本を美しく修復する方法、中世の場合


本が破れたり物が壊れたりした時に、破損部分を「傷」と考えて捨ててしまうこともありますが、クリエイティビティを炸裂させれば「傷」が「美しさ」に生まれ変わることがあります。作家のPaul Cooperさんが中世に行われていた本の修復方法についてTwitterに投稿しており、当時の世界を垣間見ることができます。

紙が主流になる前、本の素材として使われていたのは動物の皮でした。羊皮紙と呼ばれる素材は脱毛し、水にさらした皮を木枠に強く張ることで作られますが、剥皮または脱毛工程中に傷があると木枠に張る段階で穴が空いてしまいます。穴があいた羊皮紙でも本に使われたようで、作り手たちによってクリエイティブな修復が行われました。


羊皮紙は非常に高価だったので穴が空いていたり傷がついていたりしても捨てられることはなく、安価な本の製造に回たとのこと。以下のように事務的に修復されたものもあれば……


クリエイティビティを炸裂させたものも。紫とピンクの糸で穴が修復されています。文章を書く上で穴の空いた部分は避けられていて、文字を書く前に既に穴が空いていることがわかります。


傷を利用して個性や美を生み出すという点は金継ぎと共通するところがあります。以下はヴァドステーナ修道院に収蔵された書物の1ページ。書物は14世紀に書かれたものです。糸の素材はシルクで、黒い部分は硫酸鉄とタンニンで染められていたため、もろくなっていたとのこと。


複数の色を用いて修復が行われている本もあります。


ヤコブス・デ・ウォラギネによって編集された「レゲンダ・アウレア(黄金伝説)」のコピーの1ページ。鮮やかな修復は「チューリッヒの工芸にも似ている」と記されています。


スイスの図書館に収蔵されていた1冊には、上記とはまた異なった形の修復が施されています。


修復を行われないことがかえってアートの1つになっている本も。


穴を利用して顔を表現している本。


大きすぎる穴は挿絵の1パートになっていました。


Cooperさんによると、羊皮紙の修復を行っていたのは主に女性とのこと。鮮やかに羊皮紙の修復が行われることは、テキストの普及に役立ったといいます。以下も14世紀に記された書物


本の修復方法1つから、当時の世界が垣間見られるようになっていました。

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in デザイン,   アート, Posted by logq_fa