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ドイツの環境大臣が「無料の公共交通機関」のテストを計画中と発表するも翌日に「そんな計画はない」と政府が全否定

By Caribb

大気汚染対策の一環として、公共交通機関を無料で利用できるようにする社会実験を2018年末から実施する構想をドイツの環境大臣が発表しました。しかし、その翌日に政府が「そのような政策は具体的に進行していない」と一蹴するという事態となっています。

German government plays down 'free public transport' plan - The Local
https://www.thelocal.de/20180214/government-plays-down-free-public-transport-plan

Germany considers free public transport in fight to banish air pollution - The Local
https://www.thelocal.de/20180213/germany-considers-making-public-transport-free-to-fight-air-pollution

この無料の公共交通機関の施策を推し進めていたのは、ドイツのBarbara Hendrick環境大臣を含む3人の大臣です。AFP通信によると、Hendrick環境大臣は2015年2月13日(火)に「私たちは、自家用車の数を減らすために公共交通機関を無料にするべきであると考えています」と発言し、2018年の終わりにボン、エッセン、そしてマンハイムを含むドイツ西部の5つの都市で無料の公共交通機関の実行をする計画を発表していました。この施策案の中には、無料交通機関を始め、曜日により変わるバスやタクシーなどの車両からの排出量を規制する低排出ガスゾーン、そしてカーシェアリングの支援が含まれていました。

By Martin Fisch

世界的な自家用車販売台数を誇る企業のフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツポルシェなどがドイツ経済の一翼を担っている自動車大国ドイツで、このような大胆な施策が打ち出された理由には、EUが定めた大気汚染規制があると見られていました。ドイツやフランス、スペインなどを含むEU加盟国8か国は、EUが定めた二酸化炭素や微粒子などの大気汚染規制を期限日である2018年1月30日までにクリアすることができなかったため、これら8か国は欧州司法裁判所から多額の罰金を言い渡される可能性があります。

By l a b e t e

このEU基準でドイツ国内の状況を判定すると、首都ベルリンは基準の最高レベルを上回っている状況。また、ドイツ南部の都市シュトゥットガルトの大気は、基準の2倍以上の二酸化炭素濃度を記録しています。このドイツの大気汚染基準違反は、2017年始めに欧州委員会から既に警告を受けています

By alessandro silipo

ドイツの自動車メーカー、フォルクスワーゲンから始まった排ガス規制逃れ事件、通称「ディーゼルゲート」で多数のドイツの自動車企業の信頼性に疑問符がついていたとはいえ、ドイツ経済を支える輸出業の1つである自動車産業の業績を下げることになると予想される公共交通機関の無料化政策の発表は、AFP通信The Guardianワシントンポストなど多くのメディアからも注目を受けていました。
By Mike Knell


しかしここで急転直下の事態が起こります。施策が発表された翌日の2018年2月14日(水)に行われたHendricks環境大臣の定期会見で、報道官のGabriel Haufe氏が「無料の公共交通機関のテストを試すかどうかを決めるのは都市などの自治体の責任だ」と発言。また、欧州委員会への提案書には5つのパイロット都市が掲載されていますが、いずれも無料の公共交通機関などのプロジェクトの検討を記載していないことを発表。ドイツ政府はこの施策に対して、「具体的なプロジェクトは存在せず、テスト都市も選択されていない」ことを強調しました。

大気汚染対策として「公共交通機関を無料」にするという政策はフランスのパリ台湾の高雄そして韓国のソウルなどで行われてたことがあります。ドイツ経済を揺るがす可能性があるこの施策については与党のドイツ社会民主党(SPD)内でも大きく意見が分かれて、大論戦になることが予想されていました。

また、この施策の実現のハードルが高いことも指摘されていました。ドイツにおいてバス、地下鉄そして列車など公共交通機関は人気のある移動手段です。交通機関の利用者数は、過去20年にわたって運行数とともに増加しつづけており、2017年は103億人、収益1.7兆円(128億ユーロ)に達していたことから、この施策を実現するためには多くの予算が必要と考えられることをAPF通信は指摘。DPA通信社のAshok Sridharan氏はこの政策に対して「無料化した場合に、運行数の需要を満たせるほどのバスの運転手の人数がいるか疑問である」コメントしていました。

By Ozzy Delaney

この政策が自動車大国であるドイツで実現すると、EU諸国を始めとする多くの国や経済圏に大きなインパクトを与えることになりそうですが、環境大臣の発言力や与党内部の統率、ドイツ議会の議決、ドイツの経済自動車産業の経済貢献度を考えると、実現するのは難しい状況であるとみえます。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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