サイエンス

観客が分泌する化学物質を測定することで映画のレーティングが可能になるかもしれない

by Krists Luhaers

映画の鑑賞には、年齢による鑑賞制限(レーティング)が設けられていることがあります。レーティングは映画の内容に応じて各国の審査団体によって行われますが、その判断に対しては主観的になりがちだという指摘も存在します。ドイツのマックス・プランク化学研究所が、映画を見ている人から放出される化学物質を分析することで、客観的なレーティングを行おうとする研究に取り組んでいます。

Proof of concept study: Testing human volatile organic compounds as tools for age classification of films
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0203044


A chemical criterion for rating movies | Max-Planck-Gesellschaft
https://www.mpg.de/12363501/a-chemical-criterion-for-rating-movies


映画の中に含まれる暴力的、あるいは性的な内容が不必要に子どもの目に触れないように、映画上映の際にはさまざまな国で独自のレーティングが設けられます。しかし、何十年も前には衝撃的だと評された映画が、現代では特に問題がないと判断されるなど、時代と共に移り変わる評価基準は審査団体の主観によるもので、客観的なものではありません。


人間は、息や肌を通して多くの揮発性有機化合物(VOC)を放出していて、その種類や割合は感情などさまざまな要因によって影響されるということが、これまでの研究で判明しています。マックス・プランク化学研究所のジョナサン・ウィリアムズ氏率いる研究チームは、上映中の劇場内で空気中のVOCを測定することによって、客観的なレーティングが行えるのではないかと推測。

そこで、研究チームは映画の年齢制限を客観的に評価する方法を開発するために、映画館の換気システムに質量分析計を接続して30秒ごとに測定。劇場内の空気に含まれる化学物質の組成をppt(1兆分の1)レベルで監視し、60種類のVOCの濃度を計測しました。

調査対象となった上映作品は以下の画像の通り。ドイツのレーティングはFSK 0(全年齢可)、FSK 6(6歳未満禁止)、FSK 12(12歳未満禁止)、FSK 16(16歳未満禁止)の4段階に分けられます。映画タイトルの横に描かれた数字は調査された上映数。


そして、実験から得られたデータから、研究チームは「イソプレン」という物質に注目。イソプレンは新陳代謝によって生成され、筋肉に貯蔵されるVOCで、人が体を動かすたびに息や皮膚から放出されます。

以下の画像は、実際にFSK 0の映画を見たときに劇場内のイソプレン濃度が上がっていく様子を表しています。黒い折れ線が30秒毎に計測したイソプレン濃度をppm(10億分の1)で表したもので、赤い直線がイソプレン濃度の上昇を示す回帰直線です。


ただし、研究チームによると、調査対象とした映画の種類と上映回数が十分な量ではなかったため、今回の実験データだけではVOCを用いた客観的なレーティングが可能かどうかを判断するのは難しいとのこと。また、上映中に映画の内容に対応した感情がイソプレン濃度に表れるまでのタイムラグは大きいため、映画館での測定では結論を出すのは困難だと結論づけています。

それでも、ウィリアムズ氏は「今回の実験データから、イソプレン濃度をストレスや緊張の指標として利用できるということが立証できました」とコメント。さらに「次の狙いは、他のVOCが他の感情状態の化学的指紋として役立つかどうかを判断することです。普通の映画館ではなく、厳密に制御された密閉空間で実験すれば、もっと多くのことが分かるかもしれません」と述べています。

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in サイエンス,   映画, Posted by log1i_yk