取材

花火師が腕を競い合う「競技花火」を解説、実際に花火競技会で審査員を体験してきました


数ある花火大会の中には、花火師が花火の美しさと製造技術を競う花火の競技会を催しているものもあります。秋田県大仙市で行われる全国花火競技大会大曲の花火土浦全国花火競技大会が有名ですが、その他の地方の花火大会でも、競技会が行われています。今回、花火鑑賞士の資格を持っているということで、奈良県宇陀市で行われた全国花火まほろば競技会の審査員を務める機会がありましたので、競技花火の楽しみ方と合わせてレポートします。

宇陀市はいばら花火大会・全国花火まほろば競技会
https://haibara-hanabi.com/

場所は、奈良県宇陀市榛原下井足・篠楽地内(宇陀川河畔水田地帯)です。


2018年8月5日、花火大会会場へ。田んぼの奥側が打ち上げ場所となっています。


今回は、審査員として参加するので最前列の審査員席へ案内されました。審査員は全部で10名とのこと。


名前の入ったプレートと、バインダー、ボールペンが各自の席に用意されています。


バインダーの中には、採点方法の説明書きと採点表がありました。


午後7時30分、花火大会が始ます。競技会は、花火大会の中盤に行われるということで、審査員席で花火を見ていると……


「花火競技会の審査の方法について、花火鑑賞士から説明があります」ということで、花火の審査方法について説明をすることになりました。


◆競技会における良い花火とは
競技会では「いったい花火の何が競われているのか?良い花火とは何か?」という点ですが、主に「バランス良く見えること」「技術的に高度かどうか」「テーマ性や芸術性など表現力」を考慮して点数が付けられています。これは、1つの例で、評価する項目や点数の配分などは競技大会によって違います。

「バランス良く見えること」について、専門的に細かくみると、打ち上がった花火玉が上昇しきった頂点で開いているかどうかという「座り」、花火の全体的な形の「盆」、盆を構成する星(光る粒のこと)たちのそろい方や勢いを表す「肩」、花火の消える様子を表す「消え口」と分けることができます。


しかし、実際に上がる花火を見た際には一瞬の出来事で「座り」「盆」など個別の項目を短時間で判断することは難しいです。実際には、丸い円になっているかどうか、大きさはどうか、円を描くものでない種類の花火であれば均等に散らばっているか、消え方はそろっているかどうかなど、全体を通した印象をバランスとして点数を付ければ大丈夫。


「技術的に高度かどうか」については、花火が開いた際に同心円状に何重にも見える芯が入った花火は、芯が多いほど技術と手間が必要となります。


その他、色が多い、色の変化が多い、四方八方に糸を引くかのように広がる八方咲きや小玉が後から一斉に開く千輪のような特殊なものなど、複雑なものほど技術と手間が必要なので、「凝った花火だ」と思う花火は点数を高めにという感じで点数を付けます。さらには、色が濃くかつ明るいかどうか、色の組み合わせなど、火薬の配合の技術までみる視点もありますが、これは専門家でないとわからない部分なので、気にしなくて構いません。


「テーマ性や芸術性」については、「実際に打ちあがる花火が、プログラムに載っている花火の名前やコメントのイメージと合っているか」というテーマ性や芸術作品としての印象などを考慮して点数を付けます。


など、ひと通り説明したところで、競技会の開始となりました。


競技会では、まず基準となる花火が打ち上がります。この基準玉を満点の7割の花火としておき、以後、打ち上げられる競技玉を基準玉と比較して点数を付けていくという方法がよく用いられます。


基準玉が打ち上げられた後、競技玉の名前やコメントなどのアナウンスから競技玉が打ち上がります。有限会社糸井火工「ルビーの輝き」


基準玉と比較しつつ点数を付け、審査表に書き込んでいきます。次の競技玉が打ち上がるまで約30秒、あっという間に感じますが、採点しなくてはいけません。


以後、この繰り返しとなります。野村花火工業株式会社「キラキラ万華鏡」


全ての競技玉の打ち上げが終わると、審査表はスタッフに回収されました。


この競技会にエントリーされた花火業者は、全部で15社でした。審査員10名による合計点で順位が決まります。以下、第4回全国花火まほろば競技会の入賞作品を紹介します。

優良賞・宇陀市長 株式会社北日本花火興業「天空の孔雀」


優秀賞・奈良県知事賞 株式会社紅屋青木煙火店「黄金の曼荼羅」


最優秀賞・内閣府特命担当大臣賞 株式会社山内煙火店「昇朴付三重芯菊先光露」


この競技会では、審査員の点数による順位とは別に一般のネット投票も行っており、1位の作品には特別賞として「まほろば賞」が与えられます。今回は、有限会社紀州煙火の「芯入金閃冠」が受賞。

競技会も終わり、緊張感から解放される中、残りの花火プログラムを楽しみました。


2018年8月25日に行われる全国花火競技大会大曲の花火は、NHKの生中継でも見ることができますので、筆記用具とメモ用紙を用意して生中継を見ながら採点をすると、新しい花火の楽しみ方が発見できるかもしれません。競技会を行っている花火大会のプログラムに採点欄が付いているものもありますので、花火大会に行った際にはプログラムも手に入れてみてください。

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in 取材,   アート, Posted by darkhorse_logmk

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