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「世界で最も厳重」といわれるベン・グリオン国際空港の搭乗前審査はどうなっているのか?


世界中のあらゆる国々に空港が存在し、日々多くの人々が飛行機に乗り、国境を越えて旅行やビジネスを行っています。すべての空港では搭乗前に乗客のチェックを行ってテロなどの事態に備えており、そんな世界中の空港の中でも「最も厳重な警備体制」といわれるイスラエルのベン・グリオン国際空港の警備体制について解説したムービーがYouTubeに公開されています。

How to Design Impenetrable Airport Security


2015年の調査では、アメリカの空港で搭乗前審査を担当するアメリカ合衆国運輸保安庁(TSA)が麻薬・爆薬・武器といった禁止品目のうち、実に95%を見逃していたことが明らかになりました。


2016年の調査では見逃し率が変わらず、2017年には多少精度が向上したものの、依然として70%もの見逃し率となっています。


搭乗前審査は飛行機に乗ってスムーズに移動したい人々の時間を削って行われますが、一方でその精度には疑問が残っているとのこと。


国際民間航空はすべて国連の機関である国際民間航空機関(ICAO)の管理下にあり、さまざまな規制が行われています。


世界中の航空を円滑に進めるため、ICAOは空港の安全保障対策についても定めていますが……


その文言については、単に「危険物の持ち込みを防ぐ必要がある」としているだけで、具体的な対策について取り決めたものではありません。


基本的に、多くの空港ではICAOが定める要件を満たすため、搭乗前に手荷物検査や身体検査を行うことで武器や危険物などの持ち込みを防いでいます。


搭乗前検査では手荷物のX線検査やミリ波による身体スキャン、金属探知機によるチェックなどが行われます。


慎重な搭乗前審査は安全保障上必要なことですが、乗客たちにとっては不快であり、不平不満の声も少なくありません。よって、直接手荷物の中身をチェックすることなく、X線検査のみでチェックを終わらせてしまうケースも少なくありません。


2001年の同時多発テロ事件以来、アメリカを出発した飛行機がテロ行為による死亡者を出したことはありません。その点では、TSAは職務を果たしているということができます。


2018年5月現在、最も優れた安全保障対策を取っている空港は、イスラエルのベン・グリオン国際空港であるとされています。政治的に不安定な地域に存在している空港でありながら、ベン・グリオン国際空港から飛び立った航空機がハイジャックされたり、テロに遭ったことはありません。


ベン・グリオン国際空港の安全保障対策を優れたものにしているのは、非常に高性能なテクノロジーを備えたスキャン機器ではありません。


アメリカやヨーロッパと同じ金属探知機を使用しているベン・グリオン国際空港では、プラスチック製の爆発物や非金属製の刃物といった武器を検出することは困難です。


ベン・グリオン国際空港の安全保障は、武器ではなく「人」に向けられているとのこと。


搭乗客が空港に到着する前、空港へ入る車は空港の入り口から1マイル(約1.6km)離れたセキュリティチェックポイントを通過します。その時点からベン・グリオン国際空港の安全対策はスタートしており、警備員は車を入念にチェックし、不審な人物が空港に近づこうとしていないかを調べます。


空港内でも訓練された警備員が常に巡回し、不審な行動を取っていたり、不自然に緊張している人物がいないかをチェックしているとのこと。


続いて、乗客の搭乗前審査が始まる前に、係員から乗客に対する聞き取り調査が行われます。ベン・グリオン国際空港を通過する乗客は皆、他の空港では見られないほど厳しい聞き取り調査に驚くそうです。


この聞き取り調査こそがベン・グリオン国際空港の安全保障の要であるとのこと。聞き取り調査では「どこに住んでいるのか?」「なぜイスラエルに来たのか?」というスタンダードな質問や……


「通っていた学校は?」「最後に引っ越したのはいつ?」といった個人的な質問を行います。これにより、係員は乗客の話す内容にほころびがあったり、乗客が不自然に動揺したりしないかを確認します。


乗客への聞き取り調査が終わると、乗客には個別のバーコードが渡されます。バーコードに記載された最初の数字は1~6の6段階に分かれており、数字が大きいほど乗客の持つリスクが高いと見なされます。数字が1から始まる人物は非常に低いリスクであると見積もられていますが……


6から始まる人物は「非常に危険」な人物であるとされ、厳重な搭乗前審査が行われます。


乗客のリスク判定は聞き取り調査だけでなく、個人のプロファイリングによっても行われます。イスラエルの安全保障上、「男性」「1人旅」「若い」「アラブ人」といった要素は乗客のリスクを上げる要素とされており、国際的に「人種差別的である」と非難を受けているとのこと。


しかし、近隣のアラビア諸国と緊張状態にあるイスラエルは「安全保障上必要な措置だ」として、人種によるリスク判定を取りやめることはないとしています。


アラブ人はほぼ確実に「リスク6」と判定され、イスラエル人でない欧米人も「4」や「5」といった高いリスク判定を受ける可能性が高いとのこと。


乗客の手荷物は通常のX線検査を受けた後、一定の高度で起爆する爆弾でないことを確認するために、減圧室での減圧検査も行なわれます。


乗客はその間に身体検査を受け、バッグを受け取ります。高リスク判定を受けた乗客は、手荷物をさらに係員が手作業で検査し……


再度聞き取り調査を受ける場合もあるそうです。


飛行機に乗れば安全保障は終わりというわけではありません。イスラエルを飛び立った飛行機には航空警備隊が乗客の中に紛れ込んでおり、リスクの高い乗客の近くに座って監視を行っています。


警備隊はパイロットと通信するアラートボタンを所持しており、緊急時にはボタンを押してパイロットと通信を行い、ハイジャック犯を倒すために急降下を試みるといった対抗策を取るとのこと。


また、航空機への攻撃をレーダーで監視し、飛行機の身代わりとなる飛行体を搭載して外部からの攻撃にも備えています。


イスラエルの国営航空会社であるエル・アル航空は、イスラエル以外の空港でもイスラエルに入国する航空機に対し、ベン・グリオン国際空港と同じ安全保障対策をとっているのです。


ベン・グリオン国際空港は非常に安全な空港ですが、全世界の空港が同様の対策を取ることは難しいかもしれません。ベン・グリオン国際空港の利用客数は年間およそ2000万人ですが、これはサンディエゴ国際空港ベルリン・テーゲル空港と同じくらいの数。いずれも小規模な空港ではありませんが、決して最大規模の空港というわけではないため、さらに利用者数の多い空港では同様の対策を取るのは困難だとのこと。


また、イスラエルの人種にもとづく安全保障システムは、多くの国で倫理的に認可が下りなかったり、違反行為であったりします。


しかし、多くの国がベン・グリオン国際空港の安全保障システムに大きな関心を寄せているのも事実であり、アメリカやドイツの一部では厳重な聞き取り調査システムや空港内の監視システムについて、ベン・グリオン国際空港を参考にしています。


多くの乗客は搭乗前審査に時間がかかることを嫌うと同時に、安全保障システムのために追加料金を支払うことに不満を持っています。


試算によれば、TSAは1人の死亡を防止するために6億6700万ドル(約770億円)を費やしているとされ、人命を守るために相当な費用が費やされています。


ベン・グリオン国際空港は搭乗までに非常に時間がかかるため、乗客はフライトの3時間前に到着していなければならないとのこと。安全保障には費用も時間もかかり、あまりに支払うコストが高くなりすぎると、航空機を使う意欲の減退にもつながりかねません。


空港のセキュリティシステムは、しっかり働くほど人命を救ったという事実が観測不能になるため、正確にどの程度効果を発揮しているのかわかりにくい部分があります。


各国の搭乗前審査システムは、厳格なセキュリティと迅速な処理の両立に頭を悩ませているのです。

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