サイエンス

ナノテクで合皮を撥水加工して暑い日でも生地が粘着しない技術を研究者らが開発

by Takashi .M

はすの葉からインスピレーションを受けて開発したという「ナノテクノロジーを利用して合皮を耐水・耐油加工にする技術」をオハイオ州立大学の研究者らが発表しました。合皮はプラスチックを利用しているため熱に弱く、浸透性がありますが、この技術を利用すれば衣服や家具、車のシートなどさまざまなものを耐水・耐油・耐熱にできます。

​A better fake leather, inspired by plants | The Ohio State University
https://news.osu.edu/news/2018/04/23/a-better-fake-leather-inspired-by-plants

はすは泥の多い池や沼に生息しますが、葉や花はきれいに保たれることから、ヒンドゥー教では純粋さや善性の象徴とされてきました。これは、はすが天然の自浄機能を有しているため。はすの葉は表面の微細構造が持つ特性により、表面についた水が水滴のように丸まり、泥や異物、小さな昆虫などを絡め取りながら転がり落ちるという性質を持ちます。これは「ロータス効果」として知られており、ナノテクノロジーの分野で利用されてきました。日常的に見られるものとしては、ヨーグルトなどのカップのフタにロータス効果を利用することで、フタの裏にヨーグルトがつきにくくした例などが存在します。


journal Colloids and Surfacesに発表された内容によると、研究者らはロータス効果を利用してプラスチックベースの合皮を加工し、油と水の両方が表面から転がり落ちるようにすることに成功したとのこと。表面の温度が70度に達するまで他の素材とくっつくことがないので、車に乗った時にズボンがシートにくっついて不快な思いをすることもありません。

研究を行ったオハイオ州立大学の機械工学者であるBharat Bhushan氏は「今日において、合皮は扱いやすく安価だとして市場での人気が高まっています。私たちが知る限り、水だけではなく油をもはじく液体非親和性を持った合皮を作り出したのは、今回の研究が初めてです」と語りました。


多くの合皮は布地をポリウレタンやポリ塩化ビニルのような素材でコーティングされたもの。本革も合皮も、いくらか浸透性があるという点は共通していますが、本革と異なり合皮に使われているプラスチックは熱で表面が柔らかくなるため、温度が高くなると表面がべたつくという性質を持っています。

研究者らはシリカナノ粒子を合皮の表面にスプレーし、はすの葉と同じようなデコボコを再現しようとしていました。しかし、実験してみたところ、プラスチックをプラスチックたらしめるための可塑剤は、ナノ粒子を接着しないことが判明。そこで、研究者らが、コンピューターのチップ製造で行うように紫外線をあててみたところ、ナノ粒子を合皮と接着させることに成功したそうです。仕上げとしてシリコン樹脂で密封されたナノ粒子は外からほとんど見えず、見た目は通常の合皮となんら変わらないとのこと。

開発した合皮がどのように水や油をはじくのかをテストする様子は、以下のムービーから見ることができます。

Self Cleaning Synthetic Leather - YouTube


以下の画像の上段が未加工の合皮、下段が加工済みの合皮。未加工の合皮は2度の傾斜を付けても生地の上に水滴がとどまり続けているのに対し、加工済みの合皮の場合は水滴がころころと転がっているのがわかります。


油の場合はこんな感じ。これも上段が未加工で、下段が加工済みのもの。油の場合は4度の傾斜で転がり落ちることが示されました。


また、サファイアのビーズで加工後の合皮を前後に100回引っ掻きみぞを作ったところ、7度の傾斜を必要とするようにはなりましたが、それでも滴は転がり落ちたとのこと。これにより、例え合皮が摩耗しても撥水性が失われないことが示されました。合皮の上を滑り落ちた滴がみぞに入ってしまった時は滑り落とすのに44度の傾斜を必要としましたが、未加工の合皮の場合は90度を必要とするところなので、その差は大きいといえます。

さらに、黒色炭化けい素粉を加工済みの合皮にふりかけ、1粒の水滴でどれほど洗い流せるかを調査したところ、未加工の合皮が粉のうち10%を除去したのに比べて加工済みの合皮は90%を除去することに成功したとのことです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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