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もめ事を解消するためには「攻撃的な仲裁者」の方が効率が良いことが判明、ただしその後の弊害あり


家族間のもめ事や、会社と従業員が雇用関係の件でもめる労使紛争など、世の中にはさまざまな交渉事が存在します。そんな時に両者の衝突をうまく和らげて解決に持ち込むのは、実は攻撃的な態度を示す仲裁者であることが研究によって明らかにされています。

(PDF)The Surprising Effectiveness of Hostile Mediators


Why Hostility Can Bring People Closer Together - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/why-hostility-can-bring-people-closer-together/

この研究を行ったのは、ハーバード・ビジネス・スクールフランチェスカ・ジーノ教授らによる研究チームです。紛争が生じている2つのグループの仲介を取りもつ仲裁者の態度が交渉の結果にどのような影響を及ぼすのかを、仲裁者の性格を人為的に設定することで調査しています。

実験では、246人の協力者を「仲裁者」と「交渉の当事者」に1:2の比率で分けてそれぞれ役割を与えました。そして、1人の仲裁者と2人の交渉当事者からなる79組のグループを作り、紛争を解決するまでのシチュエーションを再現させました。交渉当事者にはあらかじめ自分のおかれたシチュエーションが説明され、もう一方の交渉当事者との間に存在する紛争を解決するよう指示が行われています。そして、仲裁者は研究チームによって「攻撃的な仲裁者」または「優しい仲裁者」のどちらかを演じるように指示が行われています。

By Arkansas Highways

交渉は3段階にわたって実施されました。最初の交渉ではまず、仲裁者が取りもつ状況の中で交渉当事者が互いの主張と議論を擬似的に設けられたチャットルームの中で行いました。次に、2人の交渉当事者は再びチャットルームに入り、今度は仲裁者なしの状況で1回目には話し合われなかった内容について交渉を行いました。そして最後に、交渉当事者は相手および仲裁者からの質問に回答する場が設けられました。

交渉が始まる前に、仲裁者は研究チームから与えられた指示に基づいて2人の交渉当事者にメッセージを送付しました。この時、攻撃的な仲裁者は交渉当事者に対し、例えば「まったく君たち二人は私の時間を完全に無駄に浪費させている。君たちの問題についてこれ以上聞かされることがないと思うと、本当に肩の荷が下りた思いがする」という高圧的な内容のメッセージを送信。一方の優しい仲裁者は、「あなた方の意見を聞かせてくれてありがとうございます。お2人にとってこの交渉が役に立つものであることを願っています」といった、理解を示す内容のメッセージを送信しています。

このような状況のもと行われた79件の交渉の結果を分析したところ、攻撃的な仲裁者がいたグループでは全体の85%が合意に達することができたという結果が明らかになりました。一方の優しい仲裁者がいたグループの場合、合意に達した割合は59%と明らかに低いものとなっていたことが明らかになっています。


ただし研究チームは、この結果から「攻撃的な仲裁者のほうが交渉の適任者である」と捉えるべきではないとも指摘しています。過去に行われた心理学の研究では、攻撃的な態度を示すことによるマイナス面のコストが存在することが明らかにされており、たとえ交渉事を合意に導くのに攻撃的な仲裁者の方が適しているとしても、それが組織を導くうえで有益に作用するとは限らないとのこと。誰かが攻撃的な行為の標的にされることや集団から阻害されることは、その人物の仕事のパフォーマンスが低下するという影響や、組織全体で助け合おうとする心理が弱まるという影響が生まれることが過去の研究によって明らかにされています。

今回の結果からは、「共通の敵が存在する時に、人々の結団力は強まる」ということが裏付けされたといえますが、たとえそれが一時的な効果を示したとしても、その結果もたらされる結末は必ずしも優れたものではないということも一方では確かなものであるようです。

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in メモ, Posted by logx_tm