてのゲームを配信停止するよう強いることとなるかもしれない」と、今回の事件を通して中国がゲームへの規制を再び強める可能性を懸念するもあります。

また、「中国人コミュニティで『還願 Devotion』は爆発的な人気を得て、ほとんどの配信者が同ゲームをプレイし、何百万人もの人々がゲームのプレイを見ました。ゲームは世界中のメディアからも賞賛を集め、中国のソーシャルネットワーク上で話題のトピックにもなりました。当初は多くのユーザーが肯定的なフィードバックを行っていました。しかし、ゲームフォーラムなどで習近平国家主席とプーさんに関するスクリーンショットが出回るようになると、『ゲームは中国人および中国国民党の支持者を嘲笑することに成功した』と、より多くの人々の注目を集めることとなりました。さらに、Red Candle Gamesの創設者のソーシャルメディアアカウントが見つかると、より中国人ユーザーたちの怒りが爆発することとなります。なぜなら、Red Candle Gamesの創設者は台湾独立を支持する政治的見解を持っており、かなりの数の政治的投稿を行っていたからです」とも指摘されています。


この事態を受けて、Red Candle GamesはパブリッシャーのIndieventおよび資金を投資してくれたWinking Entertainmentとの契約を打ち切られることとなります。前述の通り損失はすべてRed Candle Gamesが負担すると述べており、前作の「返校 -Detention-」でパブリッシングを担当した中国のパブリッシャーCoconut Island Gamesとの契約を打ち切られた模様。

なお、2018年3月1日にNintendo Switch版も配信された「返校 -Detention-」は、「還願 Devotion」のあおりを受けてSteamの販売ページ上には批判コメントが殺到しています。

Nintendo Switch|ダウンロード購入|返校 -Detention-


しかし、最終的に「還願 Devotion」はSteam上から削除されてしまいました。

Popular Horror Game Removed From Steam After Chinese Players Say It Insults China
https://kotaku.com/popular-horror-game-removed-from-steam-after-chinese-pl-1832881001


現地時間で2019年2月25日の午後にSteam上の「還願 Devotion」ページが削除され、中国以外の地域からもゲームを購入することができなくなりました。Red Candle GamesのYouTubeチャンネル上からは「還願 Devotion」関連のムービーも削除されています。海外ゲームメディアのKotakuはSteamの運営元であるValveとRed Candle Gamesの両方に説明を求めたそうですが、記事作成時点では返答はありません。

なお、Steamのコミュニティ上では予想外のクラッシュを引き起こすバグが発見されたため、「還願 Devotion」を一時的にSteam上から削除したという開発者からのコメントが掲載されています。

About the Store Page :: Devotion 総合掲示板

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in 動画,   ゲーム, Posted by logu_ii

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