警察がGoogleに「容疑者捜索のため」としてユーザーの位置情報を提供するよう求める

by Downing Street

2017年にノースカロライナ州ローリーの警察は、「殺人事件の容疑者逮捕に必要だ」としてGoogleにユーザーの位置情報を提供するように求めました。果たして「全くの無関係かもしれないユーザーの情報を捜査機関が入手する」ことを認めていいのか、議論が巻き起こっています。

To find suspects, Raleigh police quietly turn to Google :: WRAL.com
http://www.wral.com/Raleigh-police-search-google-location-history/17377435/

2015年1月、ローリーに住むエイドリアン・プー氏が自宅で銃殺される事件が発生しました。近隣の住民は夜明け前に銃声を複数の銃声を聞いたと証言し、太陽が昇る前で暗いプー氏の自宅周辺で、携帯電話の明かりで地面を照らしている不審な人物の姿が目撃されています。それから1年半後、同じくローリーでヌワブ・エフォビ氏というタクシー運転手が、会社の周辺で銃撃され死亡する事件も発生。事件前にエフォビ氏が男と口論する姿が監視カメラに捉えられており、事件の前に同じ男が携帯電話を耳に当てるような仕草をしながら歩く姿も、監視カメラに映っていました。

それから数カ月後の2017年3月、ローリー警察は「2つの事件同士に関連はない」としながらも、それぞれの銃殺事件に対して同じ捜査方法を採用しました。捜査チームは殺人事件が発生した周辺の衛星地図を用意し、特定の時間内に殺人事件現場周辺を通りがかった全ての携帯電話の識別情報を、Googleに開示するよう裁判所を通して命令したのです。

ローリー警察は2つの殺人事件の他にも、2017年に特定のGoogleアカウント情報を開示するようにGoogleへ要請を行ったとのことですが、2つの殺人事件に関しては「不特定多数のユーザー情報を入手した」という点が問題になっています。特定の容疑者についての情報だけではなく、犯行現場近辺に立ち入った全てのユーザーの識別情報を手に入れることを、「プライバシーの面で問題がある」と弁護士やプライバシー擁護派が指摘しています。これらの反対意見に対し、市や郡の関係者は「犯罪捜査の進展に伴ってインターネット企業に対し、捜査に協力するよう要請するのは時代の流れであり、必要なことだ。プライバシーの問題については、裁判所の捜査令状を必要とすることで、むやみにユーザー情報の開示を求めないようバランスを保っている」としています。

by Inventorchris

エルロン大学に勤める元検察官のジョナサン・ジョーンズ氏は、「私たちは人生の多くをGoogleと共有しています。しかし、Googleに情報収集を許可する際、その情報が捜査機関にも共有されることを認識して許可している人が、どれほどいるでしょうか」と、ユーザーの自覚なしで情報が捜査に利用される状況に、問題があるとしています。

現代の携帯電話やタブレットには、GPSやWi-Fi、モバイルネットワーク回線を組み合わせてデバイスの位置をマッピングする機能が組み込まれています。Googleにとってこれらの位置情報は、マップアプリなどの利用に有用であり、AndroidユーザーだけでなくGoogleが提供するアプリを利用しているだけで、Googleにユーザーの情報を収集されているのです。

GPS機能をオフにしていても、精度が落ちるもののWi-Fi接続やモバイルネットワーク回線から、携帯電話の位置情報をある程度把握することができます。また、Android端末に関しては位置情報サービスをオフにし、SIMカードを抜いた状態でも位置情報をGoogleに送信していたと判明しており、モバイル端末を持っている限りGoogleに情報が渡ることは避けられないと考えたほうがいいかもしれません。

by Eric Fischer

ローリー警察が2つの殺人事件の捜査でGoogleに要請したデータの提供は、事件現場周辺の約6万平方メートルにもわたる範囲に入ったデバイスの識別情報であり、その中にはワシントンテラスの数十に及ぶ複合施設も含まれていたとのこと。ローリー警察がGoogleに要求した位置情報データは、Android端末だけでなく、Googleアカウントの位置情報を使用したアプリがインストールされた全てのデバイスについて及んでいます。

2017年には、2つの銃殺事件の他に1つの放火事件と1つの性的暴行事件についても、ローリー警察はGoogleに対して位置情報データの提供を求めています。捜査の方法としては、まず特定の範囲内に立ち入った大量の位置情報データをGoogleから取得し、その中から絞り込んだ疑わしいGoogleアカウントについて、特定の範囲外についてもさらなる情報を要請するというもの。

ローリーの弁護士であるスティーブン・サード氏は、「このような捜査方法によるユーザー情報の取得要請は、これまでになかったものです。ローリー警察が得た捜査令状は、十分な根拠に基づいて入手したものとは言いがたい」と苦言を呈しています。

by Carlos Luna

ジョーンズ氏はローリー警察が捜査令状を取得した事件について、少なくとも放火事件と性的暴行事件については、犯人が携帯電話を持っていたという証言は出ていないとしています。「これは犯行に関与しているかどうか関係なしに、近辺を通過した携帯電話を持っている人間の中から、魚釣りと同じ程度の確かさで犯人探しをしているにすぎない」とジョーンズ氏は述べています。

電子フロンティア財団に所属する弁護士であるステファニー・ラカンブラ氏は、「犯罪者は人間であり、ほとんどの人間が携帯電話を持っているというだけで、プライバシーな情報を取得できてしまうことには問題がある」と語っています。一方で、捜査にGoogleの情報を活用することに賛成している弁護士のフリーマン氏は、法執行機関がプライバシー問題に敏感である必要はあるものの、Googleのビッグデータを活用することは捜査の自然な発達にすぎないとして反論。「コンビニエンスストアの監視カメラも、かつては『監視カメラに映るほとんどの人間はコンビニ強盗ではない』として批判を浴びていました。それと同じです」と述べました。

Googleの透明性レポートによれば、2017年前半だけでユーザー情報を要求した捜査令状が5200件も送られていて過去最高の数値を記録しており、起訴された後の裁判所命令による要求はその2倍を超えているとのこと。Googleはローリー警察の要求したデータを提供したかどうかについて言及していませんが、少なくとも5200件の捜査令状のうち、81%の要求に応じてデータを提供しています。しかし、ローリー警察からよせられた捜査令状に対してデータを提供したのかどうかについて、言及はしていません。

by Elvert Barnes

ラカンブラ氏は、ユーザー自身がプライバシー保護に敏感になる必要があるとした上で、「デジタル社会の恩恵を受けているからといって、自らのプライバシーを放棄する必要はありません」と述べています。

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