サイエンス

オーロラのような新種の発光現象「スティーブ」がアマチュア天文家によって発見される


日本ではなかなか見ることはできませんが、極圏を中心とした高緯度地域でさまざまな条件がそろった時に光の帯が夜空に広がる「オーロラ」と呼ばれる現象は、幻想的さゆえに天体写真の対象として人気があります。このオーロラと同じく夜空に瞬く謎の発光現象「スティーブ」が、2015~2016年頃からアマチュア天文家の間で観測されていたことが、NASA(アメリカ航空宇宙局)によって発表されました。

Mystery of Purple Lights in Sky Solved With Citizen Scientists' Help | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2018/mystery-of-purple-lights-in-sky-solved-with-help-from-citizen-scientists


カナダのレジーナに住むITエンジニアのノタニー・ブラッサさんは、2016年7月25日に夜空を見上げるとオーロラが出ていることに気づきました。ブラッサさんはあわててカメラを取りに行き、オーロラを撮影しましたが、薄紫色の光のリボンという普段と違う姿に気づきました。10代の頃から30年以上もカメラでオーロラを撮影してきたブラッサさんでしたが、自分が見ている薄紫色の光は今まで見たオーロラとは何かが違うと気づいたとのこと。


この謎の光を目撃したという報告は、ブラッサさん以外にも30人ほど行っていました。NASAと国立科学財団が後援を務めるアマチュア科学者によるオーロラ観測&追跡プロジェクト「オーロラサウルス」でも、オーロラに混じる不思議な紫色の光が話題となっていて、参加者の間では、2006年に公開されたCGアニメにちなんで「スティーブ」(Steve)と呼ばれていました。

アマチュア科学者たちは、オーロラサウルスを通じてNASAに連絡を取り、宇宙物理学者のエリザベス・マクドナルドさんに「スティーブ」の写真を送りました。マクドナルドさんは30以上の報告を見て、「スティーブ」が普通のオーロラとは違うものだということに気がつきました。しかし、他の科学者と相談しても、この現象の正体が一体何なのかは分からなかったとのこと。

太陽からは「太陽風」と呼ばれる荷電粒子のガスが地球に吹き付けています。地球の磁気の関係で高緯度にたまった荷電粒子が、大気中の分子と衝突し、発光することによって発生する現象がオーロラです。カーテンのように幅広い光の帯が特徴的で、色は緑や白、赤などさまざまです。


一方、「スティーブ」は非常に細い紫色の光のリボンが特徴です。さらに、紫色の光に重なるように、緑色の光の筋が数本流れる様子も確認されています。夜空を彩る発光現象という点では「スティーブ」とオーロラは同じように見えますが、姿や動きは全く違うものとなっています。

そこで、マクドナルドさんは「スティーブ」を調査するために、ESA(欧州宇宙機関)が打ち上げた地磁気観測衛星「SWARM」を利用して、宇宙からの観測を行いました。


その結果、「スティーブ」を形成する荷電粒子はオーロラのものと違う地磁気層に沿ったもので、極圏よりも比較的緯度の低い場所で発生しているということがわかりったとのこと。

さらに、「スティーブ」が「サブオーロラ帯イオンドリフト」(SAID)と呼ばれる現象と関連があるということが分かりました。SAIDは、地球の磁場や電場のとの関係で荷電粒子が東から西に高速で流れていく過程で粒子が高温になる現象ですが、SAIDが具体的にスティーブの発光現象にどのようにつながるかははっきりと分かっておらず、未知のプロセスがそこに眠っているとNASAはにらんでいます。


NASAは、この新しく発見された発光現象を「Strong Thermal Emission Velocity Enhancement」(強力な熱電子放出速度の増大)と名付けました。この名前の頭文字を並べると「STEVE」という略称になり、これは「スティーブ」を発見したアマチュア天文家たちに敬意を表したものとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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