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中国はGPSに依存しない独自の衛星測位システム「BeiDou」の運用を世界規模に拡大しようと計画している


中国が独自に開発を行っている衛星測位システムが「BeiDou(北斗衛星導航系統、BeiDou Navigation Satellite System)」です。中国はアメリカの衛星測位システムである全地球測位システム(GPS)に対抗して、BeiDouを2020年までに世界規模に展開することを目標にしていると報じられています。

China's Beidou system helps livestock water supply in remote pastoral areas - Xinhua | English.news.cn
http://www.xinhuanet.com/english/2018-06/17/c_137260299.htm


How China's GPS 'rival' Beidou is plotting to go global - BBC News
https://www.bbc.com/news/technology-45471959


内モンゴル自治区東部に広がるクブチ砂漠では、BeiDouを用いた牧畜用遠隔給水システムが試験運用されています。

クブチ砂漠で牧畜を営むDalintai氏によると、これまでは「バイクに乗って羊や牛に水をやって回る」という作業を夏は毎日、冬は2日に1回行わなければならなかったとのこと。しかし、遠隔給水システムを利用することで、羊や牛の位置を把握しつつ遠隔地の給水システムを自動で作動させることが可能になったそう。

You have a new message from your thirsty cattle! China's BeiDou Navigation Satellite System helps livestock water supply in remote pastoral areas https://t.co/VXkRM8KIwu pic.twitter.com/I7MvkdelAs

— China Xinhua News (@XHNews)


BeiDouの研究開発を担当するChulu氏によると、試験中の遠隔給水システムでは、BeiDouを通じて送信されたメッセージを受け取ることで家畜に水が供給されるようになっているとのこと。


この遠隔給水システムの導入にはおよそ8000元(約13万円)かかるとのことですが、Chulu氏は「このシステムを使うことで多くの時間と燃料費を削減できます」と主張しています。さらにChulu氏は「海や砂漠などの通信ネットワークが利用できない状況でも自分の位置を知ることが可能です。将来的には、試験している地区以外でもこのシステムが運用されることに期待しています」と述べています。

BeiDouの開発は、アメリカのGPSに依存しない「中国独自の測位システム」として、1994年にスタートしました。2000年から2007年にかけて、第一世代の通信衛星「Beidou-1」が4基打ち上げられて、中国でシステムの運用が開始。2012年末には第二世代となる「Beidou-2」が打ち上げられ、アジア太平洋地域で運用が開始しました。

中国は2018年末までに、東南アジアから中近東を含む「シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード(一帯一路)」を中心に展開する予定にあり、そのうちで既にパキスタン・ラオス・インドネシアなどの30カ国はカバーされているとのこと。中国は2020年までに35基の衛星を打ち上げ、BeiDouの運用範囲を全世界に押し広げたいと考えています。BBCによると、35基という衛星の数は、アメリカのGPSやヨーロッパのGalileo、ロシアのGLONASSの2020年までの打ち上げ予定数をしのいでいるのこと。

実際に、中国は第三世代となる通信衛星「BeiDou-3」を16基打ち上げていると発表しています。


中国衛星ナビゲーション局の責任者であるRan Chengqi氏は「Beidou-3による衛星測位システムの精度はおよそ2.5メートルで、地上局を増設すればセンチメートルの精度まで向上が可能です。また、BeiDouの受信チップのコストも下がり、もはや第3世代のBeiDouはGPSと同等に正確で信頼できます」と主張しています。

しかし、衛星からの電波を受信するだけで距離が判明するGPSと異なり、BeiDouは「デバイスから衛星に信号を送信し、衛星から返送される信号を受信する」という双方向伝送システムを採用しています。このことから「デバイスに内蔵するGPSチップが大型化する上に、扱うデータが大きくなることでトラフィックが増大し、測位速度が落ちる」とが一部の専門家から指摘されています。

イギリスの王立防衛安全保障研究所のアレクサンドラ・スティッキングス氏は「中国がGPSに頼らない独自のシステムの運用拡大を急いでいるのは、習近平政権が推し進めようとしている『小さくてスマートな軍隊』の精度を上げて、その影響力を全世界に拡大するためです」と主張。スティッキングス氏は「GPSに匹敵する衛星測位システムを世界規模に展開しようという中国の計画の大部分には、宇宙開発のリーダーになろうという野望が眠っています」とコメントしています。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by log1i_yk

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