デザイン

多岐に渡るインドの言語で「フォント」を提供する新しい波


2016年の国連のデータによるとインドの人口は約13億で、中国に次ぐ世界2位の人口となっています。そんなインドには、少なくとも30の言語が存在し、方言を含めると国全体で2000前後ともいわれる言語が存在しています。言語が異なると使われる文字も異なるため、これほどまでに多くの言語が存在するインドでは、ほかの国(言語)に比べて「フォント」の選択肢があまり多くないという実態があります。そんな状況を打開し、多様性を高めるための取り組みが進められています。

The New Wave of Indian Type - Library - Google Design
https://design.google/library/new-wave-indian-type-design/

コンピューターやスマートフォンが普及したことで、インドでも多くの人の間でインターネットにアクセスできる環境が広まっています。多種多様なコンテンツが提供されるようになると、次第に沸き起こってくるのが「より多才なコンテンツの表示」に対するニーズです。その対策の一つが、よりデザイン性の高いフォントを用いるという方法ですが、これは多くの言語が存在するインドではそう簡単ではないものとなります。

そんな問題に取り掛かっている一人が、インド東部のムンバイに拠点を置いて活動する書体デザイナーのGirish Dalvi氏です。Dalvi氏はインド工業大学でデザインの教授を務めながら、インドにおけるフォントデザインの充実を図る団体「Ektype」の共同設立者としても活動しています。

Ektype | Home page
https://ektype.in/


インドにおける文化や言語の多様性についてDalvi氏は、アルゼンチン人作家のJorge Luis Borges氏の言葉「インドは世界よりも大きい」を引用しながら、「インドは極めて多様性の高い国です。たった500マイル(約800km)移動するだけで、使われている言葉や文字が完全に変わり、それに併せてデザインも変化します」と述べています。

首都デリーを拠点に活動するデザイナーのSuman Bhandary氏は、インド北東部で広く使われているベンガル語で用いられる文字のフォント「Mina」をデザインしました。この文字は、ラテン系文字用のオープンソースフォントExoをベースに作られたもので、下部に記されているExoのニュアンスを残したデザイン性の高いフォントとなっています。


Minaのように、既存のフォントをもとに現地の文字用のフォントを作成する取り組みは世界中で行われており、スリランカ人の文字デザイナーTharique Azeez氏もタミール語用のフォント「Pavanam」や「Kavivanar」を作成して公開しています。Azeez氏は自分の言語に対するフォントの少なさを痛感して「どれも同じに見える」と思ったことから、より多才なフォントの開発に乗り出したとのこと。

より包括的にフォントをデザインする動きも生まれています。前述のDalvi氏が所属するEktypeは、ヒンドゥー語やグジャラート語、タミル語など複数の言語をカバーするフォントとしてMuktaを提供しています。

Muktaでは、インドでもっとも多く使われている5つの文字に対してフォントを提供しているとのこと。英語などの言語で使われるラテン文字がこれ。


インドで最も多くの人に話されるヒンディー語用のフォント。


インド西部のグジャラート州で使われているグジャラート語。線の前後にある「ハネ」が特徴的。


南インドのタミル人が使うタミル語のフォント。


インド北西部のパキスタンと接する地域で使われているパンジャーブ語で使われるグルムキー文字のフォント。グジャラート語、タミル語、パンジャーブ語は、インドの公用語とは別に定められた22の指定言語に含まれます。


これらのフォントを作成するにあたって最も難しかったのが、それぞれの文字に備わっている細部の特徴をいかに確保するかという点だったとのこと。同じように見えてしまいそうな曲線でも、その中にある空間の有無などの細部は言語によってバラバラであるため、その特長を損なわせることなく「Mukta」の一員として一貫したイメージを持たせる点が難しかったようです。

Muktaはオープンソースとして提供されているため、ここから派生する文字も生まれています。「Baloo」もそんなフォントの一つで、Muktaをベースに線の太さや終端のデザイン処理に独自性を持たせて新たな個性を加えています。


このような動きについてDalvi氏は「私たちは、文字デザインについて教わった経験はありません。これらはすべてプログラミングやハッキング、そして何かを壊す行為から生まれてきたものです」と語ります。このようにして生み出されたフォント「Mukta」ですが、その名前にも開発者の思いが込められているとのこと。Muktaは「自由」や「オープン」「解放」を意味する言葉から名づけられているそうです。

・関連記事
スマホで撮影するだけでディープラーニングのAIがフォント名を教えてくる無料アプリ「WhatTheFont」 - GIGAZINE

文字の上にカーソルを置くだけでフォント名が分かるChromeの拡張機能「WhatFont」 - GIGAZINE

言葉ではなくフォントの種類で札を見分ける「フォントかるた」で実際に遊んでみた - GIGAZINE

41種類の外国語を教える小学校 - GIGAZINE

プロフェッショナルのデザイナーがよく使う21種類のフォント - GIGAZINE

海外と比べて日本のウェブデザインが20年前から進歩していないように見えてしまう3つの理由とは? - GIGAZINE

in デザイン, Posted by logx_tm