1万年後の人類に核廃棄物の危険性を伝えるために「猫」を利用するなどアイデアいろいろ

by Pretty in Mad

高レベルの放射性廃棄物を地層処分する施設は世界各国に存在しますが、これらの廃棄物は数万年以上にわたって地下で保管し続ける必要があるという問題点を抱えています。1万年後の人類に言葉でメッセージを伝えるのは難しいことから、施設の危険性を「シンボル」「4コママンガ」「建築物」「遺伝子操作で色を変えた猫」を使って伝えていくというアイデアが示されています。

Ten Thousand Years - 99% Invisible
https://99percentinvisible.org/episode/ten-thousand-years/

アメリカ・ニューメキシコ州に存在する核廃棄物隔離試験施設(WIPP)は核兵器の研究開発によって発生した核廃棄物を恒久的に処分するためのアメリカ最初の地層処分施設です。WIPPは核兵器製造において生じる核汚泥だけでなく、手袋や工具など、放射性物質と接触した日用品が廃棄される場所でもあります。


地面に埋められたグローブや工具といった廃棄物は放射性を持ちますが、20万年かけて無害化されていきます。しかし、いつの日かWIPPが人々から忘れ去られ放置されるようになると、WIPPについて情報を持たない人々がやってきて核廃棄物が埋められた地面の上に文化を築き、その文化が消え去っていき……ということが繰り返されるはず。潜在的に危険な廃棄場が、その存在の意味を忘れ去れてしまうということには、大きな危険が伴います。

2014年においても、WIPPから放射性物質が漏れて複数のスタッフが放射能にさらされており、原因は「ネコ用トイレの砂」であったことがのちの調査で判明しています。

核廃棄物処理場で起きた爆発事故の原因は「ネコ用トイレの砂」であったことが1年以上にわたる徹底調査の末に判明 - GIGAZINE


上記のような事故が発生したとして、私たちがその情報を知ることができるのは、言語を共有しているためです。しかし、1万年後の人々にどのようにしてこの問題を伝えていくのか?という問題が残されています。

1万年という年月は途方もないものです。今から1万年前、地球上に広まった新しいテクノロジーは「農業」でした。当時の人々が現代の生活を予測するのが困難であることからわかるように、今から1万年後に何が起こるのかを私たちが予測することはほぼ不可能です。

このことから、WIPPの情報を未来へと伝え続けるためには「言語」ではなく「シンボル」を用いることが考えられています。笑顔の顔文字が言語を超えて人々にメッセージを伝えるように、シンボルは言語より普遍的なものであると考えられました。実際に、警告を示す顔文字は子どもに毒物であることを示すマーク「Mr. Yuk」で使われています。

Mr. Yuk Commercial - YouTube


「核の冬」などの持論で知られるカール・セーガン氏は、ドクロや十字架といったシンボルを用いることでWIPPが有する問題は解決すると主張しました。しかし、シンボルもまた時間の経過と共に意味合いを変化させていきます。近年は「死」を示すと見なされるドクロや十字架は、使用されるようになった当初は「再生」という意味合いを持っていました。以下のイラストでも、キリストがはりつけにされた十字架の下にドクロと十字に交差された骨が描かれています。


しかし、数世紀後、船乗りたちは海で死んだ船乗りの名前を航海日誌に書く時に、隣にドクロと交差させた骨を書くようになります。船乗りたちは、ドクロや十字といったシンボルを「死」と関連させるようになりました。

さらに1世紀後、海賊たちは人々をおびえさせ服従させるためにドクロと骨のシンボルが使えるということに気づきました。海賊旗には砂時計・血を流す心臓なども使用され、黒髭として知られるエドワード・ティーチはその両方を海賊旗に使ったことで知られています。

by Fred the Oyster

1720年に海賊ジョン・ラカムが捕らえられ裁判にかけられると、骨の代わりに剣を交差させたラカムの海賊旗は「危険」のシンボルとして見なされるようになり、1800年代までにはドクロが「毒」を示すものとして使われるようになります。そして1940年には、ナチスが親衛隊のシンボルとしてドクロを採用します。

by Open Clip Art Library

ドクロマークが示す意味合いが変化していったのは、海賊旗をデザインのモチーフとして使っているリュックや子ども服を見ても「危険」と考える人がいないことでもわかります。つまり、シンボルもまた言語と同様に普遍的であるとはいえないのです。

そこで、放射性物質の危険を示すために、言語やシンボルを使わず「視覚的な物語」を使うというアイデアもあります。

以下が「放射性物質に触って苦しむ人」を伝える物語。ただし、このような物語は「上から下に読む」という前提で成り立っており、別の文化的背景を持つ人が下から上に読んだ場合には「若返りの泉」の存在を示すようにも取ることができる、と指摘されています。


また、「メッセージを未来に送り届けることが重要なのだ」と考えた建築家は、危険な場所に人々をおびえさせるものを設置するという方法を提案しています。以下のようにトゲのような巨大な建造物を設置するというアイデアを示していますが、これでは「調査を行おう」と考える人を逆に呼び寄せてしまうのでは?ともみられています。


一方、哲学者のフランソワーズ・バスティード氏とパオロ・ファブリ氏は、人類が生み出した最も耐久性があるものは「宗教」や「信仰」だと考えました。宗教や信仰は形を変えつつも核となるメッセージを何百年にもわたって伝えていっています。そこで2人は猫の毛を遺伝子操作で「放射能」を示す色に変え、信仰を作りだし、歌を作り、「放射能猫」の物語を伝えていくことを提案。ただし猫の色を遺伝子操作で変えるという行為はあまりにも倫理に反するという指摘はもちろん存在します。

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in サイエンス, Posted by logq_fa