レビュー

ヒトの細胞を3Dモデルで自由に動かして本物の「細胞の世界」を見ることができる画期的ツール「Allen Integrated Cell」


細胞の構造はどうなっているのかという疑問に対し、「一番外側に細胞膜があって、その中に細胞質があって、あとはミトコンドリア細胞核があって……」と、教科書にのっている内容を想像する人も多いはず。しかし、このような説明は「生物学の出発点としてはすばらしいが、実際の世界とは違う」ということで、細胞を3Dモデルにして、言葉ではなくイメージで一発で細胞の構造を理解できるようにしたプロジェクトが、「Allen Integrated Cell」です。

Allen Integrated Cell - Allen Cell Explorer
http://www.allencell.org/allen-integrated-cell.html

研究者たちがなぜAllen Integrated Cellを作り出したのかを説明したムービーは、以下から見ることができます。

Allen Integrated Cell: A new way to see inside live human cells


「人々にとって、細胞とは円の中にさらに円があり、中心の円の外側にさまざまな組織が浮遊しているイメージでしょう。これは、高校生物の教科書にのっているイメージから来たものです」と語るのは、アレン細胞学研究所のGreg Johnson氏。


同じくアレン細胞学研究所のRick Horwitz主任研究員は、「人々にとって、細胞のイメージすべては『生物学の教科書で見たもの』に過ぎないのです」と述べました。


「それは生物学の出発点としては素晴らしいものかもしれませんが、実際の世界とは違います」


「実物の細胞を詳細に見ることができたら、すべての組織がどのように連携しているのかがわかります」と、Graham Johnson氏は語ります。


Graham氏によれば、「その体験は、人々の精神に大きな変化をもたらすもの」だそうです。


人々は自分たちの体を動かしている細胞について、もっと知るべきだとアレン細胞学研究所の研究者らは考えています。


研究者のMolly Maleckar氏は、「細胞生物学を本当に理解することは重要です」と述べました。


Allen Integrated Cellは細胞内の多くの構成要素を同時に観察することができる、初めての試みであるとのこと。


アレン細胞学研究所の研究者たちは、数万もの細胞から得られた膨大なデータをもとに……


細胞の3Dモデルを構築しました。


Allen Integrated Cellのページからは、3Dで細胞を自由に動かしながら見ることが可能。専門家でも直接観察が不可能な細胞の構造を、機械学習で訓練したモデルで表示するそうです。


Allen Integrated Cellは、多くの研究者たちにとっても驚くべきものでした。


カリフォルニア工科大学のMichael Elowitz氏は、「タンパク質構造をなんの標識もなしに見ることができるこのアイデアは、実に素晴らしいものです」と語りました。


「細胞内にあるさまざまな組織を統合的に見ることは、これまでにできなかったことです」


Greg氏は、「Allen Integrated Cellのプロジェクトは、細胞学を民主化するためのツールだといえます」と述べています。


Allen Integrated Cellは基本的に無料で使用することができ、誰もが細胞学の世界に足を踏み入れることができるとのこと。


Rick氏は、「私にとって、これは魔法のようなものです」と語り、Allen Integrated Cellの素晴らしさを強調しました。


Allen Integrated Cellは、公式サイトからアクセス可能。実際に公式サイトで3Dモデルを触ってみることにします。

Allen Integrated Cell - Allen Cell Explorer
http://www.allencell.org/allen-integrated-cell.html


公式サイトのトップページを下部へスクロールしていくと、「Open Viewer」というボタンがあるのでクリック。


すると、Allen Integrated Cellのビューワーが開きます。Allen Integrated Cellで見られる細胞は人工多能性幹細胞(iPS細胞)です。上部の「PROBABILISTIC MODEL」は細胞内のタンパク質に標識を付けて、それぞれのタンパク質を色分けしたモデルになっており……


「LABEL FREE」は透過光画像によりタンパク質の3次元位置を測定したモデルになっているとのこと。それぞれ「実際にタンパク質が存在している場所」を示しているわけではなく、「確率的にタンパク質が存在していると思われる場所」をAIが予測した3Dモデルを表示するそうです。


画面上部には細胞内の特定のタンパク質にのみ標識を付けた3Dモデルが表示されており、好きなタンパク質に標識がついた細胞を選ぶことができます。細胞名は「AICS(Allen Integrated Cell Science)-『特定の番号』」という記号で分類されており、番号から標識されたタンパク質を知るためには、アレン細胞学研究所の細胞カタログを見る必要があります。AICS-11はTom20というタンパク質に標識が付けられた細胞の3Dモデルであり、Tom20が存在する場所は赤く示されています。


ビューワーの左側からは、細胞内に表示するタンパク質を自由に追加することができます。αアクチニンを表示させてみると、3Dモデルに黄色でαアクチニンが表示されました。


3Dモデルはカーソルでドラッグして、簡単に動かすことが可能。


詳しい生物学的知識がない人でも、適当に色をつけてくるくるとモデルを回転させているだけで楽しめる3Dビューワーになっていました。

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