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過去全く予想しなかった方向に世界が進んでいることを示す「9つの驚くべきこと」をビル・ゲイツが発表


「現実世界はかつて私たちが想像した世界とは違うものになっている」と語るMicrosoftの創業者であるビル・ゲイツ氏と妻のメリンダ・ゲイツ氏が、かつての予想を裏切り、あるいは予想しなかった方向に世界がどう変化したのかを、「9つの驚くべきこと」として発表しています。9つのリストの中には人々を心配させるものもあれば勇気づけるものもありますが、「いずれも世界をよりよくするために人々がアクションを開始する励みになる」とゲイツ氏は主張しています。

We didn’t see this coming | Bill Gates
https://www.gatesnotes.com/2019-Annual-Letter

◆1:アフリカは世界で最も若い大陸となっている
ゲイツ夫妻が最初に触れたのは、アフリカに住む人々の年齢中央値が世界で最も若いという点。地球上では高齢化が進んでおり、北アメリカでは年齢の中央値が35歳ですが、アフリカではなんと18歳です。貧しいサハラ以南の国々で誕生する子どもの数が多いという事実は、人々の生活を不安定にする原因にもなり得ますが、ゲイツ夫妻は若いアフリカ人がこれから先の世界を形作っていくだろうと考えています。

メリンダ・ゲイツ氏はサハラ以南のアフリカが人的資本の健康と教育に大きな投資を行った場合、世界の労働人口シェアにおけるサハラ以南の占める割合は2050年までに倍増し、何億人もの人々がよりよい生活を送れるようになると主張。また、少女に対して教育を行う重要性についてもメリンダ氏は言及しており、女性がよりよい教育を受けることができれば、乳児死亡率の減少や所得の増大につながると述べました。

by Git Stephen Gitau

◆2:民間のDNA鑑定の発達により犯罪捜査や早産を防ぐ支援が可能になった
ビル・ゲイツ氏は数十年にわたり未解決だった連続殺人事件の犯人を、民間のDNA解析サービスをもとに逮捕された件に触れた上で、民間の遺伝子検査サービス「23andMe」のデータを解析した結果、子どもの早産を防ぐことができるかもしれない科学的発見がされたことに言及。23andMeの4万を越える遺伝子サンプルを分析した研究者は、子どもを早産しやすい傾向にある女性がセレンと呼ばれる栄養素を体内で適切に処理できない遺伝子を持っているというリンクを突き止めたとのこと。

早産は多くの人々に影響するものであるにも関わらず、人々の早産に対する関心は驚くほど薄いとメリンダ・ゲイツ氏は指摘。早産の原因はわかっていないことが多い一方で、未熟児のまま産まれることは時に乳児の死亡につながるだけでなく、早産の子どもは正常に生まれた子どもよりも裕福でない傾向があり、早産について人々が関心を持って取り組む必要があると述べています。

by Daniel Reche

◆3:世界の人々は毎月ニューヨーク市全体に匹敵する建物を建設し続ける
人々は地球温暖化問題について考える時、発電時に放出される温室効果ガスに目を向けがちです。しかし、実は発電が世界の温室効果ガスの排出量に占める割合はせいぜい25%程度であり、残りの24%は農業、21%が工業生産、14%が輸送、6%が建設によって排出されるとビル・ゲイツ氏は述べています。世界の都市人口は今後数十年間にわたって増え続け、世界の建造物は2060年までに2倍になると予想されており、世界全体では毎月新たにニューヨーク市を建設するほどの建造物が増えているそうです。

地球温暖化が深刻化しているとはいえ、交通機関を止めたり製造を停止したり、発電を停止したりすることは現実的ではありません。また、十分に豊かでない発展途上国に対して一方的に「地球温暖化対策のために温室効果ガスの排出量を減らしてくれ」と要求するのも不公平となります。そのため、ビル・ゲイツ氏は地球温暖化対策のためには「イノベーション」が必要だと考えており、環境対策に関する投資に力を入れています。

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◆4:「研究に使用するデータ」に性差別が含まれているかもしれない
ビル・ゲイツ氏は日々多くのデータを検討していますが、その中で女性や少女に関するデータが少ない点に驚かされるとのこと。人口から見れば女性も男性も半々の割合になりますが、何かしらの理由から女性に関する研究データが乏しいそうです。

メリンダ・ゲイツ氏はこの問題について、「発展途上国の女性が昨年どれほどの収入を得たのか、どれほどの財産を所有しているのか、家庭において娘がどれほどの時間を家事に費やしているのか」といったデータが非常に少ないと指摘。またデータ収集のための質問自体にバイアスがかかっている可能性があり、データそのものが性差別的になっているとメリンダ氏は主張しています。

by Zun Zun

◆5:10代の少年から怒りの対処について学ぶことができる
貧困と犯罪および投獄についての関連について興味を抱いていたゲイツ夫妻は、あるときジョージア州の刑務所で受刑者と面会し、話す機会を得たとのこと。そこで話した犯罪者の中には人に危害を加える類の犯罪を犯した人もいたそうですが、実際に話してみると楽しくて親しみやすく、「凶悪な犯罪を犯した人間に対する先入観」が覆されたとのこと。

犯罪が許されないことであるのは間違いありませんが、犯罪者の中には周囲の環境や教育、偶然などが重なって犯罪を犯してしまった人もいます。ゲイツ夫妻はBecoming a Man(BAM)といったプログラムによって若者が自身の感情について考え、意志決定スキルについて学ぶことが犯罪者の矯正に役立つと考えており、若者の情緒についての投資が必要だと述べました。

by Muhammad Rifki Adiyanto

◆6:グローバリズムのためにナショナリズムが役立つこともある
国家などの共同体を民族的な単位で一致させようとするナショナリズムは、21世紀に入ってから頻繁に耳にするようになりました。そんなナショナリズムは、地球を一つの共同体と見なすグローバリズムと対立する思考のようにも見えますが、時にナショナリズムとグローバリズムの利害が一致することもあるとメリンダ・ゲイツ氏は述べています。

たとえば、アメリカのような先進国が対外援助を行う場合、それはアメリカ国民の国外における安全を強化することにつながります。エボラなどの伝染病がアフリカで発生した場合、すぐに援助を行って被害の拡大を抑えることはグローバリズムだけでなく、ナショナリズムにとっても「アメリカへの被害拡大を防ぐ」という意味で重要となります。HIVのワクチンを発展途上国の人々に接種させることも、HIVの世界的な流行を防ぎ、結果的に自国の利益となるという視点はナショナリズムにとっても忘れてはいけないものです。

by rawpixel.com

◆7:トイレは長年にわたって変化していない
ビル・ゲイツ氏はトイレについて大きな関心を抱いており、公衆衛生は人類が取り組むべき最も重要な課題であると考えています。水洗トイレの導入は多くの発展途上国や水不足の国々にとって困難な目標ですが、排せつ物で汚染された水によって病気にかかった多くの子どもが毎年亡くなっています。ビル・ゲイツ氏は安価であったり排せつ物を肥料にしたりするトイレが、将来的に何百万もの人々を救う可能性について触れています。

ビル・ゲイツが「なぜ世界はより良いトイレを求めているのか」を語る - GIGAZINE


また、メリンダ・ゲイツ氏はトイレの環境が整っていない場所は女性にとって大きな不利益となると指摘。公衆トイレがあっても治安がよくなければトイレの中に入るのは危険であり、トイレを我慢しすぎた結果、腎臓に障害を負ってしまった女性とメリンダ氏は面会したことがあるとのこと。トイレについて真剣に考える人は少ないかもしれませんが、人々の生活の質を向上させるためには、きれいなトイレを用意することが必要不可欠です。

by Hafidz Alifuddin

◆8:紙の教科書は時代遅れになりつつある
ビル・ゲイツ氏は、「教科書は非常に制限された学習方法です」と主張し、最良のテキストであってもユーザーが説明されている概念をどれほど理解できているのか、どのような助けがいるのかといった点を考慮していないとしています。しかし、ハードウェアとソフトウェアの発達によって、ユーザーが学習単元について理解を深めやすくするビデオを見せたり、簡単な問題を出して理解度を調査したりといった段階にまで近年の学習方法は進化しています。今後はさらに多くのフィードバックが集まり、電子学習教材はこれまで以上に便利で優秀なものになるとビル・ゲイツ氏は述べました。

メリンダ・ゲイツ氏は2019年の時点で大学生の半分近くが25歳以上であり、そのうち半分が職業を持ちながら大学のカリキュラムを学んでいると述べています。中には子どもがいる学習者もいるため、教育方法は従来よりも柔軟で効率的なものに変わる必要があるとして、デジタル教材は学習者たちへの大きなメリットをもたらすとしています。

by rawpixel.com

◆9:携帯電話は貧しい女性にとって大きな力となる
先進国の人々にとっては、携帯電話やスマートフォンは「手紙や固定電話など、これまでの暮らしにあったアイテムをより便利にするもの」というイメージがあります。しかし、これまで多くの権利を持たなかった女性にとっては、携帯電話は完全に新しい生活を送るための強力な支援ツールになるとメリンダ・ゲイツ氏は主張。モバイルバンキングは女性の経済的自立の機会をもたらし、電子商取引は女性が人に知られずに避妊薬などを購入できるようにするなど、男女の不平等を改善するものになるとのこと。

一方で、女性は男性よりもインターネットを利用していないという研究結果もあり、この男女間のギャップは読み書き能力や社会規範といった理由が原因だとメリンダ・ゲイツ氏は述べています。女性がしっかりとした教育を受け、最新のテクノロジーを手にすることが、ジェンダーの格差をなくす重要な基礎となり得るとのことです。

by rawpixel.com

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in メモ, Posted by log1h_ik

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