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中国が世界経済を支配することはできない理由とは?


世界第2位の経済大国になった中国は、2032年にアメリカを抜いて世界一になるという予想が出されるなど、中国が世界経済を支配するのではないかという警戒感がアメリカで出てきています。しかし、2009年以来中国に滞在し、北京大学で教鞭をとるクリストファー・バルディング教授は、「中国は世界を支配することはできない」という見解を明らかにしています。その原因は、中国固有の事情の存在という構造的な問題だとのこと。

Maybe China Can't Take Over the World - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/view/articles/2017-12-03/maybe-china-can-t-take-over-the-world

社会経済主義をとる中国では、資本主義諸国では各種規制が原因で困難なことも政府主導で行われることがあり、経済や科学の分野で他国を圧倒するスピードで物事が進むことがあります。例えば、自動運転カーの社会実験や倫理面での問題を抱えるゲノム編集やクローン技術の研究などは分かりやすい例です。

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世界最大の人口を抱え経済大国としての存在感を日増しに強める中国が「世界を経済的に支配する日は近い」という声も聞こえてきますが、北京大学のバルディング教授は「そうならないだろう」と、中国支配説に懐疑的な見解を持っています。バルディング氏によると、経済学者や経済評論家が中国企業の業績を喧伝して中国脅威論を唱えるときに、それを生み出した中国固有ともいうべき「構造的な要素」を見過ごしているとのこと。

例えば、中国では他の国を圧倒する規模で携帯電話・スマートフォンを利用したモバイル決済サービスが普及しています。このモバイル決済サービスの充実ぶりは中国固有のものであり、巨大なサービスが生まれた原因について、バルディング氏は2つの「構造的な要素」があると考えています。

一つ目の構造的要素は、中国では銀行システムなどの金融インフラが整わず、小売商の多くが現金決済を好み、クレジットカードが普及していなかったこと。二つ目は、中国にはテンセントの「微信(WeChat)」とアリババの「Alipay」という市場を二分する巨大なサービスがあること。モバイル決済サービス市場を2社が二分しており他のサービスは事実上、存在しない状態という他国には見られない独特の世界です。

このような中国固有の事情のもと、メッセージを送りあうだけでなく、物を売買したり、サービスを利用したり、お金を貸し借りしたりするときに、現金の代わりにこれらのモバイル決済サービスを日常的に利用する行動様式が生まれました。世界で最も進んでモバイル決済サービス網が築かれている中国では、2016年に携帯電話を通じて決済された額は5兆ドル(約540兆円)以上で、アメリカの50倍以上というぶっちぎりの世界一の規模になっています。


しかし、バルディング氏は、欧米や東アジアの経済的に豊かな国では、クレジットカード、デビットカード、小切手、PayPal、Apple Payなどのモバイル決済サービスなど多様な決済手段が用意されており、それぞれがデジタル化して便利になっているという違いがあると指摘しています。中国のような決済システムでは、決済の選択肢が奪われるというデメリットがあるため、普及しないというわけです。

モバイル決済サービス以外にも、中国では小売の実店舗ビジネスが難しいという事情もバルディング氏は指摘しています。世界の「人口50万人を超える都市」のうち4分の1を占める中国ですが、不動産(土地)を所有することはできないため、店舗の規模拡大が制限されているとのこと。そのため、商品を保管する倉庫から直接、消費者に商品を届けるオンライン通販が盛んになり、AlibabaやJD.comなどが発展したという独自性があるそうです。

物流が貧弱だった中国で、AlibabaやJD.comは独自の効率的な物流網を構築し、中国全土のオンライン通販を支配することに成功しています。


バルディング氏は中国企業が注目すべき技術を生み出していることを否定してはいません。しかし、中国で生み出されたものが、異なる環境で移植して成功できるかといえば、構造的な要素を無視すれば不可能だろうと考えています。中国で成功したことが、ただちに他国で通用することにはならないというわけです。中国と同じ環境であれば中国で成功した方式を応用することは可能ですが、中国企業が世界進出に苦戦することを見れば、単なる当てはめが困難なことは明らかです。人工知能などの革新的な技術の研究・開発を国家的な規模で行う中国が、今後も革新的なものを生み出す可能性は高くとも、まったく異なる条件の下で生活する顧客のニーズに応用できない限り、著しい進歩も中国の海岸線にとどめられるだろうとバルディング氏は指摘しています。

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