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禁煙には「金銭的な報酬を与えること」が最も効果的であると研究者が指摘


禁煙は短期間で多くの離脱症状(禁断症状)が発症することから、大きな苦痛を伴うと言われています。この苦しみのためか、(PDFファイル)2017年の厚生労働省の調査では、近年禁煙したいと考える人の数と喫煙者の数がほぼ横ばいに推移していることから、禁煙を試みても達成しづらい現実が示されています。ペンシルベニア大学で薬学の准教授を務めるスコット・ハルパーン氏らは、禁煙治療には「金銭的な成功報酬」を与えるアプローチが最も有効であるということを研究で示しています。

A Pragmatic Trial of E-Cigarettes, Incentives, and Drugs for Smoking Cessation | NEJM
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMsa1715757?query=main_nav_lg&

To get smokers to quit, money works better than electronic cigarettes
http://www.latimes.com/science/sciencenow/la-sci-sn-quit-smoking-trial-20180523-story.html

ハルパーン氏らの研究チームは、どのような禁煙治療が有効なのか調査するため、6006人の被験者を以下の5種類の禁煙治療を行うグループに分け実験を開始。その後、禁煙を半年間達成できた人が何人いたかについて調査を行っています。

通常のケア:被験者に「禁煙にどのようなメリットがあるか」、「成功率を上げるための戦略」、アメリカ国立がん研究所の「テキストメッセージサービスにアクセスするための情報」のみが提供されるグループ。
禁煙グッズの無料提供:被験者に「通常のケア」で提供されるものに加え、バレニクリンブプロピオンの禁煙補助薬、ニコチンパッチ、ガム、あめが提供されるグループ。過去にこれらを試して効果が出なかった人には電子タバコも配布されました。
電子タバコ:「通常のケア」で提供されるものに加え、電子タバコが提供されるグループ。
成功報酬:「通常のケア」「禁煙グッズの無料提供」「電子タバコ」に加え、尿検査や血液検査で禁煙していることが認められれば、禁煙期間が1カ月で100ドル(約1万1000円)の報酬、3カ月で200ドル(約2万2000円)の追加報酬、半年で300ドル(3万3000円)がさらに追加報酬として得られるグループ。
報酬の先払い:「通常のケア」「禁煙グッズの無料提供」「電子タバコ」が提供され、実験の開始前に被験者の銀行口座に600ドル(約6万6000円)が振り込まれます。その後、被験者が半年間の禁煙を達成した場合は何もありませんが、達成しなかった場合は禁煙期間に応じて現金が回収されるというもの。これは、「お金を失いたくない」と考えることが、禁煙治療の効果を高めるか調べるために考案されたとのこと。


実験を開始したところ、8割以上の被験者が一度も禁煙の状況を報告することはありませんでした。このため、研究チームは、これらの被験者が禁煙を達成できていないものと評価。調査に協力した被験者のうち、半年間の禁煙に成功した人は「通常のケア」が1名、「禁煙グッズの無料提供」が8名、「電子タバコ」が12名、「成功報酬」が24名、「報酬の先払い」が35名となり、禁煙に成功した80名のうち、約75%は金銭的な報酬を得るグループであったことが示されました。金銭的な報酬を行う2つのグループで比較すると、「報酬の先払い」グループの方が高い効果を生み出しましたが、統計的に有意性があるとは言い切れないとしています。

また、各グループに支払われた費用から成功者1人出すために必要な金額を計算すると、「通常のケア」が700ドル(約7万7000円)、「禁煙グッズの無料提供」が約7800ドル(約85万円)、「電子タバコ」が約5400ドル(約59万円)、「成功報酬」が約3600ドル(約39万円)、「報酬の先払い」が約3500ドル(約38万円)であったことが報告されています。初期費用の安さから「通常のケア」のコストパフォーマンスが最も高いという結果になっていますが、成功率の著しい低さが懸念点となっています。特筆すべきは、金銭的報酬のある「成功報酬」と「報酬の先払い」のグループで、禁煙成功者以外には報酬は支払われない(または回収される)ため、成功者1人あたりにかかる費用を抑えられるという結果になりました。


研究チームは成功した80人に対してさらに半年間の経過観察も実施しており、1年間禁煙を継続した人が半分以下の38人に減ってしまうことが明らかにされています。それでもハルパーン氏らは、コストパフォーマンスの高さから「喫煙者を減らしたいと考える企業で禁煙を推進する場合、金銭的な報酬を与える取り組みが理にかなっている」と述べています。

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in メモ, Posted by log1j_ty