サイエンス

「私たちが化石になる方法」について専門家たちがレクチャー

by Chris Bentley

化石とは、かつて生息していた生物が何らかの理由で地層に閉じ込められ、硬い組織を中心に鉱物化したもの。化石は研究者たちにとって太古の生物の姿を知る手がかりとなり、私たちに恐竜やアンモナイトの存在を教えてくれます。生物が化石となる確率は非常に低いものですが、いつか「化石になりたい」と思った時のために覚えておきたい「死んだ後化石になる方法」について、BBCがまとめています。

BBC - Future - How can I become a fossil?
http://www.bbc.com/future/story/20180215-how-does-fossilisation-happen

「全ての化石は奇跡だ」と、ノンフィクション作家のビル・ブライソン氏は著書「人類が知っていることすべての短い歴史」で述べています。1つの骨が化石化する確率は、およそ10億分の1とも言われており、記事執筆時の2018年におけるアメリカの人口約3億2000万人のうち、化石として残る骨は約60本と推定されています。人間を構成する骨の数が約200本であることを考えると、2018年時点のアメリカ全人口ですら、ヒト1人の全身骨格分の化石を残すことができないのです。

これまで地球上に存在した全生物のうち、化石になっている生物種の割合は0.1パーセント以下であると研究者たちは見積もっており、化石化したとしても人間に発見される可能性はさらに低くなっています。しかし、人間の骨格は比較的大きく、骨も硬いことからムカデやゴカイと比べればまだ化石化する望みが持てるとのこと。数人の専門家がBBCの取材に対し語った「人間が化石になる方法」は以下の通りです。

by Steven Lilley

◆1:死後すぐに埋葬されること
オックスフォード大学自然史博物館の収集員で化石学の専門家でもあるスー・ビアードマン氏は、BBCの取材に対し「結局のところ化石化するかどうかは、死後の体をどのような状態に保つかという問題です。化石になるには長い年月にわたり、体を掘り起こされたり野生生物に動かされたりしない場所に埋葬される必要があります」と述べています。地表や海底から数十センチの場所に死体が埋まっていると、死骸を食べる他の生物によって掘り起こされたり、土壌がかき混ぜられて化石化に失敗する可能性が高いとのこと。

また、死んでから長い間空気に触れる場所で放置されていると、死骸は腐ってボロボロになってしまいます。これを避けるため、死体は死んでからなるべく短い時間で、それなりの深さに埋められることが望ましいそうです。以上の条件を満たすものとして、ビアードマン氏は大噴火によって一瞬で灰の中に埋まる、もしくは大洪水で流されて一気に海底に堆積するといった、自然災害の力を借りるのもいい案だとしています。大噴火によって人間が埋まった例としてはイタリアの古代都市ポンペイなどが連想されますが、恐竜の化石が大量にまとまって発見された中にも、大洪水で一気に流されたと考えられるものがあるとのこと。

by Óli Jón

◆2:水に浸される
そして、意外にも化石化には水が欠かせない役割を持っているそうです。オーストラリアのクイーンズランド大学の化石学者カイトリン・シム氏は、「川や池の中は、化石になる絶好のポイントだ」としています。乾燥した場所で骨になると非常にもろく、壊れやすいという理由の他にも、化石化に理想的な環境は全くの無酸素状態で、死体を分解する微生物がなるべく少ないほうがいいとのこと。上手に無酸素状態を維持できれば、時折発見される羽毛を持った恐竜や内臓の組織を持った化石のように、骨以外の部分も化石として残る可能性があるそうです。

化石となるには低酸素状態になりやすい水の中で、加えてエビやカニなどの死骸を食べる生物の脅威が少ない、なるべく海底深くに埋まっているのがベスト。しかし、あまり深いと将来地表に露出して発見される可能性が低くなるため、深すぎるのも問題がある模様。

by renee

◆3:棺に入らない
土葬の習慣がある地域では、死体を棺に入れて埋葬しますが、これは化石化を妨げるおそれがあるとのこと。死体となって5万年以下の化石を「半化石」と呼びますが、あまり死体となってから年月がたっていない半化石は、ほとんどが元の組織を維持しているそうです。半化石は洞窟の中などで発見されていますが、数百万年にわたって化石として残りたい場合、骨などの硬い組織を鉱物化しなければならないとのこと。

骨を鉱物化するにはミネラルを多く含んだ水が骨に浸透し、数万年、場合によっては数百万年の期間をかけて鉄分やカルシウムと反応を起こすのが基本です。そのため、厳重な棺に入ったまま埋葬されてしまうと水の浸透を妨げ、数百万年にわたって化石として残る可能性が減ってしまう模様。

しかし、ニューサウスウェールズ大学の化石学者マイク・アーチャー氏は、「棺に死体を入れても鉱物化させる方法がある」と述べています。その方法とは、中を砂で満たしたコンクリート製の棺に死体を収納し、棺の表面に直径5ミリメートルの穴を数百個空けておくというもの。これにより水が棺の中にも浸透し、骨を鉱物化できるそうです。また、周囲に鉄分を多く含んだ鉱石を一緒に埋めておくことで、より効率的に鉄分を骨に供給するという技もあるとアーチャー氏は語っています。

by Jon Lewis

◆4:死体で埋まる場所に気をつける
以上で化石化するためにベストな埋葬方法について説明してきましたが、条件を満たしていればどこに埋まってもいいというわけではありません。化石化が成功したら地中のより深くに沈んでいき、地熱と圧力により押し固められるのとより化石の強度を増すことができますが、あまり深く沈みすぎると地熱で溶けてしまう危険性があります。これを避けるために、プレートが沈み込む地帯の周辺で死ぬことは避けるべきだそうです。BBCは例としてイランプレートがユーラシアプレートに沈み込んでいる、イランに埋まるのは避けるべきと述べています。

また、いくら化石となっても将来的に発見されなければなりません。死んでから化石化に成功した数百万年後に人類が生息しているかどうかはともかく、やがて地表に露出するような海底に埋まるのがベスト。シム氏は、「地中海はいい例です。アフリカ側から北のユーラシア大陸に向けて海底のプレートが移動しているため、将来的にヨーロッパで露出する可能性があります。他の内陸部の海もいいですが、死海はその中でもベストポジションです。高濃度の塩分は死体の保存に最適ですから」と述べています。

by Sue Langford

◆5:化石以外の方法
化石になることに頼らず、何でもいいから体を保存したいという人には、琥珀に埋め込まれるのがおすすめとのこと。しばしば琥珀に埋まった虫や小動物の死体が発見されていますが、琥珀に覆われた状態だと骨以外の組織もしっかりと残っており、死体の保存にはベストだそうです。しかし、人間をまるごと埋めるほどの琥珀を手に入れるのは非常に難易度が高い模様。

氷河の中に埋まったり、ロサンゼルスのラ・ブレア・タールピットのような天然アスファルトの池に埋まったりするのも手です。あるいは、ミネラルが豊富な洞窟の中でミイラ化するのもオススメだそうですが、最も完璧に死体を保存できるのは死体を宇宙に打ち上げる方法だとのこと。シム氏は「真空状態に死体を保つのはいいアイデアです。無線標識を死体に取り付ければ、遠い将来でも発見してもらえる可能性が高くなります」と述べています。

by Dan Bergstrom

◆6:手がかりを残す
将来的に発見される可能性を高めるため、死体と一緒に携帯電話などの手がかりを埋めるのもオススメだとのこと。自然に分解されないプラスチックや携帯電話などに使用される金属、ガラスなどは非常に耐久性が高く、スマートフォンはほぼ形状を残したまま数百万年後も残っている可能性があるそうです。

また、考古学的に価値のある化石となりたい場合は、高層ビルや高速道路の基礎近くに埋まるのもいいアイデア。これらは非常に地下深くまで基礎が埋められており、長い期間にわたって残り続ける可能性が高いとのことです。化石の発見と同時に生活背景も判明すれば、化石としての価値も高まるかもしれません。

by Daniel Oines

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