メモ

自動運転トラックの導入でトラックドライバーはどうなってしまうのか?

by Lav Ulv

自動運転車は世界各国で多くの企業が注目する技術であり、将来的には運送業界で自動運転車の普及が進むと考えられています。「自動運転トラックの普及により、トラック業界はどのように変化するのか?」という問題について、労働者問題について研究しているカリフォルニア大学バークレー校の研究機関UCB Labor Centerが予測しています。

Driverless? Autonomous Trucks and the Future of the American Trucker | Center for Labor Research and Education
http://laborcenter.berkeley.edu/driverless/

自動運転トラックの登場は現実的な問題として、トラックドライバーたちの雇用に直結する一大事となりつつあります。アメリカのトラック業界は7400億ドル(約80兆円)もの巨大産業であり、学位がなくても4万ドル(約440万円)を超える収入を得られる数少ない職業ですが、コスト削減のために自動運転車を導入するアーリーアダプターになるだろうと見られています。今回発表されたレポートによれば、トラック業界への自動運転トラック導入には複数のシナリオが考えられるとのこと。


トラックドライバーの中にもさまざまな種類があり、トラック1台分の積み荷を運ぶ「Full truckload driver(フルトラック・ドライバー)」、港から荷揚げした荷物をトラックで運ぶ「Port driver(港湾ドライバー)」、複数の荷主から小分けされた積み荷を運ぶ「Parcel driver(混載便ドライバー)」、トラック1台分よりは少ない荷物を運ぶ「Less-than-truckload driver(少量便ドライバー)」、荷物の集積所から個人宅等へ宅配する「Delivery driver(デリバリー・ドライバー)」といったものに分けられます。

一般的にフルトラック・ドライバーは1つの荷主の荷物のみを運び、平均賃金は4万7000ドル(約520万円)から5万4000ドル(約600万円)で、独立業者であることが多いとのこと。複数の荷主から荷物を請け負い、主要な集積所まで運ぶ混載便ドライバーは平均賃金が6万ドル(約670万円)、トラック1台分より少ない荷物を長距離輸送する少量便ドライバーの平均賃金は6万9000ドル(約760万円)と、フルトラック・ドライバーよりも高額な賃金を得ています。この違いは、フルトラック・ドライバーは個人業者が多い一方で、混載便や少量便ドライバーはキャリアを積める安定した組織に属している場合が多いことによるそうです。

一方で港湾ドライバーの平均賃金は2万9000ドル(約320万円)から3万5000ドル(約390万円)、デリバリー・ドライバーは平均賃金が3万6000ドル(約400万円)程度。少量便や混載便のドライバーと比較すると、およそ半分程度の賃金で雇われていることがわかります。


多くの人々はすぐにでも自動運転車が導入されると期待していますが、現実的な問題として公道では歩行者・他の車・道路工事・サイクリストなど、予期しない障害が多く存在します。そのため、レポートでは地域の一般道を含めた全ての道路で自動運転が可能になるには、おそらく数十年以上かかると見ています。

また、ドライバーは単に荷物を運ぶだけでなく、荷積みから荷下ろしの手続き、書類作成やトラックの検査に顧客とのやり取りなど、さまざまな業務を行っています。そのため、完全に人間のドライバーを排除することも現実的ではありません。そのため、レポートでは将来的にあり得る自動運転トラックの導入策として、「高速道路の入り口付近に荷物の集積所を作り、そこから自動運転トラックに荷物を積み入れて高速道路を走らせ、特定の出口で降りて高速道路の出口付近にある集積所まで荷物を運ぶ」というパターンを想定しました。

このシナリオに従えば、長距離を走行するフルトラック・ドライバーや少量便、混載便ドライバーといった長距離運転トラックのドライバーは不要になってしまいます。一方で港から荷物を集積所まで運んだり、集積所から個別の住宅まで配送するデリバリー・ドライバーは残ることになります。


アメリカにおけるトラックドライバーの種類別雇用数を見ると、フルトラック・ドライバーや少量便、混載便ドライバーはおよそ29万4000ほどの雇用を担っています。自動運転トラックが業界に導入された場合、比較的賃金が高く雇用条件のいい雇用が失われ、職を失ったドライバーは雇用条件の悪いデリバリー・ドライバー、または港湾ドライバーに流れる可能性が高いとのこと。


毎日一定時間の休息を取らなければいけない人間のドライバーと、メンテナンスを除けば常に働くこともできる自動運転トラックを比較すれば、業界が自動運転トラックを導入するのは自然な流れといえます。自動運転トラックを導入することで業界が得られる利益は大きいものですが、同時に多くの比較的良質な雇用が失われ、粗悪な雇用に労働者が流入する結果をもたらしかねません。

そこでレポートでは、労働者を守り雇用条件を悪化させないために、3つの重要な提案を行っています。その提案とは、「トラック業界の利害関係者を集めた会議を組織し、失業時の保障等のセーフティネット拡充に努める」「政策立案者がより強力な労働基準を策定し、輸送業界における雇用条件の改善を行う」「利害関係者が目標を共有し、州や地方自治体が公的資金を活用して制作に反映する」というもの。

自動運転トラックがもたらす恩恵は、非常に大きなものであることは間違いありません。一方で、レポートは利益追求のために労働者が不利益を被ることは避けるべきであり、関連団体や行政が積極的に協調して労働環境を守るべきだと述べました。

by Lav Ulv

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in メモ, Posted by log1h_ik

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