サイエンス

宇宙旅行や火星移住を考える人はジムで体を鍛えるのが必須になる

by santita.ngo

NASAだけでなく、イーロン・マスク氏のSpaceXやジェフ・ベソス氏のBlue Originなど多くの民間企業が宇宙旅行や火星移住についての計画を進めていますが、「宇宙旅行の最中にジムで体を鍛えることが必須である」ということを示す、運動嫌いにとってはつらい研究結果が発表されました。

PlanHab*: hypoxia does not worsen the impairment of skeletal muscle oxidative function induced by bed rest alone - Salvadego - - The Journal of Physiology - Wiley Online Library
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/JP275605

Take note Elon Musk and Jeff Bezos: Your spaceships will need exercise gyms — Quartz
https://qz.com/1255710/take-note-elon-musk-and-jeff-bezos-your-spaceships-will-need-exercise-gyms/

重力が小さい宇宙環境では筋肉が衰え萎縮することで、心疾患系や呼吸器系に悪影響を与える可能性がこれまでの研究で示されています。一方で、筋肉に悪影響を与える要素には、低重力だけでなく、「低酸素」という要素もあります。ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを生み出すため、筋肉が機能するには十分な酸素も必要になるためです。


そこで、低酸素状態が筋肉に対する影響を観察するため、イタリアのウーディネ大学の研究者らはスロヴェニアにあるオリンピック・センターで、健康な21歳の男性11人に対し、21日間にわたってベッドで過ごしてもらうという実験を行いました。このセンターには、ビルの1フロア全体を高山と同じ状態にすることができる設備が整えられており、1つのセッションでは酸素が豊富な標高の低い状態を再現し、もう一方では酸素の薄い標高の高い状態を再現したとのこと。いずれのセッションにおいても被験者は膝伸展運動を行うように指示され、研究者らは被験者の体でどのようにエネルギーが生み出され、消費されるのかを観察しました。

その結果、低酸素状況にあった被験者は呼吸器に問題が生じるサインが見られたものの、実際に機能障害に陥るところまではいかなかったとのこと。研究者らは、エクササイズによって血流が増加したことで、ダメージを大きくする問題を回避できたのではないかと見ています。これまでは「低重力による筋肉の非活性化」と「低酸素」の両方が筋肉に悪影響を与えると考えられていましたが、この研究によって「低重力による筋肉の非活性化」の方がより大きな影響を与えることが示されたわけです。

今回の実験は予備的なもので、結論を出すにはさらになる研究が必要ではあるものの、宇宙旅行や火星移住を考えるNASAや民間企業は、旅行者にエクササイズの機会を提供するような、より運動を促進する施設デザインも考える必要がでてきたことが示されています。

by bruce mars

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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