メモ

海洋汚染で本当に脅威となっているのはプラスチックではなく「タバコのフィルター」

by Mathew MacQuarrie

廃棄プラスチックが川や海を流れ、微小な「マイクロプラスチック」となり海洋汚染に大きく影響しています。こういった状況を解決すべく台湾では使い捨てストローやビニール袋の使用が段階的に禁止されており、他にもスターバックスが2020年までにプラスチック製のストローを廃止すると発表しています。しかし、実際にはプラスチック製ストローは海洋廃棄物の0.02%しか占めておらず、タバコ(紙巻タバコ)の方が大きな影響を与えていると報告されています。

Plastic straw ban? Cigarette butts are the single greatest source of ocean trash
https://www.nbcnews.com/news/us-news/plastic-straw-ban-cigarette-butts-are-single-greatest-source-ocean-n903661

世界中で毎年作られているタバコの総数は5兆6000億本で、その3分の2(約3兆7000億本)は無責任に投棄されています。そのタバコの大部分がフィルターにセルロースアセテートと呼ばれるプラスチックを使用しており、これを自然界で分解するには10年以上の年月がかかるとのこと。

セルロースアセテートでできたフィルターはタバコが体にもたらす悪影響を少しでも緩和するために1990年代半ばに発明されたものです。しかし、サンディエゴ州立大学の公衆衛生学科で教授を務めるトーマス・ノボトニー氏は、「フィルターには健康上のメリットが一切ないことは明らかです。フィルターは単なるマーケティングツールで、これがあることで多くの人が心理的に喫煙しやすくなる、というだけのものです」と語っています。また、ノボトニー氏はタバコのフィルターこそがプラスチック廃棄物の主要なものであり、「これを許可し続けることができないということは明白」と、一刻も早くタバコのフィルターに何らかの規制をかけるべきだと訴えています。

by Paweł Czerwiński

1986年以来海水浴場の清掃活動を支援してきたオーシャンコンサーバンシーによると、タバコの吸い殻は32年連続で世界の浜辺で最も多く集められたゴミだそうです。これは浜辺で収集されたゴミの約3分の1を占めており、過去32年間での総数は約6000万本にものぼるそうです。タバコのフィルターには自然界で分解されづらいプラスチックが使用されているため、これが使い捨てストローなどよりも海洋汚染に影響を及ぼしていることは明らかです。

もちろん浜辺に直接タバコの吸い殻を捨てる人もいますが、多くの場合は排水溝や河川などに捨てられたものが海まで流れることとなります。そんなポイ捨てされたタバコの吸い殻はフィルター部分が徐々に細かなマイクロプラスチックへと分解されていきます。このマイクロプラスチックが海の生物に大きな影響をもたらしており、大西洋・中深海水層に生息する魚の約4分の3の胃袋からマイクロプラスチックが検出されたことも発表されています。

汚染物質「マイクロプラスチック」が大西洋・中深海水層の73%の魚の胃に入っていた - GIGAZINE


なお、ポイ捨てされたタバコの吸い殻にはプラスチックのほかにも合成繊維や何百種類もの化学物質が含まれているとのことで、ノボトニー氏はどのような種類のタバコの吸い殻が、土壌・河川・海などに潜んでいるかを研究したいと考えているそうです。

by 翔音

タバコメーカーはタバコによる健康への影響を懸念する声を解消するため、20世紀半ばにフィルターの使用に関する調査を行っています。しかし、この研究ではフィルターを使用してもタバコによる発がん性物質を適切に制御することはできない、と示唆されていました。その後、スタンフォード大学の科学技術史研究科の卒業生であるブラッドフォード・ハリス氏が同じくタバコのフィルターに関する調査を行っており、フィルターが人体に悪影響を及ぼす物質を減らすような役割はできていない、と指摘しています。

また、タバコメーカーはポイ捨て問題に取り組むために、ポータブル灰皿を配布するキャンペーンを行ったり、「ビーチにあなたの吸い殻を残さないで」という看板を沿岸都市の30箇所に設置したりと、さまざまな施策を行っています。最近ではアメリカンスピリットを製造するサンタフェナチュラルタバコがフィルターのリサイクル活動に取り組んだり、携帯灰皿を年間で400万個も配布するなど、積極的なキャンペーンを行っています。

しかし、こういったキャンペーンは本質的な問題の解決にはなんら影響を与えていない、と専門家たちは指摘しています。つまり、タバコのイメージ改善にはつながっても、タバコのポイ捨て問題を解決することにはつながっていないというわけです。

by Bin Thiều

なぜ喫煙者が平気で吸い殻をポイ捨てしてしまうのか、その理由は定かではありませんが、タバコのフィルターが生分解性のものであると勘違いしている人がいることは明らかです。実際にタバコメーカーはフィルターを生分解性のものに替えるという取り組みも行っています。しかし、紙製フィルターの試作品は煙の味を粗悪なものにしてしまったそうで、その他の材料製のフィルター、例えば綿フィルターなどは満足できるクオリティのものに仕上がらなかったとのこと。

サンディエゴのGreenbuttsは、土や水で急速に分解する有機物でできたフィルターの開発に成功したというスタートアップです。Greenbuttsの有機物フィルターはマニラ麻・テンセル・木材パルプで構成されており、天然のデンプンで結合されているため、自然界で分解されずに残ることはありません。

Greenbuttsの共同設立者であるTadas Lisauskas氏は自社製品が既に市場に出回っていることを明かしており、量産すれば低価格での提供も可能であるとしています。しかし、より本格的にこの有機フィルターを普及させるには政府の支援が必須であるとのことで、「政府が我々の製品の使用を奨励してくれることを期待している」と述べました。

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in メモ, Posted by logu_ii