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なぜアカデミー賞の受賞俳優には「メソッド・アクター」が多いのか?


映画のキャラクターを人格・深層心理レベルまで掘り下げて、その役に「なりきった状態」で演じるスタイルの演技法はメソッド演技法と呼ばれています。アメリカ映画で最高の栄誉とされるアカデミー賞では、このメソッド演技法の影響を受けた「メソッド・アクター」がオスカー像を手にする確率が高いのですが、何故そのような状況が生まれているのかについてVoxが解説するムービーを公開しています。

Why the Oscars love method actors - YouTube


バットマンシリーズの映画「ダークナイト」に登場した「ジョーカー」を演じたヒース・レジャーや……


石油にすべてを懸ける男を描いた映画「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で主人公を熱演したダニエル・デイ=ルイス……


そして、映画「レヴェナント: 蘇えりし者」でアメリカ西部開拓時代の罠猟師を体当たりで演じたレオナルド・ディカプリオ、この3人には共通の特徴があります。


それは、3人とも「メソッド演技法」の影響を強く受けている役者である、という共通点です。


ヒース・レジャーはジョーカーを演じるための役作りに深く没頭しました。


ダニエル・デイ=ルイスは撮影に入る1カ月も前からキャラクターの役作りに入っていたともいわれています。


そしてレオナルド・ディカプリオは、映画の中で野性のバイソンの肝臓を取り出して食べるシーンを演じるにあたって、なんと本当に生の肝臓を食べて役を演じきったことも知られています。


この3人も影響を受けたメソッド演技法は、ロシア演劇にその発端を見ることができます。


ロシアの俳優で演出家でもあったコンスタンチン・スタニスラフスキーが考案した手法が、後にメソッド演技法を生み出すことになります。


スタニスラフスキーは俳優を育成するための教育法、スタニスラフスキー・システムを構築しました。これはそれまでの演技法とは異なる要素を持つ「リアリズム演劇」を本格化させるため提唱された理論で、その背景にはフロイト心理学の影響が存在するともいわれています。


スタニスラフスキー・システムはその後アメリカに持ち込まれ、リー・ストラスバーグがこれを基にメソッド演技法を確立させました。


1951年以降のアカデミー賞で主演男優賞・主演女優賞の受賞者132人のうち、59人はメソッド演技法のトレーニングを受けています。また、そのうち33人は役作りのためにメソッド演技法を本格的に取り入れていました。


メソッド演技法がもたらすものについて、演技の専門家であるケヴィン・B・リー教授は「俳優が自分自身を前面に押し出した演技をすることと、正反対にキャラクターそのものを俳優が演じきること、その2つの間にある革命的な違いを生み出しています」と語ります。


その一例として挙げられているのが、俳優のトム・クルーズ。映画「マミー」でミイラを相手に戦うシーンや……


「オブリビオン」でモーガン・フリーマンを相手に死闘を繰り広げるシーン……


そして、「ラストサムライ」で日本にやってきた北軍の兵士、ネイサン・オールグレン大尉を演じている時であっても……


それらはほぼ例外なく「トム・クルーズが演じるキャラクター」として人々の目には映っています。


別の例として挙げられているのが、レオナルド・ディカプリオ。映画「ギルバート・グレイプ」では、ジョニー・デップ演じる主人公の弟でハンディキャップを持つキャラクターを演じきり……


「ウルフ・オブ・ウォールストリート」では、破天荒な人生を歩む主人公を演じるなど、幅の広い演技を行ってきましたが……


長らくオスカーの栄光を手にすることはありませんでした。


しかし、そんなディカプリオがついにオスカーを手に入れたのが、2015年の「レヴェナント: 蘇えりし者」でした。この映画は、ディカプリオがかつてないほど本格的な役作りを行った作品で、そこにはメソッド演技法の影響が存在しています。


このように、メソッド演技法は俳優がより深く役を演じきる時に大きな力を発揮します。これが「メソッド・アクターが多くオスカーを獲得する」という理由の一つと言えるというわけです。


しかし一方で、そこには「ビジネス」の要素がないわけではありません。アメリカの映画は「産業」であり、産業は「マーケティング」抜きには存在できません。


ダニエル・デイ=ルイスがアメリカの人気テレビタレント、オプラ・ウィンフリーの番組に登場した時、映画のプロモーションに加えて自身の演技を印象づける発言を行っています。


「声が聞こえてきたんだ。まるで、『魂の証』のような」と語るデイ=ルイスにウィンフリーは「すごいわね」と感心した様子。


俳優にとって、役作りの時につぎ込んだ努力のすべてを見せることはできません。そのため、俳優は分かりやすい形でそれを表現する必要があります。たとえば、レオナルド・ディカプリオは「レヴェナント: 蘇えりし者でバイソンの肉を食べた時のエピソードについて、「あの肉の塊を食べた時の僕の反応は……映画のスクリーンで目にする事ができるよ」と、過酷なエピソードをもとに映画の魅力をアピール。


とはいえ、これはやや皮肉っぽい見方ではあるかもしれません。実際に、メソッド演技法によってディカプリオは、映画「タイタニック」の時のロマンチックな主人公から……


激しい感情を表現する俳優へとレベルアップすることができたのです。


前述のリー氏は、「単に役者が演じているのを見るだけのものから、より深くキャラクターの内面や心情を最大限に演じるという意味において、メソッド演技法は広く用いられるようになりました」と語ります。


古くは1950年代から取り入れられてきたメソッド演技法は、これまでに数々の名作映画を生み出してきました。


それゆえに、メソッド演技法は映画界において大きな功績を残してきたと言えるのかもしれません。


ムービーの最後はなぜか、元スケート選手でライバルを襲撃したことで一躍有名になったトーニャ・ハーディングを描いた映画「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」のワンシーンという、「役作り」のハードルが高そうな光景で締めくくられていました。ただし、このトーニャを演じるマーゴット・ロビーは「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クイン役を演じた際のインタビューで「自分はメソッド・アクターではない」と発言しています。

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