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サイエンス

3Dプリンターを使って人工の胎盤を作成することに成功


人間の体にかならずあるへそは、かつて胎児だった頃に母親と物理的につながっていた証です。胎児は母親の子宮内にある「胎盤」から酸素や栄養分を、へその緒を通じて受け取ります。この胎盤を3Dナノプリンターと生体高分子で再現した「人工胎盤」の作成に成功したと、ウィーン工科大学が報告しています。

Technische Universität Wien : Die künstliche Plazenta im Labor
https://www.tuwien.ac.at/en/news/news_detail/article/126119/


胎盤は母体と胎児をつなぐ器官で、酸素・栄養分や二酸化炭素・老廃物をやりとりします。人間の胎盤を直接調査することは胎児の命にも関わるため、母と子の間でどういうプロセスで物質の交換がなされているのかや、人間の胎盤の透過性は今もなお完全には明らかになっていません。

例えば、母親が糖尿病や高血圧などの疾患を抱える場合、胎児への物質輸送に影響を与える可能性があります。しかし、胎盤における物質交換のプロセスが明らかになっていないため、具体的にどのような影響があるかについての研究はなかなか進んでいませんでした。

ウィーン工科大学は、特別に開発されたフェムト秒レーザーによる3Dナノプリンターを使い、本物の胎盤と同じような絨毛(じゅうもう)構造の生体高分子膜をマイクロ流体チップの中に成形しました。以下のイラストで、赤い「胎児部」と青い「母体部」の間で波打っている灰色の境界部分が、3Dナノプリンターによって成形された生体高分子膜に当たります。


実際に人工胎盤が再現された研究用の生体チップが以下の画像。


このチップにへその緒と胎盤由来の細胞を培養液と共に注入して観察したところ、本物の胎盤と同じように、胎児部と母体部の間で物質のやりとりが確認されました。この人工胎盤を用いることで、栄養分となるグルコースが母親と胎児の間でやりとりされている仕組みや、血圧・血糖値・薬物などが胎盤に与える影響が研究できると、研究チームは述べています。


ウィーン工科大学材料科学技術研究所のアレクサンドル・オヴシアニコフ教授は「胎盤での栄養分透過の他にも、胃・腸・血液脳関門など、生体膜を介した物質の輸送は様々な分野で重要な役割を果たしています」とコメントしていて、3Dナノプリンター技術は人工胎盤だけではなく他の組織にも応用できると期待されています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk