サイエンス

子どもがストーリーを楽しみつつ脳を最も鍛えられるのは「絵本」


子どもの情操教育に効果的なツールはいろいろ提案されていますが、こと脳のネットワーク強化においては「絵本(イラスト)」が極めて優秀であることが研究から明らかになっています。

New studies measure screen-based media use in children | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-05/pas-nsm042618.php

What's Going On In Your Child's Brain When You Read Them A Story? : NPR Ed : NPR
https://www.npr.org/sections/ed/2018/05/24/611609366/whats-going-on-in-your-childs-brain-when-you-read-them-a-story

「『3びきのくま』がいい!」と子どもにせがまれた親は、絵本、音声CD、アニメはてはAmazonのAlexaによる読み上げなど、どの「メディア」を使えばよいか悩むものです。現代社会ではツールの選択肢が多いがゆえに、最適な方法に悩んでしまうというわけです。

同じストーリーを楽しむときに子どもの脳が受ける影響はメディアごとにどのような違いがあるのかを、シンシナティ小児病院のジョン・ハットン博士が調査しました。ハットン博士は、4歳前後の27人の子どもにストーリーを「音声のみ」「(音声付き)イラスト」「アニメーション」の3つの方法で再生して、その時の脳の状態をfMRIで測定しました。なお、3つのコンテンツはすべて「ロバート・マンチ」の公式サイトのストーリーが使われています。


ハットン博士は脳の状態の中で、「言語」「視覚」「視覚イメージ」「デフォルトモード」の4種類のネットワークを中心に分析しました。なお「デフォルトモード」とは、自分に関係のある内面的な反応に関するもので、外界の変化などに集中していないときに活性化されるものだとハットン博士は説明しています。

fMRIによる脳波測定の結果、「音声のみ」の場合、言語ネットワークが非常に活性化されていることがわかりましたが、全体的にネットワークの接続は弱かったとのこと。音声のみの場合の脳の状態についてハットン博士は「too cold(冷たすぎる)」と表現しています。音声のみの場合、子どもたちが物語を理解するためにストレスがかかっている兆候があるとのこと。

これに対して「アニメーション」は「too hot(熱すぎる)」だとハットン博士は表現しています。アニメーションでは聴覚、視覚ネットワークで活発化が確認できた一方で、脳の他のネットワークとの連携がみられなかったとのこと。アニメーションでの動きが何を意味するのかに多くのエネルギーが使われた結果、ストーリーの内容理解が3パターンの中で最も悪かったそうです。


最も良好な結果が得られたのは「イラスト」でした。音声付きのイラストを見せられた子どもたちの脳は、音声のみの場合に比べて言語ネットワークの活性化はわずかに落ちましたが、視覚、視覚イメージ、デフォルトモードなど他のネットワーク全体の接続性が向上することが確認されたとのこと。言葉に注意を払いつつ、イラストが手掛かりとなってストーリー全体への理解が高まったことも確認されています。

ハットン博士によると、3歳から5歳の子どもの脳では、視覚イメージやデフォルトモードのネットワークは遅れて成熟し、トレーニングを通じて他の脳のネットワークと統合できるようになるとのこと。この時期の子どもに過度にアニメーションを見せると、視覚イメージやデフォルトモードが成長する機会を逸してしまう可能性が指摘されています。十分なトレーニングなしに大量の言語にさらされると、読んだ内容をイメージ化する能力が養われず、最終的に「読書嫌い」の子どもに育ってしまうとハットン博士は考えています。

なお、fMRIを使った実験という制約の下で具体的な分析は行われていないものの、ハットン博士によると最高の「音声付きイラスト」は、子どもをひざの上に座らせた状態での「読み聞かせ」だとのこと。読み聞かせでは、会話的な読書によるコミュニケーションによって、今回の実験で分析された4つのネットワークに限らず脳全体に良い影響があるため、やはり、音声のみやアニメーションよりも読み聞かせが可能な「絵本」のようなツールが子どもの脳の開発には優れていると言えるようです。

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