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精巧なミニチュア階段を作り上げる謎の熟練職人集団「コンパニヨン」とは?

by Courtesy Cooper Hewitt Museum

中世から現在に至るまで、フランスには「コンパニヨン」と呼ばれる超熟練の職人集団が存在しています。謎に満ちたコンパニヨンの歴史と生活についてまとめた記事がAtlas Obscuraに掲載されています。

Marvel at Tiny, Perfect Staircases Made by a Secret Society of French Woodworkers - Atlas Obscura
https://www.atlasobscura.com/articles/compagnons-tiny-staircases-models

フランスの職人集団「コンパニヨン」には、1万2000人の職人が所属しているといわれています。コンパニヨンは木材・金属・石材・皮革・織物という5つの材料ごとのグループに分かれており、メンバー間で強い仲間意識が存在するのが特徴です。コンパニヨンの一員になりたい若者たちは、フランス各地の街にある寄宿舎に共同で宿泊し、その土地に住む熟練の職人について技術を学びます。1カ所につき約6カ月の修行を終えたら、次の場所へ移動して再び別の職人のもとについて技術を学び、次第に熟練の技術を身につけていくとのこと。コンパニヨンの一員になるためには少なくとも5年の修行が必要とされているため、コンパニヨンの一員として認められるには非常に長い道のりが要求されます。

これまでの歴史の中で、木工のコンパニヨンでは小さくて非常に精巧なミニチュアの階段が多く作られてきました。大きさはいずれも数十センチ程度しかありませんが、しっかりと自立しておりその姿は非常に優雅で繊細です。

コンパニヨンの職人たちはミニチュアの階段を作る材料として梨・黒檀・クルミ・マホガニーなどさまざまな種類の木材を使い、小さな手すりや欄干の装飾には骨や真鍮などを使いました。ミニチュアの階段は全てが手作業で彫刻され、組み合わされ、象眼などの装飾もちりばめられており、非常に豪華な作りになっているものがほとんどです。コンパニヨンの見習いたちは自分の名声を上げるために競ってこれらの精巧なミニチュア階段を製作し、時にはグループで共同して少し大きめの階段を製作し、人々の称賛を求めて街中をパレードすることもあったとのこと。


コンパニヨンの一員になったことが認められると、秘密の儀式を受けることが定められていたそうで、コンパニヨンの職人たちにはそれぞれ「ドラギニャンの賢者」「バニョレの花」といった地名と個性にちなんだニックネームが与えられました。秘密のニックネームの他に、コンパニヨンの職人たちは特定の色で染められた肩帯や長い木の杖などが与えられ、コンパニヨン間の連帯意識を非常に強いものとしていたそうです。

コンパニヨンは独自の守護聖人を持ち、コンパニヨンのメンバーだけが参加できる供宴を執り行い、葬儀の方法にも独自の伝統を持っていました。ところが、コンパニヨンの秘密主義的な傾向は、周囲の人々にしばしば疑念を抱かれる原因にもなりました。

1839年、アグリコル・パルディガー氏という元コンパニヨンの職人だった作家が著した「コンパニヨンの書」という本により、秘密とされてきたコンパニヨンの生活の一部が明らかにされました。パルディガー氏はこの本について、「この本は、ほとんど本を持たないコンパニヨンのメンバーのために書かれたものです」と語っており、「コンパニヨンの書」によってコンパニヨンへの偏見が薄れ、彼らの作品が再び正当に評価されるようになったとのこと。


現在でもコンパニヨンの人々は熟練の技術を伝え続けており、近年ではフランス国外でもさまざまなものを製作しています。たとえば1980年代にはアメリカの自由の女神像のトーチ部分を新しく製作し、1990年にはハリケーンが直撃したサウスカロライナ州でアンティーク家具の修復作業などを行いました。

コンパニヨンの制度が今でも引き継がれていることに変わりはありませんが、内情には少しずつ変化が現れ始めているとのこと。かつて、コンパニヨンになることができるのは男性に限られていましたが、2005年からは女性のコンパニヨンを受け入れるようになりました。また、コンパニヨンの国際化も進んでおり、現在ではドイツとポーランドで修行を積むこともできるそうです。

いくつかの変化がみられるコンパニヨンの制度ですが、彼らの仕事に対する情熱と献身的な姿勢に変わりはありません。「栄光は仕事にあり、怠惰を軽蔑する」という言葉が、19世紀にコンパニヨンとなった人物へ送られた証書に書かれていましたが、21世紀の現在でも、コンパニヨンには同じ精神が受け継がれています。

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