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米中の貿易戦争勃発を受けハーレーに続いて有名楽器ブランド「moog」もアメリカ脱出を検討

By Wolfgang Stief

アメリカのトランプ大統領が表明していた中国に対する関税引き上げ措置がついに発動されました。これに対して中国も同規模の報復措置に踏み切っており、アメリカと中国は「貿易戦争」の状態に突入しました。そんな状況の中、アメリカの有名楽器メーカー「moog(モーグ)」は関税引き上げによる生産コスト増が同社の経営に打撃を与えるとして、オートバイメーカー「ハーレーダビッドソン」と同様に事業を海外にシフトさせる可能性を示唆しています。

Moog Says Chinese Tariffs May Force A Move Overseas : NPR
https://www.npr.org/2018/07/02/625363659/moog-says-chinese-tariffs-may-force-a-move-overseas

Musical instrument manufacturer threatens to move overseas due to Trump tariffs | TheHill
http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/395321-musical-instrument-manufacturer-threatens-to-move-overseas-due

アメリカ東部時間の2018年7月6日午前0時1分(日本時間で同日13時1分)に発効した追加関税措置は、産業用ロボットなど中国からの輸入品340億ドル(約3兆7600億円)が対象。追加される税率は25%で、トランプ政権はさらに別枠で160億ドル(約1兆7700億円)相当の中国製品への関税を2週間内に発動する可能性があるほか、今後さらに2000億ドル、3000億ドル規模の措置が続くことも示唆しており、最終的に5500億ドル(約60兆円)相当の中国製品が対象になる可能性があります。

この措置に対して中国は猛反発しており、同規模の報復関税を発動。事態は互いに一歩も引かない全面的貿易戦争の様相を呈しています。巧みな戦術を使って相手との「ディール」を勝ち取ることでビジネスの世界でのし上がってきたトランプ氏流の交渉術ともささやかれる今回の措置がどのような方向へと進むのか、余談を許さない状況が続きます。

By IoSonoUnaFotoCamera

トランプ政権は、欧州連合(EU)との間でも貿易戦争の状況に突入しています。2018年6月にトランプ政権はEUなどに対し、鉄鋼・アルミニウム製品に対して新たな輸入関税を措置を発動。これを受けてEUはオートバイなどのアメリカ産製品に25%の報復関税で対抗しました。その状況を受け、アメリカンバイクの代名詞的存在である「ハーレーダビッドソン」は現地時間の6月25日、オートバイ生産の一部をアメリカ国外に移すと発表しました。

ハーレー、生産一部米国外へ トランプ貿易戦争が裏目に | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/06/post-10474.php

このハーレーダビッドソンの対応に対し、トランプ大統領は「他ならぬハーレーダビッドソンが最初に白旗を揚げたのは驚きだ」というツイートを投稿。「関税は単なる言い訳に過ぎない」とし、文末には「我慢しろ!」と書いていましたが……

Surprised that Harley-Davidson, of all companies, would be the first to wave the White Flag. I fought hard for them and ultimately they will not pay tariffs selling into the E.U., which has hurt us badly on trade, down $151 Billion. Taxes just a Harley excuse - be patient! #MAGA

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump)


その後、一時は蜜月関係にあるともいわれたハーレーダビッドソンに対して攻撃を開始。誤った情報を発信しつつ攻撃を繰り広げるトランプ氏はハーレーダビッドソンに対して「なめんなよ」と発言したとも報じられており、実にトランプ氏らしい振れ幅の大きい対応を見せています。

トランプ氏のツイッター攻撃続く、ハーレーのビジネスをまたも誤解 - Bloomberg
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-27/PB06OY6KLVR401

そんな中で新たに中国を相手に勃発した貿易戦争を受け、1950年代に創業した老舗電子楽器メーカーの「Moog Music」は、状況がこれ以上続くと生産拠点を海外に移さざるを得ないという構えを見せています。


Moog Musicは、1960年台にロバート・モーグ博士によって開発されたアナログシンセサイザーにその歴史の発端を持ちます。当時としては非常に画期的な電子楽器として発表されたMoogシンセサイザーは数々の音楽制作に取り入れられてきましたが、おそらく以下の曲は誰もが一度は聴いたことがあるはず。音楽ユニット「ペリー&キングスレイ」が1967年に発表した楽曲「バロック・ホウダウン」で、別名「(初代)ディズニーランドのエレクトリカルパレードの曲」です。

Jean-Jacques Perrey - Baroque Hoedown - YouTube


Moog Musicは顧客に向けたメッセージの中で、関税措置によるコスト増が実施されると「楽器を製造するためのコストが即座に、しかも大幅に増加する」ために、「従業員のレイオフおよび、最悪のシナリオとして生産拠点を一部または完全に海外にシフトさせることになる可能性がある」と表明しています。

25% Tariff on Chinese Goods Threatens our Jobs
https://us2.campaign-archive.com/?e=&u=66ca69d70dceab5be9897856d&id=a2684e1453

メッセージの中で同社はまた、顧客に向けて文章のテンプレートを提供し、「連邦議会議員や上院議員に対して次の内容の手紙を送ることで、問題解決に向けた行動を助けてほしい」と依頼しています。

手紙の文面には、「Moog Musicに代わってこの手紙を送る」こと、そして「同社の製品に使われる電子基板の約半分は中国からの輸入品」であり、関税措置により「生産コストが激増するためにアメリカ人労働者がレイオフされる、あるいは生産拠点がアメリカ国外に移転してしまう」可能性があり、その結果として「60年に及ぶ歴史の中で数々の伝説的な作品に関わってきたMoog MusicとMoogシンセサイザーの歴史が終わるのを見たくない」という内容が記されています。


徐々にアメリカの製造業と経済に影響が及び始めた様相を見せる米中および米欧の貿易戦争の行方が気になるところ。なお、経済評論家の中には、米中の貿易戦争はアメリカに分があると見方を示す人もいます。

米中貿易戦争はトランプに勝算、エコノミストが予想 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/07/post-10551.php

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in メモ,   動画, Posted by darkhorse_log

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