サイエンス

遺伝子編集技術「CRISPR」で筋ジストロフィーの原因遺伝子を修復する研究に前進、生きた犬の治療に成功

by Jametlene Reskp

遺伝子編集技術「CRISPR」はガン治療から低脂肪ベーコンの作成まで、さまざまな分野で大きな影響を与えています。CRISPRを用いて「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」の原因遺伝子を修復するという試みもかねてから行われていましたが、さらなる前進があり、生きた犬の遺伝子を修復することに成功したとのことです。

Gene editing restores dystrophin expression in a canine model of Duchenne muscular dystrophy | Science
http://science.sciencemag.org/content/early/2018/08/29/science.aau1549

Gene editing of dogs offers hope for treating human muscular dystrophy | Science | AAAS
http://www.sciencemag.org/news/2018/08/gene-editing-dogs-offers-hope-treating-human-muscular-dystrophy


CRISPR Halts Fatal Genetic Disease in Dogs. Could it Help Humans Next? | Digital Trends
https://www.digitaltrends.com/cool-tech/crispr-gene-editing-dmd/


DMDは幼児期に発症する遺伝子疾患で、ジストロフィンと呼ばれるタンパク質の生成に関係する遺伝子の変異が原因とみられています。DMDで筋力低下が起こると、心臓を適切に動かすことができなくなったり、横隔膜を動かして呼吸することができなくなったりして、患者の多くが20歳になるまでに死亡します。世界中の3500人に1人がDMDだといわれており、2018年時点で効果的な治療法は存在しません。

テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターの科学者たちは、遺伝子編集によって犬の筋肉や心臓の組織に含まれるジストロフィンの92%を修復することに成功。専門家によると、15%の修復でも十分に患者を手助けできるとのことで、「92%」という数字はめざましい成果だといえます。

これまでの研究で、人間の細胞やマウスでDMDの遺伝子変異を修正できるということは示されてきました。今回の実験対象となった4匹の犬は人間のDMD患者にみられる遺伝子変異と同じものを有しており、過去に行われた実験よりも大きな動物を対象とした今回の研究は、将来的に人間にも技術が適用できる可能性を示唆しています。なお、生きた動物の遺伝子を修正するため、研究チームは骨格筋・心筋に優先的に感染する無害なウイルスに、CRISPRの遺伝子編集を行う分子を運ばせたそうです。

by ivanovgood

もちろん、技術を人間に適用し臨床試験を行うにはさらなる研究が必要で、長期的な観察でCRISPRを用いた治療によってガンを引き起こさないかも確かめる必要もあります。この研究には著名な分子生物学者であるエリック・オルソン氏が関わっており、オルソン氏は「DMDもCRISPRによる治療も巨大な分野なので、慎重に確かめなければなりません」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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