サイエンス

現代人は未来の人々に「チキン人」と呼ばれるようになるかもしれない

by Brianna Santellan

遠い過去の文化を指す際、「縄目文土器文化」のように当時はやった陶器だったり道具だったりが使われることがあります。これと同じように遠い未来の人々が現代人を大まかに分類していった場合、現代人は「Chicken People(チキン人)」と呼ばれるようになる可能性があると科学系ニュースサイトのLive Scienceが記しています。

Future Humans May Call Us the 'Chicken People,' and Here's Why
https://www.livescience.com/64280-chickens-taking-over-world.html


現代、人間たちに飼育されているニワトリの総重量は、すべての野鳥を合わせた重量を超えています。それほど大量に飼育されているニワトリは、未来の学者たちが「人間がここで暮らしていたこと」を証明するための証拠として使われることになる可能性があるそうです。2018年12月にオープンアクセス科学誌のRoyal Society Open Scienceで公開された最新の研究によると、ニワトリの骨の化石は新しい地質時代区分である「人新世(アントロポセン)」を確かめるための重要な証拠となる可能性があるとのことです。

研究結果を公表した地質学者のキャリーズ・ベネット氏たち研究チームは、未来の学者たちが地質時代の「アントロポセン」を確認するためのマーカーとなるものを見つけるための研究を行っています。諸説あるものの、アントロポセンは「地球環境における主要な推進力として人間が登場した時代」を始まりとする新しい地質時代区分で、農業や産業革命を通じて地球規模の環境変化が生じた時代と定義されています。

by Jorge Sá Pinheiro

ベネット氏がLive Scienceに語った内容によると、地層時代を識別するための重要な要素のひとつが「示準化石」です。示準化石は標準化石とも呼ばれるもので、「現生していないもの」であり「短い年代によって形態に変化が生じたもの」、さらに「分布領域が広く、かつ多数発見されるもの」という条件があります。

現代のニワトリはまさにアントロポセンの示準化石にふさわしい条件を満たしています。「分布領域が広く、かつ多数発見されるもの」という条件は地球上で飼育されているニワトリの数からも明らかで、その数は約214億匹といわれています。214億匹という数は、地球上に生息する他の野鳥の総数をはるかに超えており、ニワトリの総重量(もしくは生物量)は50億kgにものぼると試算されています。そして、ニワトリは世界中で見つけることができる生物であり、2014年には1年間で推定で620億匹も消費されました。


さらに、ベネット氏は「未来の考古学者が現代のニワトリの化石を見つけたとすれば、このニワトリが自然に生まれたものではないことにすぐに気づくだろう」と語っています。現代のニワトリの骨が大きく変化していることは、ロンドンで見つかった動物の骨のデータベースからニワトリの足の骨を分析したことで確認されています。データベースに保管されているニワトリの骨の中で最も古いものは西暦43年にはじまったローマ時代のもので、当時のニワトリは野性のセキショクヤケイと同じくらい小さかったそうです。1340年頃になると人間の手で飼い慣らされたニワトリが登場するようになり、サイズは大きく、より重く進化。これは当時の選択的育種の成果であると考えられます。

その後、1950年頃になるとニワトリの骨の寸法はさらに大きく変わり始めます。現代のブロイラー用の若鶏の足の骨は、大昔はほぼ同等のサイズだったセキショクヤケイの約3倍の幅と2倍の長さにまで進化しています。このことから、現代のニワトリの鶏肉の量は1957年当時の同種のニワトリと比べても4~5倍にもなると推測されており、これは「驚くべきこと」とベネット氏は語りました。

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現代のニワトリがこれほどまでに大きく進化したのは偶然によるものではありません。より大きく、より速く成長するニワトリを畜産家たちが求め、試行錯誤を繰り返した結果であることは明らか。その代償として、現代のニワトリの骨は野性の鳥よりも多孔質でもろくなっており、ブロイラーのニワトリは通常生後7週までに屠殺されてしまいますが、それ以上生き残れる機会があっても、うまく成長することができないそうです。

また、「未来の学者たちは骨を構成する分子の中からニワトリが穀物ベースの食事をしていたことを検出することができるでしょう」とベネット氏は語っています。加えて、「もしも未来の学者たちがニワトリの骨の化石からDNA配列を決定できるようになっている場合、飼い慣らされたニワトリから、季節的ではなく一年中交配することを可能にする突然変異のような、いくつかの遺伝子の変化を見つけることができるでしょう」とも述べました。

世界中の科学者グループで構成されている国際層序委員会は、地球の歴史を理解するために使用する地層時代を定義する機関です。アントロポセンはまだ正式に採用されているわけではなく、ベネット氏によると採用されるまでにはまだまだ何年もの時間がかかるとのこと。それでもベネット氏は、「溶岩と溶融プラスチックの混合物」や「有鉛ガソリンの堆積物としてできた鉛」などと一緒に、ニワトリの骨もアントロポセンの示準化石になる可能性があると考えているそうです。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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