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数々の奇怪なアニメーションムービーを生み出してきた奇才「Cyriak」に迫るドキュメンタリー


猫から猫が誕生し猫を襲う猫大量発生で超現実世界をぶっ飛び体験できるムービーなど、狂気を感じさせるほどの独特な映像の数々を作り出すアニメーター・Cyriak氏を追ったドキュメンタリーがYouTubeで公開されています。2018年3月12日に公開された新作も相変わらず理解不能ですが、アイデアの源がどこにあるのか、作品がどのように作られているのかを、ムービーから垣間見ることができます。

Cyriak | Heroes of Animation with Bing


Cyriak氏は、YouTubeに投稿されたムービーが1億回以上視聴されたほどの人気を誇るフリーランスのアニメーター。最初はGIFアニメを制作していましたが、いまでは人気アーティストのミュージック・ビデオを手がけるまでになっています。


一般人とは一線を画したそのセンスが人気を呼んでいます。


英国人ミュージシャンであり、人気プロデューサーでもあるBonobo氏もミュージックビデオでCyriak氏の作品を使う1人。


Cyriak氏はアーティスティックでオシャレともいえるフラクタルな映像を作ることもあれば……


人間の頭が増殖していくグロテスクな映像や……


人体パーツから構成されるクモが歩き回るグロテスクな映像を作ることもあり、Bonobo氏も「同じ人が作っているとは思えない」とその作風の幅の広さを語っています。


ヒツジが走っていたら……


首が伸び、頭から足が生え……


分裂と増殖を繰り返し機械仕掛けのような動作も加わるという「クレイジー」としか言えない映像も。


アニメーターの成功に迫るYouTuberのBing氏がゲームセンターで出会った赤いシャツの男性が、Cyriak氏。


1998年に大学でアニメーションの学位を取得してから、イギリス・ブライトンで暮らしているというCyriak氏。卒業してからはオフィスで働く仕事に就いており、当時は特に作品を作らず、仕事に飽き飽きしつつも自由時間には好きなテレビゲームをプレイする、というような日常を送っていたそうです。しかし、インターネットやPhotoshopを使うようになって、アニメ制作の世界にカムバックを果たしました。


自分の作品で使われる音楽のインスピレーションは、当時のゲームの人工的なBGMにあるといいます。


作品作りはまず映像素材を撮影することから始まり、それをコンピューターに取り込み、Adobe After Effectsを使って加工します。


サウスパークのようなカットアウト・アニメーション(切り絵のアニメーション)のようなスタイルだとのこと。


ただし作業は全てコンピューターで行われています。Cyriak氏さんは「できるだけ作業を速く終えたい」とのことで、作業の高速化のためにデジタル処理が行われているそうです。


以前は自分でイラストを描いていたそうですが、「写真を撮れば描かなくてもいい」ということに気づいてからは描いていないそうです。


アニメーションはイラストとは違い「動き」があることで、アートを発展させることができるとCyriak氏。アニメを制作している時には「作品が自分で動き出し、自分は完成させるための手助けをしている」と感じるそうです。


Cyriak氏がAdobe After Effectsを使って初めて完成させたプロジェクトが「BeastEnders」で、この作品はBBCのコンペティションでファイナリストに選ばれました。


BeastEndersはロンドンのある街で……


人間が奇妙な変異を繰り返していくというものでした。


続いて、2人が訪れたのはイギリス・ブライトンにある自然史博物館「Booth Museum」


Cyriak氏は10代のころ、Booth Museumによく来ていたそうです。


Booth Museumではさまざまな生と死を見ることができ、Cyriak氏はたくさんのインスピレーションを得たといいます。また、これらの生き物は実際に作品の素材になることも。


「動物って奇妙に変形した人間に見える」とCyriak氏は語ります。


「動物たちは『生きるアニメキャラクター』で、陽気で悲劇的なストーリーの中で暮らしています。彼らは毛むくじゃらのまぬけで、私たちが彼らを食べるまで、草原の中で1日中草を食べているんです。それがすごく面白くて」


また、作中にしばしば猫も登場させるCyriak氏。


博物館には奇形の動物も保存されており、「自然の多様性って僕が作るアニメよりずっと奇妙だ」とCyriak氏。


自分の作品に最も影響を与えているのは、「こどもの頃に見た奇妙なアニメの数々」だとCyriak氏は語ります。当時はシュールで奇妙、時には悪夢的なアニメの数々が放映されていたとのこと。


Cyriak氏のムービーの中には生き物がしばしば登場しますが、動物を素材として使い出したのは、人間と違って許諾が不要なため。アニメ制作によってお金を稼ぐには好都合だったそうです。


ムービー制作の際に牧場に住んでいる友人から大量の写真をもらったそうですが、「どういうムービーを作るのか」は言えなかったというCyriak氏。


作品にどういうロジックがあるのかは、Cyriak氏自身でさえもすぐにはわからないといいます。


牛を題材としたムービーは他にもあり、牛が頭でリズムを取り始め……


踊ったり変異したりするムービーは、YouTubeで公開されると1週間で100万回再生を達成したとのこと。数週間後には500万回再生され、「なんでみんなこれが好きなの?」と疑問だったそうです。


実際にアニメーションを作成している様子は以下から。まずはビデオカメラでムービーを撮影します。


顔の横で両手を振るBing氏。


コンピューターに映像を取り込み……


編集作業を開始しました。まずはムービーを見て、素材として使えそうなところはどこかを見定めます。


ここだ、というとこで1部のパーツをコピー&ペースト。


キーフレームで映像を描こうする箇所を指定しながら、頭にもう1本の腕を生やします。これを、より自然に見える形で処理していくわけです。


Adobe After Effectsを使うようになって数年たった今でも、制作方法は固定しておらず、学びを続けているというCyriak氏。撮影するときも「こういう作品を作るからこれおを撮ろう」というやり方ではなく、「カメラを持っている時に歩いて時に撮影したものを、退屈な時にコンピューターに読み込んで、『なんか変なことをしてみよう』といじってみる」という形だそうです。


また、サウンドはFruityloopsというソフトウェアで作成しているとのこと。


イギリスのインディペンデント・レコードレーベル「Ninja Tune」から「bonoboのためにムービーを作ってくれ」と依頼された時は、それまでとは異なる「複数の短いムービーをモンタージュしてシュールな世界を作る」という方法がとられました。


1960年代に撮影されたこれらのムービーから……


以下のような映像を作成。いくつもレイヤーを重ねることで奇妙さだけでなく美しさが感じられる仕上がりになっています。


YouTubeでムービーを公開したとき、コメント欄の90%はCyriak氏についてで、音楽についてのコメントは10%だったといいます。


ブロック・パーティからミュージック・ビデオのオファーがあったときは、音楽や歌詞が送られてきても何もアイデアが浮かばなかったそうです。それまで作成したミュージック・ビデオは「演奏する人」に焦点を当てたものではなかったのですが、ブロック・パーティの過去のミュージック・ビデオは彼らが演奏する様子を映したものでした。


そこでCyriak氏はバンドの過去のミュージック・ビデオを再利用して、自分の作風である増殖と変異を繰り返すムービーを作成。「どのような完成形になるのかについて、頭の中にはあいまいなアイデアしかなかった」といいます。


複数のミュージック・ビデオを制作するようになったCyriak氏は、いくつもの賞を受賞しました。


しかし、最も驚いたのは、YouTubeにアップロードしたことで爆発的にヒットした「ロックな音楽に合わせて牛が頭を振るムービー」。このムービーは、さまざまな形で人が加工しており、Minecraftで再現されたり……


ムービーに合わせてダンスが行われたりしています。


「『今日の夜に何を食べるか』以上のプランはありません。この人生で何をするかとか、次は何をしたいかとか、考えたことがありません。目の前にあるものに好きにさせているだけです。過去7年間はこれでうまくいってきました。ただ目の前にある道を歩いているだけです」とCyriak氏は語りました。


なお、ムービー中で作られていた、Bing氏を題材にしたムービーがどのように完成するのかは、ムービーのラストで見ることができます。

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