生き物

レミングは「集団で自殺する」という迷信はなぜ生まれたのか?


by Lars Odeblad Helseth

「集団で入水自殺する」という迷信が存在するレミング(タビネズミ)について、なぜそのような奇妙な迷信が生まれたのかを科学者たちが解説しています。

Lemming Suicide Myth, Alaska Department of Fish and Game
http://www.adfg.alaska.gov/index.cfm?adfg=wildlifenews.view_article&articles_id=56

アラスカ州立野生生物学者のトーマス・マクドノー氏は、レミングの入水自殺について「完全に都市伝説だ」と断言しています。また、なぜレミングに関するこのような迷信が生まれたのかについて、「1950年代のディズニーのドキュメンタリーがこの迷信の元となっており、いつの間にか迷信の方が主流になってしまい広く知られることとなった」と説明しています。

レミングは広々とした草原に生息する短い尻尾を持ったげっ歯類です。アラスカには冬に白くなる唯一のげっ歯類である襟付きレミングのほかに、3種類のレミングが生息しています。

by Neal.Cheeseman

迷信のもととなったと考えられたディズニーの映画は、「True-Life Adventures」シリーズのひとつである「White Wilderness(白い荒野)」です。1958年に制作された「白い荒野」では、集団自殺するレミングの不思議な行動が特集されています。

レミングが海に身を投げて自殺するシーンは以下のムービーの1分30秒あたりで見ることが可能。

White Wilderness - YouTube


カナダ放送協会のプロデューサーであるブライアン・ヴァリー氏が1983年に行った調査から、「白い荒野」で撮影されたレミングの行動は偽造されたものであることが判明しています。ムービー中のレミングが海に飛び込むシーンは実際にはディズニーの映画制作者たちに投げ入れられることで撮影されたものであり、編集と意図的なカメラアングルにより人工的に作り上げられたシーンであるというわけです。

また、「白い荒野」が撮影されたのはカナダ・アルバータ州ですが、アルバータ州は内陸部であり、自然のレミングが生息している地域ではありませんでした。そこで、ディズニーの制作陣はマニバト州などいくつかの土地でイヌイットの子どもたちから「自殺させる用のレミング」を購入したことも判明しています。

「白い荒野」ではディズニーで脚本家として活躍したウィンストン・ヒブラー氏がナレーターを務めているのですが、レミングが集団自殺するシーンでは「一種の強迫観念が小さなげっ歯類を捉え、理不尽なヒステリーによりレミングの集団を奇妙な運命へと誘っていった」と語られています。

崖から海を見つめるかのようなレミング


映像ではレミングが自ら海に身を投げているかのように見えます。


もちろん動物ドキュメンタリーなどでは、「白い荒野」のように演出によりシーンが作り上げられることがしばしばあります。しかし、「ディズニーはどこかから(レミングが集団自殺するという)アイデアを得なければいけなかった」とマクドノー氏は語ります。レミングの個体群は、捕食者や食料、気候などさまざまな要素によりそこ行動を大きく変化させることが知られています。理想的な条件下では1年で個体数を10倍にまで膨れあがらせることが可能ですが、食料が足りない場合はビーバーなどと同じように群れを散り散りにする習性を持っているそうです。よって、無理やり撮影地のアルバータ州にレミングを連れてきて、さらに群れに外的なプレッシャーを与えることで混乱させ、レミングたちが自殺しやすくなるよう誘導したのではないかとマクドノー氏は推測しています。

レミングはもともと泳ぐことができる動物であり、連れてこられたアルバータ-州が食料が少ないなど生息に適さない場所であれば、水に飛び込み緑の牧草地を求める可能性は十分にあります。さらに、レミングの中には溺れてしまう個体もいます。そういったさまざまな要素が絡み合い「集団自殺するレミング」という映像のアイデアが生まれたのではないかと推測されているわけです。

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