ハードウェア

Intelが1秒間に2京回の演算処理性能を誇る世界最大規模のニューロモーフィックシステム「Hala Point」を構築


人間の神経や脳のシステムに倣って電子回路を構築する試みがニューロモーフィックコンピューティングです。Intelが、ニューロモーフィックプロセッサ「Loihi 2」を搭載した大規模ニューロモーフィックシステム「Hala Point」を構築したと発表しました。

インテル 世界最大規模のニューロモーフィック・システムを構築して サステナビリティーの高いAIを実現
https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/newsroom/news/intel-builds-world-largest-neuromorphic-system.html


Intel and Sandia National Labs Roll Out 1.15B Neuron “Hala Point” Neuromorphic Research System
https://www.anandtech.com/show/21355/intel-and-sandia-national-laboratories-roll-out-hala-point-neuromorphic-research-system

「Hala Point」はサンディア国立研究所に導入予定のニューロモーフィック・システムで、Intelの第1世代大規模研究システム「Pohoiki Springs」からニューロン数が10倍以上、パフォーマンスは最大12倍に進化しているそうです。Hala Pointは1秒間に2京回、すなわち20Peta-opsの演算処理性能を特長としており、従来のディープニューラルネットワークを実行した場合、ワット当たり1秒間に15兆回の8ビット演算を超えるパフォーマンスを示すとのこと。


Hala Pointは処理、メモリー、通信チャネルを1つの超並列化ファブリックに統合し、システム全体でメモリー帯域幅は毎秒16ペタバイト(PB/s)、コア間の通信帯域幅は3.5PB/s、チップ間の通信帯域幅は5TB/sに達しています。8ビットのシナプス演算は1秒間に380兆回以上、ニューロン演算は1秒間に240兆回以上処理することが可能です。


Intelによると、Hala Pointは生物学にヒントを得たスパイキング・ニューラル・ネットワーク(SNN)モデルを適用することで、フル容量の11億5,000万ニューロンを人間の脳の20倍高速に、より低容量の際には最大200倍高速に実行することが可能だとのこと。Hala Pointは、神経科学モデリング用ではありませんが、そのニューロン容量はフクロウの脳やオマキザルの皮質とほぼ同等だそうです。

このHala Pointには、2021年にIntelが発表したニューロモーフィックチップの「Loihi 2」が搭載されています。Loihi2チップはIntel 4プロセスで製造されており、チップ当たりの面積はわずか31mm2で、チップ当たりのトランジスタ数はおよそ23億で、チップ当たりで100万個のニューロンをシミュレート可能です。

Intelが第2世代ニューロモーフィックチップ「Loihi 2」を発表、試作段階の「Intel 4」プロセスノードを採用 - GIGAZINE


Loihi 2を1152基搭載することで、Hala Pointは従来のCPUやGPUのアーキテクチャーと比べて消費電力を100分の1に抑えながら、約50倍の高速スピードでAI推論を実行し、最適化の問題を解決できます。記事作成時点でHala Pointはあくまでも研究用のプロトタイプだそうですが、将来的には商用システムへの適用も見込んで機能拡張を行っていく予定だそうで、Intelは「これらのプロトタイピングを経て、新しいデータから継続学習を行うLLM(大規模言語モデル)など、実用的なブレイクスルーにつながっていくと期待しています」と述べました。


サンディア国立研究所のHala Pointチームリーダーであるクレッグ・ビネヤード氏は「Hala Pointを連動させることで、サンディア研究チームには科学モデリングの問題を解決する貴重な能力が手に入りました。この規模のシステムで研究を行えば、AIの進歩と同じペースで、演算処理、モデリング、シミュレーション、データ分析を実行できます」とコメントしています。


Intelは「サンディア国立研究所でのHala Pointの採用は、新しい大規模ニューロモーフィック研究システムの最初の導入となり、Intelは今後このシステムを研究コラボレーターと共有していく予定です。さらなる開発を続け、現実世界におけるAI機能のリアルタイムの導入を妨げている電力効率とレイテンシーの制約を、ニューロモーフィック・コンピューティングのアプリケーションによって解消できると期待されています」とコメントしています。

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in ハードウェア, Posted by log1i_yk

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