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なぜ映画「ダークナイト」に登場する「ジョーカー」は魅力的な敵なのか?


映画「ダークナイト」に登場する「ジョーカー」は、主人公のバットマンを苦しめる敵でありながら非常に人気のあるキャラクターです。いったいなぜジョーカーは人々を引きつける、「魅力的な敵」となっているのかについて解説したムービーが、YouTubeで公開されています。

The Dark Knight — Creating the Ultimate Antagonist


ダークナイトは興行的にも大変な成功を収めた名作であり、バットマンの敵であるジョーカーが作品の大きな魅力の一つになっていることは間違いありません。


「こんばんは、皆さん!」とあいさつをしながら、銃を放って一瞬でパーティー会場を掌握するジョーカー。


ダークナイトにおいてジョーカーは魅力的な敵として描かれていますが、全ての作品が敵を魅力たっぷりに描くことに成功しているわけではありません。


では、ダークナイトにおけるジョーカーの特別なポイントとはなんでしょう?


ジョーカー役を演じたヒース・レジャーの功績も大きいことは間違いないですが、他にも「魅力的な敵」を描く時に重要なポイントを、ジョーカーは満たしているとのこと。


まず1つは、「ヒーローの大きな弱点を突くことがうまい」という点です。


魅力的な敵とは、強力でなければなりません。敵が強ければ強いほど主人公たちは苦しい戦いを強いられ、物語に説得力が増します。


単に正攻法で敵が強いというだけでなく、ヒーローの弱点を突くことができればさらに強敵のイメージが強くなります。その点、ジョーカーは的確にバットマン最大の弱点を突いてきます。


バットマン最大の強みは、その肉体的な強さにありますが……


ジョーカーはバットマンがいくら強くても、それを無効化する状況を作り出します。作中でジョーカーはヒロインのレイチェルと親友のハービーを誘拐したことで、バットマンの弱さを引き出します。


レイチェルとハービーの危機を知り激高するバットマンに対し、「お前がいくら強かろうが、私を脅かすものは何もない!」と笑うジョーカー。


ジョーカーは自分の死を恐れることがなく……


バットマンは人を殺さないというルールを自分に課しています。


バットマンはジョーカーを殺すことができませんが、ジョーカーは次々に人々を殺していきます。ジョーカーはバットマンの持つ倫理観すら、弱点として突いてくるのです。


ジョーカーを止める唯一の方法は、ジョーカーを殺すこと。しかし、バットマンにはそれができません。


2つめのポイントは、「主人公にプレッシャーをかけて厳しい選択を迫る」という点。


敵側勢力が主人公にプレッシャーをかけ、難しい選択をするように強制することで、主人公の本質が明らかになります。


ダークナイト中でも、ジョーカーはレイチェルを突き落とし、バットマンに自分を倒す代わりにレイチェルを救助させるなど、随所でバットマンにプレッシャーをかけていきます。


直接バットマンに語りかけ、プレッシャーをかけるパフォーマンスもジョーカーは取ってきます。


バットマンはジョーカーに徹底的に対抗し、正義は悪に屈しないという姿を観客に見せますが……


ジョーカーは常にバットマンの一歩先を行き、殺人は止まることがありません。


デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」という映画でも、敵が常に主人公たちの一歩先を行きます。


主人公たちは敵の痕跡を追跡しますが、主人公たちが手にする解決への糸口でさえも、敵が仕掛けるゲームの一部でしかないのです。


ダークナイトでは次々に人が殺され、舞台となるゴッサム・シティ全体がバットマンに対する圧力を増やしていきます。


また、ジョーカーはレイチェルとハービーを一度に誘拐し、それぞれ別の場所に監禁。


どちらを先に助けるかの選択を迫られたバットマンは、レイチェルを助けることを選択します。ここでもジョーカーは厳しい状況にバットマンを追い詰め、バットマンの本質を暴き出すような苦しい選択を取らせてきます。


バットマンはジョーカーとの戦いを通し、本当の自分を見つめ直すことを強制されるのです。


「魅力的な敵」に必要な3つ目の点は、「主人公と同じゴールに向かって競い合う」ことです。


もしかすると、ダークナイトの中では圧倒的な敵として描かれているジョーカーも……


他の物語においては、敵とは断言できない位置づけになるかもしれません。


一見するとバットマンとジョーカーは全く別の目的に向かっているように見えるかもしれませんが……


「理想とするゴッサム・シティを実現する」という同じ目的を抱いています。


バットマンが理想とするのは、法と秩序に守られた、犯罪のないゴッサム・シティであり……


ジョーカーが目指すのは、全てがカオスに包まれたゴッサム・シティ。


どちらもゴッサム・シティを巡っての戦いを繰り広げており、勝者は2人のうちどちらか一方に限られるのです。


どちらもある程度限定された範囲で、目的を競っているという点は物語の面白さを増すためにも非常に重要。フィナーレでは数百人がのったフェリーが人質となりますが……


これは決して「世界滅亡の危機」というわけではありません。


映画に慣れた観客は、「世界が滅亡してしまっては続編が作れないから、さすがに世界が滅亡することはないだろう」とメタレベルで予想してしまいます。


しかし、フェリーが爆破されるのかどうかという程度になると、「次回作をより緊迫したものにするために、ひょっとしたら爆破されてしまうかも」という考えになり、観客にも物語の先が読みにくくなります。


彼らはあくまで「ゴッサム・シティを巡る戦い」を繰り広げているのであり、人類滅亡をかけて戦っているわけではないのです。


では、ここまでしてジョーカーがバットマンを追い詰めることには、どんな大きな意味があるのでしょうか?


物語を通して、バットマンはある教訓を学ばなければならないと示唆されます。当初、バットマンは「全ての悪はお金などの利益を求めて悪事を働く、理性的な存在」だと考えていましたが……


結果的にジョーカーのような、論理的な行動を取らない存在がいることに気づきます。


さらにバットマンは、敵を過小評価しないことや、強さは弱点にもなり得るということも学びます。


バットマンはダークナイトの物語を通じて、ジョーカーによって成長していくのです。


ダークナイトの中で、バットマンは自らが極限の選択を取れる存在になったことを自覚し……


ダークナイトとなります


魅力的な敵とは、主人公とある意味密接な存在でありながら全く反対の性質を持つ……


コインの裏表のような関係なのです。


ジョーカーは時に支離滅裂な行動を取り、決して圧倒的な能力を持った敵ではありません。


しかし、バットマンにとっては唯一無二と言える、最も手強い敵なのです。

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