野生化した100万頭を超えるラクダに苦慮するオーストラリアの知られざる歴史とは?

by Corey Butler

ラクダと聞けば中東や北アフリカの砂漠地帯を歩き回っているイメージが強いかもしれませんが、トラベルライターのベン・リーウェルさんはオーストラリアを旅行している最中、意外にも野生のラクダに出会ったそうです。実はオーストラリアとラクダには古くからつながりがありましたが、現在では野生のラクダがオーストラリアでは問題になっています。

BBC - Travel - The strange story of Australia’s wild camel
http://www.bbc.com/travel/story/20180410-the-strange-story-of-australias-wild-camel

オーストラリアの内陸部を車で旅行している最中、リーウェルさんはオーストラリアならではの野生動物に出会うことを期待していたとのこと。ほとんどの時間はただ広大で何もない平野を車で走るだけの旅路だったそうですが、時たまオーストラリアならではの動物として名高いカンガルーが現れたり、遠くの空にオオイヌワシが飛んでいるのが見えたり、ディンゴが寝そべっているところに遭遇したりしたそうです。

リーウェルさんが旅していた、オーストラリア内陸部に広がる砂漠を中心とした広大な人口希薄地域を「アウトバック」と呼びますが、ある日リーウェルさんは野生のラクダを平野で見かけました。その時は野生のラクダがオーストラリアにいるとは知らず、見間違いかとリーウェルさんは考えていたとのこと。ところが、夕方になってインターネットを使って調べてみると、意外なことにアウトバックはラクダが大量に生息している場所であるとリーウェルさんは知りました。オーストラリア政府が支援する外来種監視サイトFeral Scanによると、アウトバックに生息しているラクダの数は100万~120万頭であり、8~9年で2倍に増えると予測されています。

リーウェルさんは「そんなにアウトバックにラクダがいるなら、アウトバックの高速道路はラクダで行列ができてないとおかしいのでは?」と考えたとのこと。しかし最大の疑問は、なぜオーストラリアから遠く離れた砂漠地帯に住むラクダが、アウトバックで大量に繁殖しているのかということです。

by Phillip Capper

「アウトバックは非常に広大な場所だということを理解する必要があります。面積にしておよそ600万平方キロメートルを超える、インドの国土を2倍したのと同じくらいの地域が砂漠を中心とした平野になっていて、水平線が延々と続きます」とリーウェルさんは述べており、オーストラリア内陸部があまりにも広大な乾燥地帯であった点が、オーストラリアに野生のラクダが繁殖する重要な要素だったとしています。

オーストラリアは18世紀後半からイギリスによる植民地化が進みましたが、内陸部の広大な地域はあまりにも過酷であり、時には罪人たちに科せられる罰として内陸探検が行われることもありました。当時の人々は少しずつ居留地を築き上げ、内陸部の交通網を確立しましたが、乾いた土地での長距離輸送に耐えうる輸送方法として選ばれたのがラクダだったのです。1870年~1920年の間にアラビア半島やインド、アフガニスタンなどから2万頭ものラクダがオーストラリアに輸入され、2000人以上のラクダ乗りが移住してきたとのこと。

ラクダたちがアウトバックの気候にとてもよく適応できたため、何十年もの間にわたってオーストラリアの社会にとって重要な輸送手段となり、経済発展に寄与しました。ラクダたちが運んだものは綿や水、電柱や鉄道の枕木に使う木材、紅茶やタバコなど多岐にわたりましたが、1930年代になって鉄道網や自動車が発達するにつれてラクダは効率の悪い輸送法になってしまったそうです。

by chiaralily

不要となった多くのラクダたちは野生に放されてしまいましたが、ラクダはアウトバックの気候で生き残るために必要な要素を完璧に備えていたため、みるみる内に繁殖していきました。ラクダ自体はおとなしい性格の動物ですが、しばしば水を求めて水道管を破壊したり、放牧地帯の草を根こそぎ食べてしまったりして問題となっているとのこと。探検家のサイモン・リーブ氏はオーストラリアのラクダについて、「短期的に見ればラクダの輸入は天才的な問題解決法でしたが、長期的に見れば災害そのものです」と述べています。

増えすぎた野生のラクダに対処するため、オーストラリア政府は野生のラクダ駆除に力を入れており、2009年以降だけで16万頭を駆除したと発表しています。一方でラクダのことをポジティブに受け入れているオーストラリア人も多く、例えばSummer Land Camelsという農場では550頭ものラクダを飼育して、栄養が豊富に含まれているラクダのミルクを使った乳製品を生産しています。

by Fraser Mummery

リーウェルさんはアウトバックでの旅路でたった1頭のラクダとしか出会わなかったため、100万頭を超えるラクダがアウトバックに生息しているという事実に、大変驚いているとのこと。「あまりにも広大な規模を持つオーストラリアの平野部では、100万頭のラクダがいたとしても巡り会う可能性は非常に低いのだろう」とリーウェルさんは述べています。

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