漢字の「とめ」「はね」で気にしなければならない注意すべき例外


私たち日本人の生活にとって漢字はなくてはならない存在で、毎日、とても多くの漢字が目に飛び込んできます。そのため、小学校の段階から多くの漢字を覚えていきます。

こんにちは、自転車で世界一周をした周藤卓也@チャリダーマンです。中国語圏の音楽こと「C-POP」に触れてはや10年。勉強も兼ねて今もよく聴いているのですが、未だにあまり分かりません。それでも、旅を終えた後にだいぶ漢字の「拼音(ピンイン)」を覚えました。中国語のために漢字への理解を深めると日本語のさらなる知識へと繋がります。この記事も中国語が導いてくれました。

◆骨組みが大事
小さな頃に多くの人が経験してきた漢字の書き取りテスト。「とめてない」「はねていない」「はらっていない」と些細なことを指摘されバツをもらった人も多いのではないでしょうか。しかし、漢字の字体・字形はその文字特有の骨組みが分かるのであれば誤りとはしないという原則が古くからあり、今もなお変わっておりません。しかし、現代ではPCやスマホが普及した影響もあってデジタル機器にも使われる印刷文字と手書き文字の違いが理解されにくくなっていて、印刷文字を正字とし、手書き文字における細部の違いを誤りとしてしまう風潮があります。そうした現状をふまえて、2016年2月に日本の国語教育の調査審議を行う文化庁文化審議会によって「常用漢字表の字体・字形に関する指針」という報告書が公開されました。

常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)について - 文化庁
http://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/2016022902.html

実は左右どちらでも間違いとはされない漢字。


縦画のとめはねの区別も曖昧。


こうした発表を受けて、インターネット上でも各メディアが記事にしています。

手書き漢字、「とめ」「はね」など細かい違い許容  :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG29H0Y_Z20C16A2CR0000/

漢字の「とめはねはらい」は気にしなくていいって本当?文化庁に聞いた | THE PAGE(ザ・ページ)
https://thepage.jp/detail/20160331-00000003-wordleaf

漢字の「とめ、はね」にこだわる教育は有害だ | 子どもを本当に幸せにする「親の力」 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
https://toyokeizai.net/articles/-/188728

「木」という漢字の2画目(縦画)を「はねてもいい」なんて意外でした。これはその昔、そのように指導していた時代もあったとのこと。


◆干と于(於)
では、干物や干渉の「干」という漢字の縦画も「木」と同じようにはねていいのでしょうか?


これは、「于」という異なる字が存在するので間違いとなるでしょう。


この「于」は日本では別字の「於」が一般的なようです。「~の場所で」「~について」「~に関して」という意味の書き言葉で「次の日時に於いて卒業式を実施します」「日本に於ける様々な問題」といったような使い方をしますが、一般的には漢字は使わずひらがなで表記されます。

ただ、中国語ではかなり重要な漢字のようです。簡体字の中国では「于」、繁体字の台湾では「於」を使っています。簡体字で書かれた百度百科の「日本」という項目では「于」という漢字は97回使われています。Wikipedia中国語版の「日本」という項目は簡体字、繁体字入り交ざった記述で、2018年3月30日19時50分版で「于」が112回、「於」が106回出てきました。日本語ではマイナーですが中国語ではメジャーな漢字になっています。

◆音符として
「干」にはカン、「于」にはウという音読みがあります。この音読みが音符(声符)となって意符(部首)と合わさることで別の漢字になります。

・干
肝→肝臓(カンゾウ)/訓読みは「きも」
汗→汗腺(カンセン)/訓読みは「あせ」
竿→竿燈(カントウ)/訓読みは「さお」
刊→刊行(カンコウ)
奸→奸計(カンケイ)※常用漢字外

・于
宇→宇宙(ウチュウ)
迂→迂回(ウカイ)※常用漢字外
紆→紆余曲折(ウヨキョクセツ)※常用漢字外

このように「干」を含む漢字はカン、「于」を含む漢字はウといった音読みがあります。宇が意符の「うかんむり」と音符の「于」が合わさってできた漢字だと気付いたときにはゾクッと身震いしてしまいました。こうした区分がある以上、「干」「于」を含む漢字の「とめ」「はね」はしっかりと書き分けるべきだと思います。


◆ピンイン
こうして漢字の音符を揃えてグループ化すると、中国語の漢字の発音であるピンインの習得を効率化できます。

干=gàn
肝=gān
汗=hàn
竿=gān
刊=kān
奸=jiān

于=yú 宇=yǔ 迂=yū 紆=yū
……「干」のグループと「于」のグループで重なるものはありませんが、日本語と違って干を含む漢字のピンインはぶれてますね。

今でこそ日本ではひらがな・カタカナ、中国ではアルファベットのピンインを用いて漢字の発音を表記できますが、昔はそうはいきませんでした。漢字しかない時代もありました。だからこそ、漢字には音符が必要でした。干を含むことで、肝という漢字をカンと読めるようにしました。意味を表す意符(肝の場合は部首のにくづき)と発音を表す音符を組み合わせてできた漢字を形声文字と呼びます。漢字の成り立ちの90%を占めるそうです。そのため中国語のピンインは同じ音符のある漢字を集めることでよってグループ分けできます。

日本語の漢字も理屈は同じ。でも、日本の漢字には古くから使われてきた大和言葉が訓読みににあてられます。そして、中国語由来の音読みも呉音、漢音と2通りあったりします。1つの漢字に付き読みが複数あるので、かなり意識しないとグループ分けができません。

芋は「いも」という訓読み以外に「ウ」という音読みがあるなんて中国語に触れなければ気付きもしなかったでしょう。よって芋のピンインも于のグループと同じyùとなります。


話題となった指針の意図を汲むなら宇のうかんむりの下は干であってもよさそうな気がしますが、その場合はカンという音読みになってしまうので、やはりはねた于を使うべきでしょう。実際の教育現場ではどのような運用をされているのか気になるところです。

◆おまけ
また、同じように抹消の「抹」はマツという音読みのため「未」ではなくて「末」、仕事の「仕」も志望の「志」もシという音読みのため「土」ではなく「士」といった書き分けが必要になってきます。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
Facebookページ https://www.facebook.com/chariderman/
DMM講演依頼 https://kouenirai.dmm.com/speaker/takuya-shuto/)

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