取材

ホームは地下のトンネル内、日本一のモグラ駅こと群馬県の土合駅で降りてみた


「未開の地」「グンマー」とネタにされる群馬県の地下深くに造られたコンクリートの空間。しかも、そこが50年も前に造られたとなれば感動もひとしお。半世紀も前の偉業でした。地下のホームから地上の駅舎まで約10分、合計486段の階段を上らないといけません。そんな世にも奇妙な電車の駅が、群馬県と新潟県の県境にありました。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。これは、福島県浪江町福島県富岡町鋸山で使った青春18きっぷの残りで新潟県まで北上してきたときの記録です。自転車の距離感覚が染み付いている身からすると、1日でかなり遠くまで移動できる電車の旅は新鮮。たとえ、それが鈍行だとしてもです。道中で「日本一のモグラ駅」を見学してきました。

◆きっかけ
今回のショートトリップの目的は長野県で松本城を見ることでした。自転車で日本一周していた頃、お城巡りをやっていました。その中でも松本城は大天守、小天守、櫓(やぐら)が揃っていてバランスが取れてスタイルも良くて見とれてしまうほどの名城で、国宝四城(2015年から五城)の1つ。東京で働いているうちに、再訪しておきたい場所でした。

東京西部のアパートから八王子まで出て、山梨県の甲府市、長野県の松本市というルートが簡単でした。しかし、同じルートを往復してもあまり面白くありません。では、どうするかと地図を眺めていたら、八王子から群馬県の高崎市まで北上して新潟県長岡市、長野県長野市経由で松本市というルートが浮かびました。

◆土合駅とは
冬の東京は風は強いですが、天気は良くて晴れの日が多くなります。その理由は大陸からの寒気が日本海で湿気を含んで日本の背骨とも言われる山脈にぶつかり雪となるため。雪を降らすような雲は、関東平野にたどり着く前にその役目を果たすことが多いのです。だから、新潟は豪雪地帯。

新潟と群馬の間にも白砂山、谷川岳、巻機山といった2000m近い山々を擁する山脈があります。こうした山脈もあって群馬と新潟を結ぶ道路は限られます。網の目のような道路が続く平地の県境のようにはいきません。群馬と新潟の県境の場合、三国峠と清水峠という2つのルートが古くから一般的でした。そして今なおほぼ変わっていません。


現在、群馬と新潟を結ぶ国道は17号、291号、353号、405号の4つがありますが、全線開通しているのは17号のみでそれ以外は不通。国道17号は三国峠のルートと重なります。それとは別に高速道路の関越自動車道とJRの新幹線、在来線が群馬と新潟を結んでいます。こちらは概ね清水峠と重なります。土合駅はこうした交通の難所に設けられた駅となります。

1931年9月、清水トンネルが完成したことにより、群馬県高崎市の高崎駅と新潟家長岡市の宮内駅を結ぶ上越線が全面開通。全長9702mの清水トンネルは当時日本最長となるトンネルでした。しばらくは単線での運行でしたが、1967年の新清水トンネル開通によって複線化。全長13490mの新清水トンネルの中に土合駅のホームが造られました。上りの地上ホームと下りの地下ホームが分離され今にいたります。

土合駅のある場所はここ。


◆下りの地下ホーム
群馬県の高崎市から新潟方面へ向かっていたので、下り列車での到達でした。いつの間にかトンネルに入って土合駅の地下ホームに到着。この地下ホームでの乗り降りは少し注意が必要でした。降りないけれど写真を撮るために電車から出てくる人がいるので、わずかな停車時間にホームが少し慌ただしくなります。珍しい駅なので写真を撮りたい気持ちはわかりますが、乗り降りされる方を優先させて欲しいものです。土曜日のお昼前でしたが、20人前後のお客さんが降りたと思います。やはり観光地としても有名な場所でした。降りてすぐに身震い。ちょっと寒かったので上着を羽織ります。じめじめした空気にほんのりと鼻につくかびの匂い。地下ホームを歩いて回りました。

トンネルの中にあるホーム。


「土合駅」と書かれた駅名標。


ホームにはプレハブ小屋のような待合室がありました。夏場ですらひんやりするんですから、冬場はもっと冷え込みそうで、防寒のためにも必要な場所のように見えました。


待合室内。


想い出ノートなるものを発見。「電車に乗り遅れて4時間待ち」という書き込みにはゾッとしました。


トイレも完備。


電話と書かれた緑の箱。


◆462段の階段
地下ホームの見学を終えて、地上にある駅舎へと向かいます。

出口の案内にそってトンネルを進むと……


どこまで延々と続いていきそうな階段がありました。こんなの、ハンター試験にあったような。


モグラのイラストがある案内板。階段は338メートル、462段あります。下りホームの標高は海抜583メートル、駅舎の標高は653.7メートル、標高差70.7メートル。地下のホームから地上の駅舎まで所要時間10分が目安でした。


階段隣のスペースはエレベーター設置の予定があったそうです。


地上へ向けて階段を上っていきます。

壁には普通のトンネルのような出口までの距離表示。


ところどころにベンチが置いてありました。上り疲れたら腰を下ろしてゆっくりできます。


10段ごとに段数の表示あり。


階段は5段ごとに踊り場があるので、それほどまでの急登とはなりません。


映像で見るとこんな感じ。

日本一のモグラ駅こと群馬県の土合駅地下ホームの階段を上っていく - YouTube


この長い長い階段は462段目が終点。


462段目にあった「1967-9」という表記は、下りの地下ホームが運用開始された年月でした。


462段目で振り返る階段。別世界へと繋がっていそうな雰囲気。


終点より先は川を渡る橋のような通路でした。奥にある三角の衝立は、吹き込む風を分散させる役目を果たしています。


曇ったガラスの向こう側には……


緑の木々と清流という自然美。


「お疲れさまでした。」と書かれた扉。あと143メートル、階段2ヶ所で24段残っているようです。


レゴブロックで作ったようなコンクリート壁の通路を歩いていきます。


短い階段を1つ上って。


そして、ここが最後の階段。486段目でフィニッシュでした。もうこれ以上、階段はありません。


この角を曲がると改札口に到着。


◆土合駅の構内
無人駅とは思えないような大きな駅舎でした。構内も広くて改札、窓口前のベンチとは別に待合室まであります。上越新幹線や関越自動車道の影響によって、1985年に無人駅化したとあるので、それまでは賑わっていた駅なのかもしれません。

改札口。


時刻表はスカスカですので、電車で訪問される方は計画的に。


「中高年遭難多発」という注意書き。土合駅は百名山で有名な谷川岳に登る起点だったりします。


登山届を入れる箱。


駅舎にも想い出ノートが置いてあります。


無人駅ですが自動販売機は稼働していました。2018年という今を実感できる唯一のアイテム。


構内には土合八景という駅のトリビアが掲示されていました。


「この鉄の棒は…?」という問いに「謎」という回答。秘境駅過ぎます。


こちらがその謎でしかない鉄棒。


建物も構内も年季が入っています。古くても手入れが行き届いていたら問題ありません。でも、このときの構内は埃っぽくて虫の死骸が散らばって衛生的に心配でした。あまりに山奥過ぎて、そこに明かりが灯れば虫が群がってしまうからでしょう。

夜間に虫や蝶が入ってくるのでドアを閉めてくださいというお願い。


駅舎の周りは緑の山ばかり。ゆえに怪獣モスラみたいな手のひらサイズの蛾が止まっていたりします


◆上りの地上ホーム
高崎、大宮、上野方面の上りは地上にホームがあります。こちらも見学しました。

地下が1番ホーム、地上が2番ホームです。


改札を抜けた先にあるホームへと向かう通路。


さらに、反対ホームと同じようなコンクリート壁の通路を抜けると……


ひっそりとした山あいにポツンと造られた駅のホームがありました。山々の谷間に沿って線路が敷かれている様子。


待合室もあります。


駅名標には海抜665mと書いてありました。


少し離れた場所から見ることができる上りホーム全景。


新潟方面への線路も、また山奥に消えていくようでした。


◆土合駅の駅舎
住所は群馬県利根郡みなかみ町湯檜曽(ゆびそ)218-2、群馬県最北の駅になります。駅前の道は国道なのですが新潟方面とは繋がっていません。だから、交通量もそんなにありませんでした。人里離れた山奥といった表現がぴったりの場所でした。

何もない駅前。しかも未舗装。


特徴的な三角の屋根を持った駅舎。


入口頭上には「ようこそ日本一のモグラえきへ」という表示。「モ」の字の中にはモグラが隠れています。


駅舎周辺は深い緑に覆われた山々が連なっていました。


駅舎のすぐ近くにあったよくわからない廃屋。


駅前の道路は国道291号線となります。しかし、これより先の新潟方面は不通となっているので行き止まり。


道路脇にはバス待合所もありました。雪対策もあるのかしっかりしとした造り。そこまで古さを感じない外観ですが、内部の壁にある旅人の落書きは昭和の終わりや、平成の初めだったりしてタイムカプセルのようになっていました。


◆新潟県へ
十分に散策したので土合駅を後にします。

新潟方面という矢印。


下りと上りを間違えると一大事ですのでご注意を。


電車がやってきました。


2両編成の電車。


きちんと電車に乗って、そのまま新潟県長岡市まで進みました。

ちなみに、以前Twitterで見かけて記憶に残っていたツイートはコレです。


光が差すことのない地下空間に神殿、要塞、核シェルター、黄泉の国、異世界といった想像力を膨らますことができる土合駅の地下ホーム。しかも、完成は1967年と50年以上前ですから、当時の方々の偉業に込み上げてくるものがありました。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
Facebookページ https://www.facebook.com/chariderman/
Instagram https://www.instagram.com/shuto.takuya/
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)

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in 取材,   乗り物,   動画, Posted by logc_nt

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